琥珀のカナリア


ハンバーグが仕上がる頃、並中と並盛の見回りを終えて帰宅した雲雀は笑顔だ。
何故なら今日はオジャマ虫の薫と恭二が仕事で海外に飛んでいるからだ。
暫くはツナと二人でゆっくり過ごせると思うと自然に口許が緩む。(雲雀をよく知らない者が見たら無表情にしか見えないが。)

台所に行くとツナがお帰りなさいと労い、雲雀はツナ特製のハンバーグを食卓に運ぶ。
全ての料理を運び終えるとツナと雲雀は手を合わせて料理を食べて始めた。

「お兄さん。何か良いことがあったんですか?」

雲雀の僅かな表情の変化が分かるツナ。雲雀はそうだねと理由を言う。

「今日から暫くあの二人が居ないからね。」

何かと邪魔してくる薫と恭二が居ないからと話す雲雀にツナは少し困った顔で言った。

「そんなこと言ったら駄目ですよ。俺にとっても両親なんですから。」

「それより音楽祭1ーAは小鳥がソロパート何だって?」

思い切り話を変えた雲雀にツナは苦笑したがまだ雲雀に話していないツナは何故知っているのか不思議に思った。

「今話そうと思ってたんですけど何で知ってるんですか?」

声が出るようになってからツナはリコーダーなどの楽器や音楽観賞だけではなく合唱など歌う授業も受けるようになった。
ツナの歌声を聞いた音楽教師が感動して学校行事の音楽祭でソロパートをやらないかと言い出し、京子と花と歌声を聞いたクラスの生徒達がツナを押した。歌うことが好きなツナは頑張りますとソロパートを引き受けた。そこまでは良かったがツナは雲雀の婚約者。いくらツナが了承しても勝手に決めたことが分かれば下手したら咬み殺されると思いブルブル震えながら音楽教師は雲雀に許可を取りに行った。


「音楽の教師が怯えながら僕に許可を取りに来たからね。大方、僕の許可を取らずにいたら咬み殺されると思ったみたいだ。許可は出したよ。」

「そ、そうだったんですね。」

ツナは顔が引きつり改めて雲雀が並中で大きな存在だということを再認識した。


食事が終わりツナが風呂に入っている頃、雲雀はツナに断りを入れてツナの部屋で音楽祭で歌う楽譜を見ていた。

どうやらツナの歌声に合わない歌詞なら違う曲にしろと言ってやろうと思っていたらしくチェックを入れていた。

「ここら辺からソロか。良い歌詞じゃない。これなら良いね。」

楽譜をツナの机に置いて今までのことを振り返る。


幼い子供の時に公園で出会い、ツナの歌声と小動物のような仕草に惚れていつも一緒に遊んでいた。ずっとそんな日々が続くと信じていたがツナの卒園とほぼ同時に海外に行くことになってしまった。帰国したらツナは美那に追い詰められて失声症になっていて更にマフィアのボス候補に上げられていた。結局ツナも美那もボンゴレのボスにはならずには済んだ。そして美那と奈々と家光からツナを引き離し、自分の婚約者になってもらった。

「本来なら帰国してすぐに小鳥をあの家から奪いに行く予定だったのに相当時間がかかったよね。」

まさかツナがマフィアのボス候補になってるなんて想像もしていなかったのだから。

「時間はかかったけど小鳥は声が出るようになったし僕の婚約者になったし結果的には僕の望みは叶ったね。」

その分、沢田家は想像を絶する後悔を背負う羽目になったが雲雀はツナを傷付け続けてきたんだから当然の報いだと笑った。


時は少し進み音楽祭当日ーーー


並中の体育館の舞台では1-Aの生徒達が歌っていた。暫くすると一人の少女が歌い始めた。

伸びやかで透き通るような美声に全校生徒や校長や教師はツナの歌声に驚き聞き入っていた。
1-Aの合唱が終わると体育館は歓声と拍手で包まれたのは言うまでも無い。
美那はツナの歌声を聞いて純粋に「本当に綺麗な声ね。」と呟き拍手していた。またリボ山に扮したリボーンも「中々の歌声じゃねえか。」とポーカーフェイスを少し崩し口元に笑みを見せた。

舞台から出ていく1-Aの生徒達だがツナは舞台袖で手招きしている雲雀の下に歩いていく。

「お疲れ様小鳥。子供の時のように綺麗な歌声だったよ。」

「本当ですか!」

嬉しそうに笑って聞いてくるツナに雲雀は僕は嘘なんか言わないよとツナの頭を撫でた。

「そうでした。お兄さんは出会った日から嘘は言わないし約束は必ず守る人ですもんね。それにお兄さんに誉められるのが一番嬉しいです!」

笑顔で言われて雲雀は照れるがツナの歌声とお日様のような笑顔が戻りこれから先二度と失わないように守っていこうと密かに誓いを立てたのであった。



End.



84ページ 後書き

85ページ 幸せの歌


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