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cocktail

門出



開店してすぐにある男がやって来た。ツナはお好きな席へどうぞと伝えると男はカウンター席に座った。

「ご注文は?」

「ジン・バックを。」

「かしこまりました。」

薄い琥珀色をしたカクテルを男に出すと男は黙々と飲んだ。
グラスの半分を飲んだ所で男は頭を下げた。

「極限にすまなかった!」

額をテーブルに押し付けるように頭を下げた男にツナは顔を上げさせた。

「お兄さん。頭を上げて下さい。」

ゆっくりと頭を上げる男はツナの顔を見た。その表情は優しげで。

「沢・・・田?」

「謝ってくれたからもう良いですよ。」

許すと言ったツナに了平は目を見開いた。彼もまた瑠々子の側に付いてしまってツナを制裁と称した暴力を振るっていた。

「謝罪の言葉だけではすまないことを俺は沢田にしたんだぞ。京子の話を聞いただけで沢田が悪いと決め付けた。それなのに何故極限に許すのだ?」

「そりゃまだ怒ってますよ。でも本気で謝罪したいと思ったからfirmamentに来たんじゃないですか?だから許します。」

にこりと笑うツナに了平は許してくれてありがとうと言ってグラスを見た。

「あの時、極限に自分がしていることは正しいと思い込んでいた。間違ってるとは全く思ってなかったのだ。」

ジン・バックのカクテル言葉。

正しき心

愚かだったと自嘲する了平にツナはサービスだと言って美しい濃いピンク色のカクテルを出した。

「セレブレーションです。どうぞ。」

出されたカクテルを見て了平は目を点にした。

「いや、俺は沢田にサービスだと言われて飲む資格は極限に無いのだ。」

謝罪の言葉一つで許されただけでもありがたいのにタダでは飲めないと告げる了平にツナは京子からあることを聞いたと話し出した。

「介護福祉士の資格を取得したってこの前京子ちゃんから電話で聞きましたよ。」

「何とか取得出来たのだ。」

了平は試合や戦いとして自分の力を使ってしまえばまた同じ過ちを犯すのではないかと思ってボクシングをやめた。そして今度は自分の力を人の役に立てることに決めた。そこからが大変だった。何せ勉強が苦手な了平だ。介護福祉士試験を受ける為に猛勉強しなければならなかったのだ。

「明後日から特別養護老人ホームで働くことになった。」

「そうだったんですね。セレブレーションのカクテル言葉は知ってますか?」

「いや、極限に知らんぞ。」


セレブレーションのカクテル言葉。

門出


「新生活頑張って下さい。お兄さん。」

「極限にありがとう。沢田。」

了平はセレブレーションを飲み終えると会計を済ませた。

「沢田のカクテルは極限に美味い。また飲みに来ても良いか?」

ツナは笑顔で答える。

「勿論。また来て下さいね。」

「それではまたな。」


了平はfirmamentを出ると今度こそ間違わないようにしようと決意したのだった。


了平を見送った後、閉店の札を掛けているツナは今の了平なら間違えることなく正しい心で歩んで行くだろうと感じ心から応援しようと思った。


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