琥珀のカナリア


リボーンは家光と奈々を見て小さくため息をすると美那に部屋に行くように促した。リボーンに言われた美那は涙を手の甲で拭って自室に戻った。
自室に戻って少しするとリボーンが白い封筒を手にして入って来た。

「美那。これは9代目から預かった手紙だ。」

ベッドに腰を掛けていた美那は手紙を受け取ると封を切り手紙を取り出した。

手紙には10代目候補に挙げたことへの謝罪が書かれていた。そして最後に書かれている内容は助言のようなものだった。

【これから先は自分の力で進んで欲しい。】


9代目の助言に美那は心の中で頷いた。

『誰かを犠牲にしないでこれからは自分の力でやっていくわ。』


美那はベッドから立ち上がるとランボ達の部屋に向かって行った。
リボーンは美那の後ろ姿を見て『美那も漸く自分の力で歩き出したな。』 とポーカーフェイスを崩し口に笑みを乗せた。


子供部屋に行くとランボとイーピン、フゥ太は冷やかな目で部屋に入れた。
冷たい目をして見てくる子供達に美那は少し怯みそうになるが座って謝罪をした。

「フゥ太今まで新聞を取りに行かせてごめんなさい。ランボ、イーピン私のやったことを二人のせいにしてごめんなさい。そして脅してごめんなさい。」

頭を下げる美那にランボとイーピンは目を丸くして驚き、子供達の中で一番冷やかな表情をしていたフゥ太は表情を柔らかくした。

「謝ってくれたから良いよ。もうツナ姉に酷いことしないでね。」

「もう二度と人を陥れたりしないから。」

前に進もうとしている美那にフゥ太は頷き、ランボとイーピンはニコニコと笑うことで答え、美那は泣きながら許してくれてありがとうと答えた。

ーーーー

リビングでは家光と奈々が呟くように話をしていた。

「俺達がツナに出来ることはただ一つだけだ。」

「私達がしてあげられるのはツッ君の幸せを祈るだけ。」

「そして上辺じゃなく本当の美那を見てあげることだな。」


取り返しのつかないことをした家光と奈々。
彼等が出来ることは今度こそ間違った愛し方をしないように美那を見守りつつ育て嘘をつかないで本音を言える本当の家族になること。そしてツナからの絶縁を受け入れ、我が子の幸せを願うこと。それしか出来ないのだ。
ツナから二度と父、母と呼ばれない悲しさ、ツナと美那にしてきたことに胸を痛める。
それを一生背負いながら。



ーーーー

相変わらず、誰も来ない階段で弁当を食べている美那は目の前に影が見えて顔を上げるとそこには山本と獄寺と同じクラスのミキが居た。
驚く美那に三人は真剣な顔をして謝罪をした。

「本当に申し訳ありません!!」

「本当にごめん!!」

「美那ごめんなさい!!」

「え、え?皆頭を上げて。」

謝る獄寺と山本とミキ。美那は何が起きているのか分からず三人に頭を上げて欲しいと言って上げさせ、まずは何故謝罪したのかを聞いた。

「何で謝ってるの?美那はミキと隼人と武に何もされてないわ。」

本当に分からないといった顔の美那に獄寺達は理由を言っていく。

「あの時責めてしまって本当にすみませんでした!それに謝罪も慌てて言った形で申し訳ありません!」

「俺もあの時美那に酷いこと言ってごめんなのな!」

「美那と一緒に居たら苛められると分かってたから離れたの。ごめんなさい!」


謝罪する獄寺達。
美那は獄寺と山本は既に謝っているのに再度謝罪してくれることに驚き、ミキに対しては以前は怒っていたが美那とはいられないと言っていたのはこの事だと分かった。
またミキは美那のことを無視したいたが秋子達のように嫌がらせはしてこなかったから然程恨んでいなかった。

「隼人、武。美那は前に謝罪されてるから良いのよ。ミキは美那に何かをしたわけじゃないから。」

一端言葉を切ってから美那は思ったことを聞いた。

「どうして美那がここに居るって分かったの?」

美那が居る校舎は空き教室が多く、普段は人があまり来ない場所だ。
何故分かったんだろうと考える美那にミキが答えた。

「この前先生に頼まれた資料を取りに行った時に美那がこの場所の方に歩いて行くのを見たの。それに獄寺と山本がいつもクラスに来て美那を探してるから一緒に来たんだ。」

美那は自分には両親以外もう誰もいないと思っていた。でも違った。獄寺と山本とミキがいた。そして自分のことを心配してくれたことを知って美那は泣いてしまった。
泣き出した美那に三人は慌てるが美那は涙を拭いて。

「ミキ、隼人、武。心配してくれてありがとう。」

笑顔で感謝の言葉を言った。

「美那さんは俺の親友ですから!」

右腕ではなく親友として接する獄寺。

「何かあれば駆けつけるのな!」

親友だからこそ何かあれば言ってくれとニカッと笑う山本。

「これからは一緒に教室で過ごそうよ。」

座っている美那に手を差し出すミキ。

美那はミキの手を取って立ち上がると彼等ならきっと大丈夫だと思って今までツナにしてきたことを話した。ツナを苦しめてツナに絶縁されて辛い気持ちを誰かに聞いてもらいたかった。


美那の話を聞き終えた獄寺達は驚いたが軽蔑しなかった。獄寺と山本は以前ツナに対する態度が悪かったし、リング戦では美那を責めている。ミキは苛められるのが恐くて逃げていた。彼等は人のことは言えない。また美那を見て三人は美那が苦しんでいるのが分かった。美那の表情が辛そうで言葉はまるで懺悔のようだったからだ。


「美那はツナに絶縁されて二度と姉妹としてやっていけない。それがこんなにも辛いことも分かってなかったの。」

悔いる美那に三人は慰めるように言った。

「美那さん。もしかしたら時間が解決してくれるかも知れません。」

「許せないってことは許したくても許せないんじゃないかな?」

「姉妹が駄目なら友人としはやっていけるかもなのな。」

美那の話から獄寺達は恐らく、ツナと美那がこれから先接点を持つ可能性はないと分かっているがもしかしたらの可能性を美那に残してあげたかった。

美那もまたツナとの修復は不可能だと理解していたが獄寺達の優しさに心から。

『隼人と武とミキを大切にしていくわ。三人は親友だから。』

ずっと傍にいてくれた獄寺と山本、親友として戻ってきてくれたミキに感謝したのだった。


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