琥珀のカナリア

カナリアの思い



応接室から退室した美那はまだ午後の授業まで時間があるからといつもの階段に戻った。
階段に座って時間を潰す。
昼休み弁当を一人で食べるのは虚しくてそれが寂しい。

「でもツナはずっとそうだったのね。」

膝を抱えて俯く美那はまさに因果が回ってしまっていた。


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奈々はツナの自室の掃除をしていた。
ツナの自室にはあまり物がない。幼い頃はそれなりにあったが奈々が買い与える度にすぐに壊れてしまっていた。
あの頃は物は大切に使わないと駄目だと叱ったが今となればきっと美那が壊していたのだろう。

「ツッ君はやってないって言っていたのに何でもっと話を聞いてあげなかったの。何でツッ君と美那ちゃんの間に何かがあるって気付かないでいたのかしら。」

後悔したところで時は戻らない。

「美那ちゃんを引き取ったことで美那ちゃんに寂しい思いをさせないようにしていたけどツッ君をほったらかしにしていいわけない。何かあれば話してくれる筈なんて思っていて。でもそれはツッ君をほったらかしにしていることと同じなのに。」

過去に近所の主婦達に言われた言葉。

《少しは子供自身をちゃんと見てあげた方が良いわ。》

「このことを言っていてたのね・・・。」

掃除の手を止めてツナの机を見た。
美那の机には流行りの雑貨や家族で撮った写真が飾られているがツナの机はまるで誰も使っていないかのようで物が一切置かれていない。

『ツッ君はもう帰って来ないかもしれない。』

奈々は机を拭きながらそう思った。


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家光はリビングのソファーに座っていた。
9代目が自分に与えた休暇の意味を悟った。

「9代目はこのことを分かっていたのだろう。」

雲雀による制裁のことを。

雲雀に言われて初めて知ったことの数々を思い出す。

養女に迎えた美那にツナはずっと嫌がらせをされていたこと。
それに気付かないでいる両親に期待しなくなり、この家で一人ぼっちだったこと。
帰国した自分をツナは見なかったこと。
久しぶりに見たツナの笑顔と以前のツナの笑顔が全く違うこと。
雲雀家で過ごしているツナは沢田家に帰ることを嫌がっていること。

我が子を見ているつもりでいたが実際は見ているように思っていただけで、我が子も養子も全く見ていなかった。

そして家族の為と思いつつもボンゴレに何かが起こるとボンゴレを取ってしまい録に帰国することもなくなってきていて。でもそれは奈々1人にツナと美那の世話を押し付けたのと同じだと漸く分かって。家光は父親失格だと気付いた。

「もし気付いていたら、ツナはずっと明るい笑顔で過ごしていたし美那は陥れることをしないで済んだのだろうな。」


親である自分が間違った道に進んだ結果、歪んだ家族。その犠牲になったツナ。


「ツナはこの家に良い思い出はない。あるとしたら美那が来る前だ。だがその頃のツナは3才で殆ど覚えてはいないかもしれないな。」



そんな思い出しかない家に帰りたいとツナは思わないだろうと家光もまた奈々と同じことを思った。

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ツナは京子と花とお喋りしながら平和だと思っていた。
雲雀家に行ってから美那に道具扱いされることもなく、話を無視されることもない。少し前までとは大違いだ。

『こうやって笹川さんと黒川さんとお喋り出来るって楽しいな。』

そう思っていると京子と花に言われた。

「ツナちゃん。そろそろ名字じゃなくて名前で呼んで欲しいな。」

「名字じゃよそよそしいわ。私はツナって呼ぶから。」

そう言われてツナはモジモジしながら二人の名前を口にした。

「えっと、京子ちゃん。花ちゃん。」

モジモジするツナを見て京子は可愛いと言って更にモジモジさせ、花は『このモジモジっぷりも風紀委員長はお気に入りなんだろうな。』と思った。


授業が終わりツナは雲雀と一緒に帰宅すると雲雀は自分の部屋に来るように言った。

「部屋着に着替えたら僕の部屋においで。大事な話があるから。」

「分かりました。」

ツナは部屋着に着替え雲雀の部屋に行った。雲雀に促されて座布団に座ると雲雀は話をした。

「小鳥。この前の日曜日に小鳥の両親が謝罪したいって言ってきて美那も謝罪したいって言ってる。」

「美那ちゃんと母さんと父さんが謝罪ですか?何か意外です。」

家光と奈々は無意識でツナを放置し、美那は両親の愛情を一人占めするためにツナを陥れていた。そんな彼等が謝罪したいと言っていると雲雀に教えられツナは目を丸くして驚いた。
目を丸くしているツナに雲雀はどうする?と聞いた。

「小鳥はどうしたい?謝罪を受ける?」

ツナは暫く考えた。
雲雀家で過ごすことになってから一度も奈々には会っていない。家光はリング戦で数回会ったが会話はしていない。
このまま雲雀家で過ごすのは半端なのではと思ったツナは雲雀に言った。

「謝罪とかどうでも良いんです。でもこのままここで過ごすのは半端な感じがして。だからちゃんと思っていることを話したいです。」

沢田家には戻らないし戻りたくないこと、自分にとって帰る場所は雲雀家だということをツナは美那達に伝えることにした。



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