琥珀のカナリア
帰宅すると気分が優れないからと夕食を取らずに美那は部屋に籠りベッドに寄りかかって膝を抱えた。
「秋子達にあんなに恨まれてたなんて。」
リング争奪戦で行動を共にしていた。
でもその前から一緒にいた。
「きっとその頃から美那は秋子達に嫌われてたんだ。」
美那は生まれて初めて恨まれることの怖さ、嫌われることの怖さを知って。
「このまま母さんと父さんに嫌われたら。」
大きく開いた暗闇の中に叩き落とされるように感じて美那は体をブルリと震わせた。
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夕方、雲雀の自室にリボーンが訪ねてきた。
「ちゃおっす!」
「赤ん坊か。何か用?」
「ああ。ツナは?」
「あの子は今風呂だよ。」
「そうか。じゃあこれから俺が言うことを伝えてくれ。明日の12時に並盛センチュリーホテルのロイヤルスイートに来い。お前もな。」
「分かった伝えておくけどそこには笹川と美那と草食動物達も来るの?」
「いや、了平達は来ねえ。美那は家光と一緒に10時に9代目から結果を伝えられる。」
「それなら良いよ。」
「それじゃーな。」
リボーンは雲雀の自室を出て行った。雲雀は明日で決まるのかと思うと同時にそろそろ沢田家に仕掛けてやろうかと考え出した。
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翌日、美那は朝食を取らずに家光と並盛センチュリーホテルに向かっていた。
「父さん美那は10代目にはなれないわ。」
「確かに逃げ回るのはアレだが隠れて敵の動きを見ながら動いていたんだろ?大丈夫だ!」
「・・・うん。」
並盛センチュリーホテルに着いた美那と家光は9代目の守護者達に案内された。
ロイヤルスイートに入ると9代目が待っていて美那と家光に座るように促した。
テーブルには紅茶が既に淹れられていてケーキスタンドには上の段からスコーン、ケーキ、サンドイッチが乗せられていて、他にもクッキーやフルーツが皿に並べられていた。
美那と家光が席につくと9代目は美那に勧めた。
「好きなのを食べなさい。」
美那はスコーンを取りブルーベリージャムを塗って食べ、家光は紅茶を一口飲んだところで9代目が話をした。
「結果から言おう。」
自分は相応しくないと言われると分かっている。獄寺と山本、了平に指摘されてしまっているから。美那は9代目の言葉を待つ。
「美那さんは10代目には出来ない。」
美那はああ、やっぱりと思って俯いて、家光は何故と口を開いた。
「9代目何故でしょうか?」
「理由は2つ。1つはリング争奪戦での美那さんの行動じゃよ。」
「っ・・・。」
「しかし、逃げ回っていたように見えますが美那はザンザスの動きを見て動いていました。」
俯いたままの美那に家光はフォローを入れた。
9代目は続きを話す。
「実はこれは家光にも黙っていたんだがヴァリアーと顔合わせが終わった直後からリング争奪戦は始まっていたんじゃよ。」
ヴァリアーとの顔合わせが終わった直後から始まっていた。そのことに驚いた美那は顔を漸く上げた。
「あの、顔合わせの直後からってどういうことですか?」
9代目は穏やかに話を進めていく。
「顔合わせの日、ザンザスはチャンスを与えた筈じゃ。そのチャンスを美那さんは深く考えずにいたね?」
確かにザンザスはチャンスをやるとツナと美那に言っていた。
「・・・はい。」
「でも綱吉さんは直ぐに考えてザンザスに会いに雲雀恭弥君と行ったのじゃよ。そしてザンザスに頼んだのだよ。ランボ君を争奪戦を棄権させて欲しいと。」
「えっ・・・?」
「戦うだけがマフィアではないのじゃよ。交渉するのまたマフィア。家光、そうだね?」
話を家光に振った。
「はい。それでは守護者としてランボを選ばれたのは交渉するかどうか調査する為に?」
「その通り。もし綱吉さんも交渉しに来なくてもランボ君は守護者から外すつもりだった。いくら将来有望でも5才の子供には荷が重いからね。」
9代目は紅茶を一口飲むと話を再開した。
「そして一昨日の雲戦と大空戦での美那さんの行動はあってはならないことだ。敵の動きを見て戦略を立てるのと逃げ回るのは違う筈。仮にそんな美那さんの行動を見たらボンゴレの構成員達は信頼しない。中には捨て駒にされると思う者も出てくるだろう。」
ボスと部下の絆を大切にするボンゴレ。
その真逆とも言える行為した美那は10代目としては失格だ。
了平にも同じようなことを言われていた美那はまた俯いて。家光は美那を気遣いながらもう1つの理由を聞いた。
「ではもう1つの理由は一体何でしょうか?」
聞かれた9代目は暫く無言だったが美那を見て話をした。
「2つ目の理由は美那さん自身じゃ。美那さん、君はインプルストファミリーのドンナであったヴァネッサと夫であるキースの子供ではないのだよ。」
美那は嘘でしょ?と言わんばかりの表情で顔を上げた。