琥珀のカナリア


雲雀は並盛神社に向かっていた。

『きっと小鳥の着物姿は可愛いだろうね。』


家族で祝うだろうとツナと会う約束はしていなかったがやはりお気に入りの小動物の着物姿は見たい雲雀だった。


神社が見えてくると不意にヒソヒソした声が耳に入ってきた。


「何で美那ちゃんは着物で綱吉ちゃんはワンピースなのかしらね?」

「もしかして○○店の服?」

「確か○○店は量販店よね?」

「そうよ。」

「あのワンピースうちの娘も持ってるもの。」

「うちも色違いだけど綱吉ちゃんと同じワンピース、上の娘にせがまれて買ったわよ。」

「確かにあのデザインは見た目は上品だけど差がついちゃってるわ。」

「綱吉ちゃん俯いてたわ。きっと着物が良かったのね。」

「神社に着いたら益々目立っちゃうかもしれない。可哀想に。」


井戸端会議の主婦達の会話に雲雀は眉を寄せた。



どういうことだと雲雀は神社に急ぐとツナと美那が見えた。

ツナは羨ましそうに着物姿の美那を見ていて美那は見せつけるようにしていた。

明らかに豪華な着物の美那と量販店のワンピースのツナ。
奇異な目線に気付かない家光と奈々。

雲雀は子供ながら家光と奈々の愚鈍さに温度を感じさせない目をした。

雲雀がいるのに気付いた美那はチャンスだとばかりに側に行く。

「こんにちは~♪」

「こんにちは。」

素っ気ない返事の雲雀に美那は傷付くが気を引こうと話をする。

「この着物、似合ってますか~?」

「どうでもいいけど君が気に入ってるなら良いんじゃないの?」

「どうでもって・・・。」

実際似合っているが雲雀はツナを痛めつける美那には嫌悪感しかない。呆然とする美那を無視してツナの傍に行った。

大好きなお兄さんにツナはこの状況で会いたくは無かった。着物で着飾っている美那と本当なら着られた筈なのに明らかに違う姿の自分があまりにも辛くて。
俯くツナに雲雀は小さな手をとって優しい声で話しかける。

「こんにちは。」

「お兄さんこんにちは。」

寂しそうなツナの声に雲雀は美那に舌打ちしたい気分だ。

「今日も可愛いね。」

「・・・ツナ、着物じゃないのに?」

「うん。着物を着てなくても可愛いよ。」

雲雀にそう言われてツナはやっと明るい顔をした。

雲雀とツナの様子を奈々は微笑ましいと見て、家光は自分の娘に!と額に青筋が立っていた。

美那は自分とツナの接し方の違いに地団駄したい気分だった。

『着物で着飾った美那より安物のワンピースのツナの方が良いなんて!どうして美那を無視するの!?』

美那は何としても雲雀を振り向かせたかった。

「あの、良かったら遊びに来ませんか?」

家では奈々と家光に疑われないようにツナと仲良くしているふりをしている。それを雲雀に見せれば雲雀は見てくれると思った美那は雲雀に声をかけた。


雲雀は美那の誘いは嫌だったがツナの両親がツナをどう扱ってるのか見ておこうと思い家光と奈々を行っても良いのかと見た。

.
奈々は勿論と頷いた。家光は雲雀は男の子だし、まだツナには早いとブツブツ言っていて親バカを発揮していた。




「帰る前に写真を撮らないとな。」


家光はカメラを構えた。
最初はツナを撮り次に美那を撮る。

「美那、せっかくだから後ろ姿も撮っておこうな。」

「ツッ君はちょっと待ってましょうね。」

美那は後ろを向いた。帯もまた綺麗な色で美容室で着付けをしたからか結び方もしっかりして良い形になっていた。

「髪を結い上げてるから様になってるな~。」

そう言いながら写真を撮る家光、うんうんと頷く奈々。
ツナはただ羨ましそうに見ていて、雲雀は何とも言えない顔をした。

撮り終わると家光と奈々は帰ろうかと声をかけ、美那は雲雀の隣にいるツナを見て呼んだ。
美那はツナを苛めようと一緒に写真を撮ろうとした。自分とツナなら安物のワンピースのツナの方が見劣りするのが分かっていた。
それに感付いた雲雀は晒し者のようにされる前にツナの手を繋ぎ歩き出した。


「もう帰るみたいだし手を繋いで行こう。小鳥が持ってるのは千歳飴でしょ?食べやすいように僕が折ってあげる。」

「お兄さんありがとう。」


手を繋ぎ歩いている二人を見て奈々は楽しそうに見て家光は仏頂面だ。
美那は微笑ましそうにする奈々と心配そうに見る家光を見てやっぱり実子のツナの方に気持ちが傾くんだと苛立ち、全く美那を見ない雲雀に傷付き、ツナを睨んだ。


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