琥珀のカナリア


翌日、ツナはほぼ強制的に薫に学校を休まされた。


朝食を取るため食卓についたツナと雲雀を見た薫は目を剥いた。

「その怪我どうしたの綱吉ちゃん!?」

ツナの頬と右足に湿布が貼られ、両手はガーゼが。そして所々に絆創膏が貼られていた。

ツナは書いて薫に見せた。

〈階段から落ちて怪我しました。〉

「階段からっ!?大変だわ!!」

〈大丈夫です。〉

薫はツナが居間に入って来た時にツナが右足を庇うように歩いているのを見ていた。

「でも無理すると悪化するかもしれないから今日は学校お休みしましょうね。」

優しく言った薫は雲雀に目線を変える。

「恭弥はいつものことみたいだけど気を付けなさい。」

実の息子にはサラッと言う薫に雲雀は余計なお世話だと言うようにフンッと鼻を鳴らして雲雀親子のやり取りにツナはあたふたして止めに入った。



沢田家ーーー

眠れぬ夜を過ごした美那は朝食もそこそこに登校した。校庭では野球部の朝練に出ている山本がホームランを打ち、回りには山本のファンクラブの女子達が歓声を上げていたが美那に気付いた女子がここに来るなと言わんばかりに睨み付けてきた。

「ーーーっ!?」

睨まれた美那は顔を悔しそうに歪め足早に昇降口に入っていた。

「何であんなに睨まれなきゃいけないのよ!」

下駄箱を開けると大量のゴミが詰め込まれていた。
やや乱暴にゴミを出していくと上履きがなくなっていた。

「なっ!?」

美那は職員室まで行き上履きを忘れてたと言って来客用のスリッパを借りた。もっとも今日は金曜日で忘れたと言った美那に教師は訝しげにしていたが。
スリッパで教室に入って来た美那にクラスの女子達はクスクスと笑った。

「あれって来客用のスリッパだよねー?」

「じゃあ沢田さんはお客様?」

「マジでウケる~!」

「ーーーっ!!」

美那は何でこんなことになったと思い俯いていると担任が教室に入って来て、美那は自分の席に着いた。


ツナのクラスでは京子と花は心配そうにツナのメールを見ていた。

「怪我したってメール入ってたけど大丈夫かな?」

「お見舞いに行きたいけど風紀委員長が不機嫌になりそうよね。」

「そうだね。」

京子と花が話していると朝練が終わった山本が教室に入って来る。

「おはようなのな。あれツナは?」

京子と花に話しかる山本に京子は答えた。

「ツナちゃんは今日はお休みなの。怪我したって。」

「そっか。」

山本は雲戦と大空戦のツナを思い出しそれはそうだと思った。
因みに獄寺はリング争奪戦が終わったことで安堵したビアンキに家まで押し掛けられ腹痛で欠席になっていた。


ーーーー

午後の授業、掃除が終わり美那は席に戻ると机に四つ折りにされた紙が置かれていた。紙を開くと差出人はミキで帰りのホームルームが終わったら屋上の入口まで来て欲しいと書かれていた。しかしミキの文字ではないと分かる美那。

『ミキの字じゃないわね。誰が?でも丁度良いかもしれない。』

今の状況を知る為に美那はホームルームが終わると屋上の入口に向かった。


美那が屋上の入口に着いて数分後、獄寺と山本のファンクラブの女子数名がやって来た。その中には同じクラスの秋子もいて上級生もいた。
最初に口を開いたのは美那。

「ミキの名前を使ってまで呼んだ理由は何?それに美那に嫌がらせしてるのは何で?」

美那の言葉に秋子は軽蔑したような目をして言った。

「本当に分からないんだ?だったら教えてあげる。あんたさ、ファンクラブにも入ってないのに山本君と獄寺君を一人占めしてムカつくんだよっ!!」

「えっ!?」

美那の驚いたような声に他の女子達が一斉に罵倒した。

「最低ね!獄寺君が仲良くしてくれているのを利用して振り回してる癖に分からないふりしないで!」

「あんたがいつも一緒にいるせいで数日前に山本危うくレギュラーから外されそうになったのよ!山本は野球部のエースなのに!」

「双子の姉の彼氏に媚を売って気持ち悪いんだよ!!」

「おまけに山本君と獄寺を引き連れて応接室に行ってさ。男好きの最低女っ!」

「尻軽女!お前なんかいなくなれ!」

女子達の怒りをぶつけられ美那は顔をひきつらせ怯えた。その顔を見て秋子達は更に怒りだした。

「自分のしてたことに気付かないでしかも怯えた顔しないで!」

「美那!私達はずっと我慢してきたんだよ!」

「悔しかったけど山本君が楽しそうだったから!」

「あの獄寺君が笑ってたから我慢出来た!なのにあんたは私達の気持ちを考えもしないで!!」

「本当にムカつくっ!ひっぱたいてやる!!」


パーーーーンッ

上級生に頬を打たれた美那はバランスを崩して階段から転がり落ちた。

「きゃあぁぁぁーーーーーっ!!」

転がり落ちた美那を見て秋子達は顔を青くして走り去った。

美那は身体中を打ったがリボーンが鍛えたのが良かったのか怪我らしい怪我はしていなかった。
痛みを堪えて起き上がる美那。

「・・・美那は皆に恨まれてたの?」

自分のしていたことを深く考えないでいた美那はよろよろと立ち上がり学校を後にした。


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