琥珀のカナリア

舞台の崩壊



リング争奪戦が終わり、ツナ達はいつもの日常に戻った。

「ツナちゃんおはよう!」

「足はもう大丈夫なの?」

「極限にムリはするな!」

雲雀に教室まで送られてきたツナは京子達に頷いた。

「それじゃ昼休みにまた来るから。」

《はい。待ってますね。》

雲雀はそう言ってツナは口を動かして答えた。
雲雀が応接室に向かって歩き出すと花は驚いたようにツナに聞いた。

「もしかして、雲雀先輩って口の動きで沢田の言ってること分かるの!?」

ツナはメモ帳を出して説明した。

〈うん。最初は分かんなかったみたいだけど最近は分かってくれるんだ。〉

メモ帳を見た京子は凄い!と驚き、花は一緒に暮らせば分かるものなかなとなんとなく納得して、了平はそれには気にせず「極限にマネージャーだ!」と騒いでいた。


ーーーー

美那は数日前のことから嫌がらせは無くなったがクラスの女子達に無視されていた。
理由を知った美那はさすがに女子達に怒りを感じることはなかったが居心地は悪いものだった。

休み時間は一人で過ごし、体育はチームを組む時はどこかのチームが仕方ないと言わんばかりに入れてくれるが話は一切しない。

美那は誰も来ない階段に座って弁当箱の蓋をあける。ツナや山本、獄寺のクラスには行けない。それ以前に山本は野球部のミーティングで獄寺はまたもやビアンキに遭遇して欠席していたが。

学校では一人ぼっちだったツナより酷い状況。

「学校行きたくないけど。行かなきゃ母さんと父さん心配するから。」

玉子焼きを口にすると「今日はしょっぱいオカズが多いわね。」と言いながら食べた。


ーーーー

一方、昼休みが始まりツナは土曜日にデートすると京子と花に言った。

「えっ!デート!!」

「どこに行くの?」

弁当そっちのけで聞く京子と花。ツナはメモ帳に書いていった。

〈まだ決まってないないんだ。普通、デートって何処に行くのかな?〉

読んだ京子と花はそこからなの?と内心で突っ込んだが片や群れ嫌いで片やそのてのことに鈍い。そんな二人には中々思い付かないだろうと検討を付けた京子と花はアドバイスした。

「普通なら映画とか遊園地とかかな?」

「水族館もデートって感じで良いと思うけど、雲雀先輩は群れるの駄目よね?」

〈俺は一緒ならどこでも良いんだけど。〉

「一緒ならどこでも良い!沢田のノロケ出た!!」

茶化す花にツナはトマトのように顔を赤くして。京子はふと思い付いた。

「あのね、ツナちゃんと雲雀先輩が初めて会った場所とかどうかな?」

「それなら雲雀先輩も何とか大丈夫なんじゃない?どこで会ったの?」

「それは私も知りたい!」

食い付く京子と花。ツナは恥ずかしそうにメモ帳に書いて見せた。

〈並盛と黒曜の間の公園だよ。〉

京子と花は読んであの公園かと言った。

「あの公園、前はちょっぴり寂れてたけど最近は整備されてるみたいでキレイになってるよね。」

「公園の近くにクレープ屋も出来たみたいだし。デートはそこに行ってみたら?」

〈ありがとう。お兄さんに聞いてみるね。〉

ツナは嬉しそうに頷くと雲雀の声がした。

「迎えに来たよ。」

ツナはメモ帳をスカートのポケットにしまうと京子と花に行ってきますと口を動かした。
さすがに状況からこれは分かるらしく京子と花は行ってらっしゃいと送り出した。


応接室で昼食を取りながらデートで行きたい所を雲雀に伝えた。

《お兄さんと初めて会った公園に行きたいです。》

「あの公園か。良いね。」

《公園の近くにクレープ屋さんがあるって笹川さんと黒川さんが教えてくれました。》

「それじゃ公園に行こうか。それに小鳥はクレープが気になってるみたいだしね。」

《美味しいじゃないですか。クレープ。》

雲雀に言われてツナは素直に頷いた。


放課後になりツナと雲雀は手を繋ぎ歩いていてツナの隣には京子と花がいた。
雲雀は群れていると思うが相手はツナの親友でツナと話す切っ掛けを作ってくれた京子と花で邪険にする気はないようだ。
校門を出ると京子と花はツナと雲雀にまた明日と言ってツナもまた明日と口を動かし、雲雀は軽く頷くとそれぞれの帰り道を歩いていった。

手を繋いで帰るツナだが、転がっていた石に足が取られ転びそうになり慌てて雲雀が抱き留めた時ーーー


「あっ!?」


懐かしくそして清んだ声がした。



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