静寂の住人2
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睨まれたイヴェールは痛くも痒くもない。
『鳥居玲奈は墓穴を掘った。確かにあのメモ用紙を獄寺隼人と山本武に見せたが内容そのものを鳥居玲奈は確認をしていない。獄寺隼人達もメモの内容を喋っていない。』
玲奈は自ら自分が怪しいですと言っているようなものだ。
獄寺と山本と了平は無表情のイヴェールに苛立った。
「ディオス!!女を痛め付けて何とも思わねぇかよ!」
「玲奈にフラれたからってカッターで切りつけやがって!最低なのな!」
ダイナマイトを持ち出す獄寺とバットを刀に変化させる山本、ファイティングポーズをとる了平。それでも無表情のイヴェールに獄寺がてめぇ!と怒鳴りそうになったときイヴェールが次の布石を打つ為に口を開いた。
「自分は彼女を尊敬する。鳥居さんは強いんだと思う。」
「「「「??」」」」
玲奈を切りつけたイヴェールの言葉に獄寺達は訳が分からない。玲奈に至っては呆然としている。それを無視してイヴェールは続ける。
「君達の話によると鳥居さんは沢田君に襲われかけた。なのに鳥居さんは男子生徒の傍にいても平然としている。普通なら男性恐怖症になっていてもおかしくはない筈だ。」
「っ!!」
「「「!?」」」
イヴェールの指摘に玲奈はしまった!と顔色を変えた。
数人の生徒達、特に女子生徒達は確かにイヴェールの言う通りだと表情を固くさせる。
だが獄寺と山本はそれがどうしたと喚いた。
「鳥居は精神が強いんだよ!だから沢田に苛められても毎日登校してんだ!!」
「そうなのな!玲奈は優しいだけじゃないのな!!」
「玲奈は極限に強いのだ!」
「そうだよ!玲奈ちゃんは女の子なのに苛められても頑張ってるの!」
獄寺と山本、了平、京子の言葉に生徒達はそうだと言い出した。
「そうだぜ!玲奈ちゃんは心が強いから俺達が側に来ても怖がらないんだ!」
「玲奈ちゃんは頑張ってるのよ!じゃなきゃとっくに登校拒否してるわ!」
「ディオス!玲奈に謝れ!」
「謝りなさいよ!!」
紘吉の時のように謝罪しろ!と捲し立てる獄寺達に玲奈は内心で笑いが止まらない。
『キャハハハハッ!隼人も武も了平もブスブスの京子も勝手に玲奈が優しいとか強いとか決め付けて単純過ぎて笑えるわ~!ま、その方が楽で良いけどね~。』
単純な騎士と駒で助かると笑いを堪える玲奈。
獄寺達は「沢田のように制裁してやる!」とイヴェールに暴力を振るおうとした時、屋上のドアが勢い良く開いた。
「何群れてるの!?用がない奴はさっさと帰宅しな!山本武!笹川了平!君達は部活中だろ!サボリなら退部させて咬み殺すよ!!」
タイミングを見計らったイヴェールの合図で入ってきた雲雀はドスの聞いた声で怒鳴る。
咬み殺されたくない生徒達は顔色を真っ青にして玲奈に「保健室で手当てしよう。」と声をかけて出ていく。
獄寺達は雲雀を睨み付けながら玲奈を守るように屋上を後にした。
「駄犬共はすっかりメスブタを盲信してるね。」
「獄寺隼人達以外の人間達は自分で考えることを放棄しているようなものだ。」
むやみに玲奈を信じる獄寺達に呆れる雲雀。
獄寺達の言葉に倣い盲信する生徒達に愚かなとイヴェールは静かに呟いた。ただ瞳は凍土のような凍てつく冷たさだった。
「ツナはどう思う?」
姿を消したままのツナにイヴェールが問う。
イヴェールに指摘されても獄寺と山本、了平、京子は聞く耳を持たない。そもそも彼等は話を聞かない人間だ。それで以前、紘吉と綱吉は振り回されて尻拭いをしてきた。
他の生徒達は指摘され我に帰るも獄寺と山本、了平、京子の言葉に何の疑いもなく頷いた。
獄寺達は妄信。
他の生徒達は盲信。
獄寺達はむやみに玲奈を信じて、他の生徒達は自分で判断をしないで玲奈と獄寺達の言葉を信じた。
綱吉がいた世界でも同じだ。
瑠花をむやみに信じる山本、了平、京子。
瑠花の言葉と山本達の言葉を信じる生徒達。
「俺もイヴェールと雲雀さんと同じ意見だよ。彼等は考えることをしてない。」
男が側にいても怖がるそぶりすら見せない玲奈。そんな玲奈を信じる獄寺達。
「少し考えれば分かることなのに。」
人の話を聞くことを放棄した獄寺達と考えることを放棄した生徒達。
何より守護者として選ばれた獄寺、山本、了平はあまりにも軽率で愚鈍な考え。
イヴェールの指摘を素直に考えて改めればまだ良かったが。
綱吉は紘吉に考える余地があるとも言えない。
勿論綱吉がマテリアルの世界で『沢田紘吉』として生きていくことも到底無理だと思った。