琥珀のカナリア


家光と奈々から話を聞いた美那はベッドに腰を掛けていた。

「お母さんとお父さんがツナに会えなかったってことは美那は門前払いよね。それでも謝罪してツナに償っていかないと。」

自分は加害者だから。

美那はどうやって償っていけばいいのかと悩んだ。


翌日ーーー

登校したツナは京子と花に聞かれていた。

「デートどうだった?楽しかった?」

京子のこの質問は問題ない。だが花の質問にはツナは気絶しそうになった。

「手は繋いでるのは見てるけどその先は進んだの?」

「えっ!?」

顔を真っ赤にして気絶寸前になるツナに京子はしっかりしてと声を掛けて、花は雲雀のことを未だにお兄さんと呼んでいるツナにこのような話はまだまだ無理かと内心で苦笑した。


昼休みになり珍しくツナは京子と花と教室で昼食を食べていた。

「ツナちゃんとお昼食べるの久しぶりだね。」

「沢田はいつも雲雀先輩と食べてるから。」

花の言う通りツナは昼休みは雲雀と過ごしているのだがこの日は風紀委員会の仕事が多い為に雲雀はツナに今日は京子達と過ごすように言っていた。

「何か今日は風紀委員会の仕事が多くてお兄さんご飯食べる暇も無いみたいで。」

「委員長だと忙しい時もあるんだね。」


ツナ達はほのぼのと過ごしていた。
だが風紀委員会の仕事が多いのは嘘。雲雀は応接室に美那を呼ぶ為にツナに嘘をついていた。


ーーーー

美那は相変わらず誰も来ない階段に座っていると美那の前に風紀委員が立っていた。

「委員長がお呼びだ。付いて来い。」

風紀委員は言うとさっさと歩き出し美那は風紀委員の後ろに付いて行った。

風紀委員が応接室の前で待機している草壁に取り次ぐと草壁は美那を応接室に通した。

「委員長。沢田美那が来ました。」

美那が恐る恐る応接室の中に入ると雲雀は草壁を退室させた。

「副委員長。暫くここには入らないで。」

「分かりました。」

草壁は頭を下げると応接室を出て行った。
応接室に入った美那は何故呼び出されたのか分からずにいた。そんな様子の美那を気にせずに雲雀は口を開いた。

「僕があの子を取り上げてから大変だったんじゃない?あの子が居なかったら君は何も出来ないからね。自分を良く見せることも嫌なことを押し付けることも出来なかった。そうだよね?」

「・・・・・・。」

失声症のツナを庇うことで自分を良く見せて嫌なことは押し付けてきた美那は雲雀が言っていることは事実だと認めて俯いた。
俯いている美那に雲雀は続ける。

「門外顧問と沢田奈々が言っていたけど謝罪したいって本気?」

「謝罪したいし、償いもしたい。」

顔を上げて言う美那には本気だというのが伺えるが雲雀からしたらツナから沢山の物を奪い心をズタズタにしてきて今更何を言っているんだと苛立ちしかない。

「・・・償いね。なら聞くけどどうやって償っていくんだい?」

「・・・ツナが許してくれるまで謝罪するわ。そして家族としてやり直したいって思ってる。」

答えた美那に雲雀は切れ長の目を細くして言った。

「それは償いじゃない。だって君と門外顧問と沢田奈々は家族の形を知らないじゃない。それなのにどうやって家族としてやり直すのさ?」

「そ、それは・・・・・・。」

口ごもる美那に雲雀は家光と奈々に見せた写真をデスクに置いた。

「これを見てみな。」

美那は手に取って写真を見る。

「箱の中に玩具が入ってる。これは何?」

「あの子の心の中だよ。」

「ツナの心の中?」

「そう。その写真だと上部の方に置いてあるのはあの子と僕。そして笹川京子と笹川了平と黒川花。その近くに置いてあるのは赤ん坊と居候達だ。」

雲雀に言われて美那は写真に写るフィギュアを辿るように見た。雲雀は続ける。

「下部の方に置いてあるのは君の両親さ。セラピストの説明だとあの子は両親を信頼していないらしいよ。」

「・・・・・・。」

美那はツナが家光と奈々を信頼しなくなったのは自分のせいだと分かって口を閉じる。

「君の両親達の近くに髪の長い女の玩具があるだろ?それが君。」

そう言って雲雀は拡大された写真を出した。美那は写真を見た。
美那を表しているフィギュアはツナのフィギュアの方を向いている。美那は悪い意味を表していると思い小さな声で聞いた。

「恭弥君・・・これは?」

「君のフィギュアはあの子を押さえ付けて監視しているのを表しているんだ。セラピストが言うにはあの子は君を恐れていて離れたいと思ってるんだって。つまりあの子は沢田家には戻りたくないんだよ。それはそうだよね。君はあの子から色々奪って最終的に道具扱いしたんだから。」

「・・・・・・。」

居場所を奪ってツナの私物を奪って声を奪って道具として扱った。そんな美那がどうやってツナとやり直すのか?と問う雲雀に美那は何も言えない。そんな様子の美那に雲雀は話を変えた。

「君の身に起きてることについては本来なら風紀を乱した愚者達と一緒に咬み殺したいところだけど人数が多すぎて面倒だから風紀委員会からは一切介入しない。」

雲雀は美那がクラスの女子と獄寺と山本のファンクラブの女子達から嫌がらせをされていることについては何の手も打たないと言うと書類に目を通し始めた。美那は話が終わったと分かり退室した。



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