琥珀のカナリア


ツナが美那達に伝えると決めた日から数日が経った土曜日の午後、ツナと雲雀は沢田家のリビングに居て奈々がお茶を出して家光の隣に座るとリボーンが美那を連れてリビングに入って来た。

「ちゃおっす。ツナ、雲雀。」

「リボーン久しぶり。」

ツナはリボーンに軽く答え、雲雀は頷いて答えた。
美那は俯いて無言で奈々の隣に座りリボーンはツナの隣に座った。

緊張した空気の中、最初に口を開いたのは顔を上げた美那だった。

「ツナ。ツナを追いつめて酷いことして本当にごめんなさい!」

謝罪した美那は頭を下げると奈々と家光も頭を下げて謝罪した。

「ツッ君本当にごめんなさい。ツッ君の言葉を聞かないで勝手に決め付けて本当にごめんなさい。」

「本当にすまなかった!ツナが辛い思いをしたのは父さんのせいだ!ちゃんとツナの言葉を聞いて判断するべきだった!」

頭を下げ謝罪する美那と奈々と家光にツナは頭を上げるように声をかけた。

「母さん、父さん、美那ちゃん頭を上げて。」

三人の顔を上げさせるとツナは思っていることを話す。

「家族としての謝罪とかは要らないんだ。家族だって思ってないもの。」

家族だと思っていないと告げるツナに美那と奈々と家光は胸が痛んだ。ツナは家光と奈々を見詰めて話を続けた。

「母さんも父さんも血の繋がってるだけの他人。他人にどう思われても俺は気にしない。だから許すも許さないもないんだ。」

血の繋がってるだけの他人と言われて家光と奈々はツナの箱庭療法を思い出した。ツナのフィギュアから一番離れている所に置かれた自分達のフィギュア。その意味はツナは自分達のことを諦めているということを雲雀から説明された。
家光と奈々はまさに血の繋がってるだけの他人だとツナに告げられたことで思い知り俯いた。
ツナは視線を美那に向けた。子供の頃とは違い、怯えることなく真っ直ぐ見据えて。

「美那ちゃんが俺にしてきたことは今なら分かるよ。養子だから不安だったんだよね?でもね許せないんだ。理由は言わなくても分かる筈だよね。俺を追いつめて道具扱いしてきたんだから。」

「・・・・・・それは分かってる。」

辛うじて答えた美那。ツナは続ける。

「謝罪は要らないよ。謝罪されても美那ちゃんがしてきたことは絶対に消えない。」

「・・・・・・。」

無言で頷く美那にツナはあることを求めた。

「でも償いはしてもらうよ。」

「償うことは決めていた。何でもするわ!」

ツナは美那の顔を見て言った。

「心から反省してランボとイーピンとフゥ太に脅したことと自分の役割を押し付けたことそして鬱憤ばらしをしてそのことを擦り付けたことを謝って。自分より年下の子達に酷いことしたんだ。それも許せない。」

ツナに指摘され美那は子供達にまだ謝罪していなかったことに気付いた。

「酷いことしてきたこと、ちゃんと謝るわ。」

美那の表情は固かったがその場しのぎの言葉ではないことを語っていた。
そんな美那を見てツナはきっと心から謝罪してくれるだろうと分かるとソファーから立ち上がった。

「お兄さんの家に行って家族って何か分かったんだ。お兄さんもお兄さんのお母さんもお父さんも女中さん達も優しくて信じてくれて俺を俺として見てくれる。話を聞いてくれる。凄く温かいんだ。」

ツナは一旦話を止めると強い意志を持った目をして美那達に告げた。

「この家は凄く冷たくて寒いんだ。良い思い出なんて1つもない。だから俺はこの家から離れるよ。沢田家光さん、沢田奈々さん、沢田美那さん。さようなら。・・・・・・そして二度と同じ過ちを犯さないで。」

言い終わるとツナは泣き崩れる美那達には目もくれず玄関に向かって行った。ツナにとって美那と家光と奈々は不要だと態度で語っていた。


雲雀はやっと終わったとソファーから立ち上がると涙を流している家光と奈々、美那に嘲るように言った。

「門外顧問、沢田奈々。二度とあの子に会おうなんてしないで。たとえ道端で会っても話し掛けるな。親の立場を自ら放棄したんだから。」

「「っ・・・・・・。」」

「沢田美那。あの子を陥れなければ君の心は満たされていたのにね。」

「え・・・?」

「仲良くしていれば君はあの子から姉妹としての愛情を惜しみ無く貰えたのに。」

「っ!?」

「君って本当に馬鹿だよ。」

雲雀はそれだけを言うとリビングから出て行った。


名前で呼ばれ他人だと言われた家光と奈々はツナがこの家を出て行くのは当然だと理解してツナから絶縁されて改めて自分達の過ちを悔いた。美那もまた今までしてきたことを悔いた。


雲雀が沢田家を出ると門柱の傍で待っていたツナは晴れやかな顔していて雲雀はツナの心は美那から解き放たれたんだなと分かり笑みを見せた。

「小鳥帰ろうか。」

「はい。」

ツナと雲雀は手を繋ぎ帰路に着いたのだった。



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