静寂の住人2
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紘吉は激痛で動けない体を叱咤して起き上がりドアを開けようとしたが開かなかった。
「えっ!?まさか!!」
獄寺の提案で扉が開かないようにガムテープで固定されてしまっていた。
紘吉は「出して!」とドアをドンドン叩くが誰か開ける所か人の気配すら感じない。それでもドアを叩くことしか出来ない紘吉は誰かが開けてくれるまで叩くしかない。
どれだけ叩いたかわからない。何分経過したかのすら分からない。おまけに体育倉庫の中は電気がなく薄暗い。怖がりの紘吉は無意識のうちに叩く力が強くなっていった。
「そろそろ良いかな?」
紘吉が閉じ込められてから体育倉庫の前で気配を消していた雲雀はガムテープを剥がしていきドアを開けた。
「雲雀さん!!」
「小動物!?大丈夫かい?」
気遣う言葉を言って雲雀は紘吉を米俵を担ぐように抱き上げた。
「ひ、雲雀さん!?」
戸惑う紘吉に気にも止めずに雲雀は応接室まで運んでいった。
ソファーに下ろすと雲雀は紘吉に体操着を脱ぐように言い手当てを始める。
「折角ここの傷は治りかけてたのにその上に新しい傷が出来てるね。ここも。」
傷を消毒しながら雲雀は独り言のように声を出した。
「いっ!!」
消毒薬が傷に染みて紘吉は思わず声を上げる。
「痛かった?ゴメン。」
謝る雲雀に驚くも紘吉は「大丈夫です。」と答えた。
手当てが済むと草壁が老舗の料亭の弁当を二つ持って入ってきた。
「それテーブルに置いておいて。後、僕の代わりに校内をくまなく見回りして。」
雲雀の命令に草壁は一礼して応接室を出ていくと雲雀は弁当を紘吉に食べるように言った。
見るからに高そうな弁当に紘吉は真っ青になって断る。
「手当てして貰って更にこんな高そうなお弁当までいただけません!」
「でも君、弁当作って貰えてないんでしょ?食べなよ。」
勧めても食べようとしない紘吉に雲雀はそれならとランボ達を出した。
「食べないと持たないよ。それに居候の子供達が心配すると思うけど?」
幼い子供達に心配させたくないでしょ?と言われて紘吉は弁当を食べ始め雲雀も蓋を開けた。
「そういえば雲雀さんは何で体育倉庫に?」
そこに居たのが不思議に思った紘吉に雲雀は優しい眼差しを向けて答えた。
「2-Aの生徒を監視していた風紀委員から誰かが閉じ込められているかも知れないと連絡がきたんだ。もしかしたら沢田かもと思ってね。」
『雲雀さんは普段は咬み殺すとか言って怖いイメージだけどあの日俺とランボ達を避難させてくれたり今日だって助けてくれて。本当は優しいんだな。』
心配したよと話す雲雀に紘吉は優しい人だと感じてると雲雀は何故か謝罪を言ってきた。紘吉は何で謝るのだろうと首を傾けた。
「本当なら君が閉じ込められた時点で風紀委員が助けるのが当たり前なんだけど獄寺隼人と山本武が相手じゃ風紀委員じゃ勝ち目がないから何かあったら連絡するようにと指示を出したんだ。」
紘吉は確かにと思った。
相手はマフィア育ちの獄寺と殺し屋の才能がある山本だ。やり合うのは難しい。
「それに連絡が来た時は並盛商店街を見回っていたから君を助けるのが遅くなった。」
だからゴメンと謝る雲雀に紘吉は慌てた。
「いつも俺は雲雀さんに助けて貰ってるんです。だから謝らないで下さい!」
寧ろ頭を下げて謝るのはこっちだと言う紘吉に雲雀はほんの一瞬だけ人の悪い笑みを唇に乗せた。
『以前は僕を怖がってたけど結構慣れてきたみたいだ。これならこの子をこっちを向かせていけそうだね。』
雲雀がそんなことを思っていると紘吉は食べ終りごちそうさまでしたとお礼の言葉を口にした。
「美味しかったです!」
ニコニコして言う紘吉に雲雀はそれならよかったと笑みを見せて新しい制服を渡す。
「?」
「ここから更衣室に行ったら午後の授業に間に合わないからこれを着ていきな。君の制服は後で取りに行っておくから。」
「色々すみません。お借りしますね。」
「体操着もボロボロだからこっちで処分するよ。」
「迷惑かけてすみません。」
本当にすまないと眉を八の字にして謝るの紘吉に雲雀は気にするなと頭を撫でる。
紘吉は恥ずかしそうにすると、俺着替えてきますと簡易キッチンに照れ隠しのように行ってしまう。雲雀はそんな紘吉にクスリと笑った。
紘吉は着替えて応接室を後にすると雲雀はデスクの脇に目立たないように置かれた紙袋に目を向けた。
「お借りしますね、か。でも貸した制服は君の物になるけどね。」
紙袋にはビリビリに破けた紘吉の制服が入っていた。