沢田紘吉の決断



紘吉が死んで3年が経過した。ボンゴレはザンザスが率いるヴァリアーが有能な構成員を引き抜きボンゴレからさってしまった為に戦力ががた落ちして敵対ファミリーに攻め込まれて消え去った。

静寂の宮殿の一室でイヴェールは宙に浮いている美しいオレンジ色をした球体を見た。

「ふむ。ボンゴレも消えたことだしそろそろ良いだろう。」

球体の中には胎児が妊婦の腹の中にいるような姿で体を丸めている。

イヴェールは掌にあるオレンジ色の球体の中にいる胎児に目覚めるように力を注いだ。目覚めさせる力を注がれた胎児はみるみる成長していき球体を壊して中から出て来た。そして自分の体を見て硬直した。

「・・・・・・。」

球体から出て来た人間にイヴェールは
久しぶりだと言った。

「3年ぶりだな。沢田紘吉。」

「久しぶりだねって、何で俺はこんな体なのーーーっ！？」

生まれ変わった紘吉は女の姿だった。混乱と恥ずかしさのあまりうずくまる紘吉にイヴェールは指を鳴らして服を着せてやる。

「どうやら次の生は女だったようだな。」

イヴェールはうずくまる紘吉を立たせた。立たせられた紘吉は何とかならない？と訊ねた。

「この体下半身がスースーするんだけど。何とかならないのかな？落ち着かないんだけど？」

「別に問題ないだろう？初代ボンゴレの直系の沢田紘吉は男だった。そのことをマフィアは知っている。間違っても女の紘吉をマフィアに引き入れようとはしないだろう。今の紘吉はマフィアとは全くの無関係だからな。」

マフィアと無関係の紘吉をマフィアの世界に引きずり込めば復讐者に捕らえられてしまう。そんな危険を犯すマフィアはいないだろう。
紘吉はがっくりと肩を落とした。肩を落としている紘吉にイヴェールはマテリアルの世界に戻ると告げた。

「ボンゴレは潰えた。これからマテリアルの世界に戻る。」

紘吉は不安そうな顔をした。

「でもこんな姿じゃ雲雀さんやフゥ太達は認めてくれないんじゃ？」

男だったのに女になって戻って大丈夫なのかと紘吉は不安でたまらない。イヴェールは安心させるように言った。

「大丈夫だ。雲雀は姿形が変わっても構わないそうだ。」

「そう、なんですか？」

「ああ。だから戻って雲雀を安心させてやろう。」

笑顔で話すイヴェールに紘吉は頷くとプリマベーラに挨拶をしたいと言った。

「プリマベーラにお別れの挨拶したいんだけど。」

「・・・・・・挨拶か。」

「駄目かな・・・？(間があったけど何だろ？)」

「・・・いや、構わない。」

不思議そうな顔をする紘吉にイヴェールは気にするなと言ってプリマベーラを呼んだ。呼び出されたプリマベーラに紘吉は御礼と別れの挨拶をした。

「プリマベーラ今まで本当にありがとう。プリマベーラが居てくれたから俺も綱吉も大切な人達も助かった。俺はプリマベーラに会えて良かった。」

「僕もツナに会えて良かったし楽しかったよ。」

笑顔で答えたプリマベーラはイヴェールにもうマテリアルの世界に降り立つのだろうと聞く。

「イヴェール。これからマテリアルの世界に向かうんだね。」

「そうだが私と紘吉だけじゃないぞ。」

「えっ？」

イヴェールは無表情でプリマベーラの首根っこを掴んだ。

「な、何っ！？えっ？？」

いきなり首根っこを掴まれて狼狽するプリマベーラを無視してイヴェールは紘吉を連れて雲雀が待つ(しびれを切らしている。)マテリアルの世界に降り立ったのだった。


夜中に降り立った場所は雲雀の家。イヴェールはプリマベーラを掴んだまま透視の術を使う。

「ねえ！離してよーーー！絶対何か考えてるよね？」

「プリマベーラうるさい。雲雀は庭の方にいるらしいな。紘吉行こうか。」

「う、うん。(というかプリマベーラを何で掴んでるのかな？てかあのプリマベーラを押さえ込むなんて！)」

地面と水道管を簡単に割って一軒家を投げ付けようとしたプリマベーラを捕まえているイヴェールに紘吉はプリマベーラが恐がる理由が漸く分かりたらりと額に冷や汗をかいた。

庭の方に向かうと紘吉は目を見開いた。
庭には虫の息になっている風紀委員が数人居て庭に転がっている。その中には草壁も転がっていた。紘吉は悲鳴をあげた。

「うわーーーーっ！！マテリアルの世界に戻った最初の光景がこれって！？」

狼狽える紘吉の声に雲雀は振り向いた。