番狂わせ
京子はツナにキャバッローネとジッリョネロの所在地とボンゴレ本部の見取図を入手すると言うとツナは慌てて止めた。
「駄目だ!特に見取図なんて絶対に駄目!」
「でもこんな場所にいつまでもツナちゃんに居て欲しくないもの。」
「背瀬川さんにバレたらただじゃすまないよ!」
必死に止めるツナに京子は包むように握った手を少しだけ力を入れる。
「ツナちゃんは私と帰国するの。帰国したらツナちゃんと私は高校に通って帰りはお茶したり買い物をして休日はどこかに出掛けて、試験前には勉強会をするの。それからツナちゃんはおばさんとイーピンちゃんとフゥ太君と暮らすの。」
「え・・・?」
「あの頃のようにね。」
椎子が荒らしに来る前の日々のように通学して帰りは風紀委員の目を盗んでお茶したりショップで買い物したりしていた頃のように。
そう言われてツナは椎子が来る前の事を思い出した。マフィアのことを除けば平凡だがナミモリーヌの新作のケーキを食べた日や可愛い小物を買った日、赤点を取って再試を受けた日、苦手な食べ物を奈々に食べなさいと言われて何とか食べた日、ランボとイーピンの喧嘩を止めて宥めた日、フゥ太とゲームをして連続で負けた日。その他にも楽しかった日々、ちょっと苦労した日々を思い出すとその日々はキラキラしていた。
ツナは戻れるならあの頃に戻りたいと思ったが、自分自体は用無しだが自分の体に流れる初代直系の血筋をボンゴレが手放す訳もなく戻れる日はきっと来ないと分かる。
そんな様子のツナを見て京子は諦めるなと言った。
「諦めちゃ駄目だよ。おばさん達はツナちゃんに会いたいってずっと思ってるんだよ?なのにツナちゃんが諦めたらおばさん達はどうしたらいいの?悲しむだけだよ。」
「京子ちゃん・・・。」
「とにかくチャンスを待とうよ。諦めなければ必ず突破口は開くから。」
だから諦めないでと言うと京子にツナは静かに頷いた。
『京子ちゃん本当にありがとう。ボンゴレからは逃げれないけどほんの少しだけ希望を持ってみるね。』
頷いたツナは僅かな光を掴むようなことだけどと思った。
京子はそれじゃまた明日来ると言うとツナの部屋から退室した。
翌日から京子は了平や山本にキャバッローネとジッリョネロの所在地を聞いた。深く考えることをしない了平と山本はあっさり所在地を教えた。
所在地を聞いた京子はこれで少しだけツナを助ける手段を手に入れたと心の中で喜んだ。だがボンゴレ本部の見取図は中々入手出来ずにいた。こればかりは了平と山本に教えてとは聞けない。不振がられてしまう可能性が出てくるからだ。そうなると京子は諜報部に忍び込もうとしたが24時間体制なのか常に構成員が居る。おまけにたまたま通り掛かった獄寺に見付かり「あまりうろちょろするんじゃねーよ。」と釘を刺されてしまった。結局ボンゴレ本部は椎子の執務室やリボーン達の部屋、調理場等の表面的な部分しか分からなかった。
京子は食べ物をツナに渡すと泣きながら謝った。
「ごめんなさい。獄寺君に見付かっちゃって諜報部に入れなかった。」
ツナは何てことをしたのと驚愕していた。
「諜報部!?見付かったのが獄寺君でまだ良かったよ。背瀬川さんだったら何をしたか分からないし。でも無事で良かった。」
だから泣かないでとツナは京子を慰めていた。
京子は諦めなかったが獄寺が京子が迷って諜報部に来たと報告していた。その為諜報部付近には構成員が配置されてしまい以来京子は諜報部に忍び込めなくなってしまった。
それからはとにかくツナと二人でチャンスを待つ日々を送ることになったのだった。