番狂わせ
沢田家の呼鈴を鳴らすと奈々が出て来たが京子は目を見開いた。
奈々の目にはクマがあり、あまり眠れていないのか肌も少し荒れていて、顔色も悪い。
「大丈夫ですか!?」
「ええ。大丈夫よ。さあ上がって。皆も喜ぶわ。」
京子は上がりリビングに通された。
リビングではソファーに座ったフゥ太がイーピンに絵本を読んであげている。京子はもうこの家にはランボが居ないんだと実感した。
椎子と獄寺達がイタリアに行くことが決定した時、ランボはボンゴレに行きたくないと泣いて嫌がった。
椎子が優しく諭しても宥めてもランボは嫌だと泣き続けた。それに腹を立てた椎子は雷の守護者を解任させた。リボーンに将来有望だとはいえ、子供のランボには荷が重すぎると嘘泣きしながら訴えて騙されたリボーンはボンゴレに報告して、受理された。
後日イーピンは師匠である風に今の沢田家の状況とランボが守護者を解任されたことまたフゥ太と共に奈々の傍に居たいということを手紙で伝えた。
風はイーピンの思いを尊重して了承した。そしてドン・ボヴィーノにランボのことを伝えた。ドン・ボヴィーノは部下に沢田家に向かわせ、ランボはツナと奈々を心配しつつもボヴィーノファミリーに戻って行ったのだった。
奈々がお茶を淹れて持って来てイーピンの隣に座っている京子に手渡す。
「ありがとうございます。」
受け取って紅茶を飲む京子に奈々は向かい側のソファーに座った。
「京子ちゃん何かあったの?」
京子が来た時、京子は呼吸を乱していた。奈々は何かあったのではないかと思って聞いたのだ。
「実は私、ボンゴレに行けることになって。」
「え?」
「私じゃ何の役にも立たないけどツナちゃんを支えたいんです。」
奈々は驚いた。確かにツナの傍に京子が居れば支えになるだろう。だがツナの味方であることが知れたら大変なことになるのは明らかで。
「京子ちゃん。無理はしないでね。ツッ君の味方だと分かったら酷い目に合うかもしれないわ。」
「大丈夫です!お兄ちゃん達は背瀬川さんの出鱈目だらけの嘘に騙されるような人達だから。」
京子の表情は真剣そのもので。奈々は決意が固い京子を見て止められないと感じた。
「本当なら京子ちゃんには行って欲しくはないのだけど。ツッ君をお願いします!無理だと感じたら直ぐに帰国してね。」
頭を下げる奈々に京子は慌てて頭を上げさせた。
「頭を上げて下さい!私ツナちゃんが心配だし大好きな親友ですから!」
奈々は涙ぐみながらありがとうと京子に伝えた。
奈々が落ち着いたところで、京子はツナに何か渡すものはあるか尋ねた。
「おばさん。フゥ太君、イーピンちゃん。ツナちゃんに何か渡すものありますか?プレゼントとか手紙とか。」
ボンゴレに着いたらツナに渡すと言う京子に奈々達は悲しげな表情で首を横に振った。
「渡したいものはあるのだけどきっとツナには届かない。」
「手紙書きたいけど。」
「イーピンも書きたい。でもツナさんには渡らない。」
「えっ!?どういうことですか!?」
奈々は届かない理由を説明した。
「電話をしても繋いで貰えないのよ。だからせめて手紙でもと思って送ったのだけど送り返されてしまって。手紙を送っても家光さん達は封も切らずに送り返してくるから。そして私の考えだけど京子ちゃんが手紙を預かってくれたとしてもボディチェックされるかもしれないわ。」
「・・・それじゃ、ツナちゃんの今の状況は分からないんですね。そして手紙とかも渡せない可能性も。」
京子はリボーン達に知られないように手紙をノートや手帳に挟んで隙を見てツナに渡そうと思案した。奈々達からの手紙があればツナは喜ぶかもと思ったからだ。
「手紙なら手帳とかに挟んで荷物の奥に入れて隠せば持って行けます。それで隙を見てツナちゃんに渡します!」
女に優しくがモットーなリボーンに私物が入っている荷物を見ないで欲しいと頼めば何とかなると言う京子に奈々達は難色を示した。
「気持ちは嬉しいけど知られたら大変よ?ツナはどうやって連絡取ったんだって問い詰められるし、京子ちゃんもリボーンちゃん達に色々言われるわ。」
「京子姉の気持ちは本当に嬉しいよ。でも背瀬川さんに知られたら京子姉が苛められる!ツナ姉は京子姉が苛められることを一番嫌がってたから。」
「フゥ太の言う通り。イーピンも京子さんが背瀬川さんに陥れられるのは嫌。だから我慢する!」
ツナが最後まで自分と花と奈々、子供達の心配をしていたことを思い出した。
『そうだよ。ツナちゃんに渡せたところで手紙が知られたらツナちゃんが酷いことをされるに決まってるじゃない!』
「そうですよね。手紙を渡してツナちゃんが持っているのが知られたらリボーン君達が暴力を振るってきますよね。それに私が持っていることが知られたらツナちゃんが苦しむかも。」
椎子やリボーンに手紙を取り上げられたらツナの目の前で手紙をビリビリに破り、それを見て悲しむツナを見て椎子達は嘲笑うくらいのことはする筈だ。
自分の浅はかさに嫌悪し落ち込む京子に奈々達は言葉を掛けた。
「京子さんとても優しい!イーピン京子さん大好き!」
「京子姉、ツナ姉をお願い!」
「京子ちゃん本当にありがとうね。」
「はい。頑張ります!」
京子は自分が出来ることをしてツナを支えようと決意を新たして、イタリアに渡ったのだった。