琥珀のカナリア
抱き留められたツナと抱き留めた雲雀は顔を見合わせて。
「小鳥、今、声が出たよね?」
「・・・はい。」
「小鳥!!」
その場で雲雀はぎゅうぎゅうツナを抱き締める。人が居なかったのは幸いだった。
ツナは抱き締められて顔を赤くして嬉しそうに笑ったがあることに気付いて俯いた。
『声が出るようになったのは良いけど家に帰らなきゃならないんだよね。』
雲雀家での生活は楽しく幸せだった。雲雀と薫と恭二、女中達はツナをツナとして見てくれる。決して美那のように道具のような扱いはしないし、奈々と家光のように話を聞かないなんてことはしない。
はっきり言って沢田家はツナにとって帰る家ではないと思っている。
そんなツナの様子に気付いた雲雀は安心させるように言った。
「小鳥はずっと僕の家に居れば良いんだよ。」
「居て良いんですか?」
「うん。さあ帰ろうか。」
二人は寄り添って帰宅した。
雲雀家の玄関に着くと女中達がお帰りなさいませと言って会釈する。
雲雀は軽く頷き、ツナは少し恥ずかしそうに口を開いた。
「ただいま帰りました。」
澄んだ声が聞こえてきて女中は驚いた。
「小鳥様っ!?」
「今、声が!!!」
驚く女中の声に薫と仕事を終えていた恭二がリビングから出てきた。
「騒々しい。何があった?」
「どうしたの?」
女中が言う前にツナがまた少し恥ずかしそうに言った。
「ただいま帰りました。」
ツナの声に薫と恭二は目を大きくさせたとほぼ同時に良かった!今日はお祝い!と騒ぎ出した。
「綱吉ちゃん良かったわね!」
「今日はお祝いだな。」
盛り上る薫と恭二に恭弥はもう少し静かに出来ないのかと呆れ果てた。
そしてこの日の夕食はまさにご馳走だった。
美那が帰宅すると奈々は台所で夕食の準備をしていて、家光はリビングのソファーでうたた寝をしていた。
「美那ちゃんお帰りなさい。もうすぐ夕飯だからフゥ太君達を呼んで来てくれる?」
「分かった。」
美那は一旦部屋着に着替えてから子供部屋に行った。
「もうすぐ夕飯だから。」
頷く子供達だが美那を見る目は美那への恐怖しかなかった。
何も言わずにリビングに行く子供達を見て美那は幼い頃のツナを思い出した。
「何で小さい頃のツナを思い出したのかしら?」
何故か美那の胸がチクリと痛んだ。
翌日、京子と了平と花は目を大きくさせて喜んだ。
「ツナちゃん!声が出るようになったんだ!」
「沢田良かったわね!!」
「極限にめでたい!」
朝練が終わって教室に入って来た山本とビアンキに会うことなく並中に着いた獄寺も「良かったのな!」「沢田さん声が出るようになったんすね!」と声を掛けられツナはありがとうと答えた。
ツナの声が出るようになったことは美那のクラスにも知れ渡った。
『声が出るなら帰って来るのよね?でも今のツナはあの頃のツナじゃない!美那はどうしたら良いの!?』
ザンザス相手に戦ったツナは幼い頃の弱くて泣いてばかりのツナではないことを分かっている美那は絶望のふちに立たされた。
ツナが美那にされてきたことを奈々と家光に言うかも知れないと焦ったが思わぬ所から奈々と家光に知られてしまうことになる。
ーーーー
雲雀は応接室でリボーンと会っていた。
草壁がリボーンに珈琲を出して、雰囲気を察して退室していくと雲雀は口を開いた。
「あの子の声が出るようになったよ。たまにかすれたりもするけど。」
珈琲を飲んでいるリボーンは目で何かを企んでいるのだろうと続きを促した。
「赤ん坊に頼みたいことがあるんだ。美那からあの子を取り上げたことで他の子があの子の代わりになったと思うんだ。それを僕に教えてほしいんだ。」
「つまりランボ達に聞けと?」
「うん。それを美那にもあの子の両親モドキにも知られないようにしてくれる?内容によっては使えるから。」
リボーンは珈琲を飲み干すと苦笑混じりに言う。
「俺様をパシリにする奴はお前くらいだ。今なら美那は授業中だしママンと家光は出掛けてるから余裕で聞けるだろ。」
そう言い残しリボーンは窓から飛び降りた。
雲雀は「さて美那は何をしたのかな?」とニッと笑った。