沢田紘吉



紘吉はいつも何をやっても失敗ばかり。そんな彼に回りの人間がつけたアダ名はダメダメのダメツナ。
母親の奈々でさえ呆れていた。


「家庭教師！？」

驚く紘吉に奈々はニコニコしながらチラシを見せた。

「ツッ君は勉強が苦手じゃない。だから家庭教師を付けることにしたの。勉強が出来るようになったら誰もダメツナなんて言わなくなるし、友達も出来るわよ？」


『とりあえず勉強くらい人並みでいてくれないと母さん恥ずかしいわ。』


奈々の本心は自分勝手なものだが紘吉に分かるわけもなかった。




「俺はリボーン。世界最強のヒットマンだ。お前を立派なマフィアのボスにしてやるために来たんだぞ！」


紘吉の前に現れた黒衣の赤子。彼が来てから紘吉の生活は一変した。

リボーンによって引き合わせられた獄寺や山本、了平、雲雀。初恋の京子と仲良くなり毎日が楽しかった。

たまに獄寺や山本が騒ぎを起こしては尻拭いは紘吉。それでも初めての友達。紘吉は苦にはならなかった。
後始末が終われば彼等は笑顔でお詫びと言わんばかりにお菓子や飲み物を差し入れをしてくれていた。
しかし物を渡すだけでお礼の一つも言わない獄寺と山本。この時から既に紘吉と獄寺や山本との関係は歪で破綻していたようなものだった。それに紘吉が気付かされたのは随分後になる。



骸との戦いが終わった後に紘吉の取り巻く環境が変わっていった。

ヴァリアーとのリング争奪戦。その試合に必要な物を家光から渡された。

小さな半球体とリング。


「これは何なの？」


紘吉は聞くとニヤリと口角を上げリボーンは説明した。


「これはマテリアルでボンゴレ10代目の証だぞ！！このリングの台座にはめ込んで早速修行だ！ 」



崖を登ったり、バジルと戦ったりと修行をしている紘吉を見てリボーンはなんとも言えない顔をしていた。紘吉の炎が小さいのだ。それでもこの時は歴代ボスの中で炎が弱いボスも居たからとリボーンは紘吉もそのタイプなのだろうと思っていた。


争奪戦は相手を倒し、マテリアルを合わせてリングにはめ込んだ者の勝ちとした。

大空戦ではザンザスに奪われてしまうが、ボンゴレの血筋ではない為に拒絶されて、紘吉の勝利になった。

紘吉は何とか勝てたと安心していたがボンゴレ本部では問題が起きていた。


沢田紘吉の炎が小さすぎる！


9代目と家光はリボーンに紘吉の炎を何とかしろと無茶苦茶な指示を出した。

「しかし歴代ボスの中に炎が弱いボスもいたはずだ。問題があるのか？」

リボーンは家光に聞く。

「文献やボンゴレの歴史を調べたんだがそのボスよりもツナの炎は小さいんだ。あの炎じゃいつか敵に負けて殺されてしまう！」

家光にしてみれば息子の紘吉はボンゴレ繁栄のための道具。その紘吉が殺されたらボンゴレの一大事。あってはならないことだ。

兎に角なんとか炎を今よりも大きく出来るようにしてくれと家光は電話を切った。

リボーンは頭を抱えながらも紘吉の指導方針を考えることになった。
このままだと依頼が完璧に終了出来ない。リボーンは躍起になり紘吉の体と気持ちを無視して無茶苦茶な修行を課していった。


リング戦の翌日からリボーンは紘吉に修行をさせるが紘吉が出す炎は全く変わらない。
それを明らかに見下したように見る獄寺。馬鹿にしたように笑う山本。どうせもう無駄だろうという雰囲気を出しながらもとりあえず頑張れと応援する了平。

部下になる自分達は戦うのに問題ないくらいの炎を出せるのに将来のボンゴレボスが弱い炎しか出せないことに失望し、思い違いをしていった。

桃巨会を半壊させたのは自分達が粗方ヤクザを倒したから紘吉は勝てた。

骸を倒せたのは雲雀がある程度骸にダメージを与えたから紘吉は勝てたに過ぎない。

リング戦はザンザスがボンゴレの血統ではなかったからに過ぎない。


命を救ってもらったことを忘れ去った獄寺と山本、かつては紘吉の人柄を気に入りボクシング部に勧誘した了平は自分達が居たからこそ紘吉は美味しい所を取って勝てたと勘違いし、ますます紘吉を軽んじ、見下すようになった。
そして自分達が問題を起こせば紘吉に後始末をさせるが馬鹿にしている相手に礼の言葉は不要だと思うようになりジュースや菓子を渡して終わりにしていた。


無意識に彼等は沢田紘吉を人間としてではなく自分達の都合の良い道具のように思い始めていた。