琥珀のカナリア


雲雀家に着き家光と奈々は女中に案内されてていたが空気が重い。というよりは雲雀家の女中や料理人等の使用人の視線が気になる。だが蔑視されていることに気付けない愚かな家光と奈々は居心地が悪い中応接間に通された。


豪華な調度品が並ぶ応接間で暫く待っていると雲雀が入ってきた。

「久しぶりだね。座りなよ。」

雲雀に進められて家光と奈々は座るがツナがいないことに怪訝そうにした。訝しげにしている家光と奈々に雲雀は徐に応接間の空いている窓を指す。
家光と奈々は窓を見ると応接間の向かい側に離れがある。その一室から懐かしい声を聞いた。

「もしかしてツッ君!?」

「ツナの声か!!」

雲雀は嘲笑うように言った。

「あの子の声が出るようになったって美那に聞いてなかったのかい?それ以前にあの子の声覚えてなかったみたいだね?」

嘲笑する雲雀に家光と奈々は何とも言えない顔をするがツナの声がした部屋を見ているとツナ本人が姿を見せた。と言ってもツナは家光と奈々に全く気付いていないが。(雲雀と薫が珍しく協力してツナには何も知らせずに離れに来るように伝えていた。)

ツナが入った部屋には薫が居て着物を見せていた。

「綱吉ちゃん。この着物今度のお茶会にどうかしら?」

鮮やかな柄の着物を出して見せる薫にツナは申し訳なさそうにした。

「ごめんなさい。実はお父様が昨日選んでくれた着物を着ることになっていて。」

「そうなの?それにしても恭二さんったら勝手に決めるなんて!綱吉ちゃん次のお茶会はこっちにしましょうね?」

「ありがとうございますお母様。」

「お茶にしましょうか。」

薫は着物をしまうとツナと一緒に台所に入っていった。
台所の中は伺えない。家光と奈々は雲雀の方に向き直った。

「ツッ君はあそこに居るのね!お願いします会わせて下さい!!」

「ツナに会わせてくれ!」

必死に頼む二人に雲雀は予め用意をしていた物を見せた。
テーブルに写真を置き「これ見てみなよ。」と促した。
家光は写真を手に取り奈々と見た。

「何だ?この写真は?」

「箱の中に玩具が入ってるわね?」

この写真が一体何だと困惑する家光と奈々に雲雀は教えた。

「これは以前、沢田奈々が勘違いしてあの子にやらせなかった箱庭療法だ。」

奈々は写真を見ながら言った。

「勘違いってツッ君は声が出ないだけで精神病じゃないわ!」

「確かに精神療法や心理療法の一つだけど箱庭療法は患者が箱の中に玩具を入れていきセラピストは見守りながら患者が言葉には表せないことを読み取って患者に寄り添って治療していく療法なんだよ。」

「え?」

「医師の話をろくに聞かなかったというよりはあの子にこの治療を受けさせることで自分達が白い目で見られるのを恐れていたんだろう?」

「っ!?」

見透かされて奈々は言葉を詰まらせた。家光は奈々が治療を受けさせなかったことに驚いたが真実を知り家を空けっぱなしにしていたのを負い目に感じ責めることはしなかったが雲雀に箱庭療法の結果を求めた。
雲雀は説明していく。

「写真の左上にあるのはあの子と僕を現している。あの子にとって僕が一番信頼されているって。そして近くにはあの子の友人達と赤ん坊達を現していてあの子にとって友人達と赤ん坊達は僕の次に信頼されている。」

家光と奈々はそれじゃあ自分達はどうなのだろうと考えると黙り込んだ。家光も奈々もツナを蔑ろにしてきたのだから。

「問題はここからさ。あの子から一番離れた所に置かれているフィギュアが貴方達だよ。あの子ね、貴方達のフィギュアを置くとき適当に置いたらしいよ?あの子に取って貴方達には期待もしていないし、諦めていることを現しているんだ。でもそうだよね?だってあの子は美那が来たころから何を言っても貴方達に信じてもらえずにいたんだから。」

信頼も信用も出来ないのは当たり前だと話す雲雀に家光と奈々は項垂れた。

「それで貴方達が可愛がった美那は最悪だよ?写真をよく見てみなよ?箱の中の中心に1体のフィギュアが美那。美那のフィギュアがツナのいると方を向いているよね?」

「ええ。」

「確かに。」

「美那のフィギュアを置いたとき、あの子は自分に見立てたフィギュアを美那から反らすように置き直したんだ。つまりあの子にとって美那は悪魔なんだよ。貴方達が美那の言い分だけをホイホイ聞いた結果、美那はどんどん増長していって更にあの子を悪者にして自分を良く見せようとしていくことに長けていったんだ。貴方達は実子を見捨てて養子の短所を伸ばしただけなんだよ。」

「「っ!?」」

「美那を引き取って大切に育てるのはいい。だけどあの子を放置していい訳じゃない!!貴方達の態度でどれだけあの子は傷付いてきたと思っているんだ!!それでもあの子の親なの!?」

「「ーーーーーっ!!!」」



雲雀は怒鳴った後、家光と奈々に見せていた表情を一転させた。


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