琥珀のカナリア


「お前は知っていたんだろう?何故俺に知らせなかった?」

「知らせても良かったんだがどうもこのリング争奪戦はただの争奪戦じゃねえと思ってな。成り行きを見守っているんだ。」

リボーンは9代目からツナでも美那でも構わないと言っていたことにずっと引っ掛かりを覚えていてその上に美那の炎。そこから生まれた美那の出生の謎のようなもの。これらを考えると成り行きを見守る他なかった。

家光からしたらたまったものではなかった。美那の炎は嵐属性。ボンゴレは継げない。それならそれを理由にして争奪戦を潰せば娘達を危険な目に合わせることはなかったのだから。
リボーンと家光が言い合いをしている時、校庭の方では校舎裏から飛び出てきた美那の姿があった。


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美那は注意深くツナと雲雀とザンザスの戦いを覗いていた。
最初の方こそツナの能力に嫉妬していたがリングを完成させれば勝ちだとチェルベッロに説明されたことを思い出してザンザスが戦闘不能になりツナも戦闘不能になるのを待っていた。
そして雲雀が勝利し、ザンザスが棄権したのを見て美那は好機だと校舎裏から走り出した。


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ツナと雲雀は美那がどこに居るか分からず警戒していたが思わぬ所から飛び出して来た美那にツナは殴り飛ばされた。吹っ飛ばされたツナは起き上がろうとしたが美那が押し倒した。

『ずっと校舎裏に居たの!?』

「雲戦は終わったけど大空戦はまだ終わってないのよ!リングは美那が貰うわ!!」

大空のハーフリングをツナの指から抜き取ると美那は立ち上がり大空のボンゴレリングを完成させた。

「アハハハハッ!ついにやったわ!」

笑顔で大空のボンゴレリングを嵌めようとした時、一人の声がした。

「待ちたまえ!」

威厳と優しさに溢れる声にツナと雲雀、美那は振り向いた。

『誰?』

「誰だい?」

「もしかして・・・。」

ザンザスは「ようやくお出ましか。ジジィ共。」と笑った。

美那を止めたのは9代目。そして9代目の傍には9代目の守護者達がいた。

9代目はツナと美那に話し掛けた。

「綱吉さんと美那さんだね?」

ツナは頷き美那は「貴方が9代目ですか?」と問い掛ける。

美那の問いに9代目は答えた。

「そうじゃよ。リング争奪戦全て見させて貰ったよ。と言っても今夜の戦い以外はヴァリアーに映像を送って貰ったがね。美那さん、大空のボンゴレリングをワシに渡してもらいたいのじゃが?」

美那はせっかく完成させたのにと思うがボンゴレのトップに言われてしまえば渡すしかない。

「分かりました。」

「確かに受け取ったよ。」

9代目は小箱に大空のボンゴレリングを入れると小箱を右腕であるコヨーテ・ヌガーに預けるとチェルベッロに観覧席からリボーン達とヴァリアーの幹部を出すように言う。
チェルベッロが観覧席の赤外線感知式のレーザーを解除した。

解除されて観覧席にいたリボーン達が出て来たが何とも言えない顔をしていた。特に家光と獄寺と山本が。
そんなリボーン達を見たが9代目は気付かぬふりをして口を開いた。

「全ての戦いを見せて貰ったよ。綱吉さんと美那さんの守護者達の勝ちとしよう。ただし10代目は明後日発表する。以上じゃ。」

話を終えた9代目は自分の守護者達と並中を去って行き、ザンザスとヴァリアー幹部もまた自分達の任務は終わったと去って行った。
ディーノは美那の炎に疑問を持ったがボンゴレの事情に自分が関わる訳にはいかないと結論付けて滞在しているホテルに、バジルは美那の炎について疑問を持っていたが家光から何も知らされていなかった為静観していた。そして今リボーンと家光が話込んでいるのを見て美那の炎のことで話をしているのだろうと察知してまた自分が入れる話でもないと判断し先にディーノとは違うホテルに戻っていった。


ツナは明後日で全て決まるのかと思うと不安しかない。

『どうなるだろう?俺はマフィアになんかなりたくない。』

それを感じ取った雲雀はツナの頭を撫でる。

『もし小鳥が選ばれたらボンゴレを潰してやるまでだ。けど僕の直感だと小鳥も美那も選ばれないと思う。』

ツナは未だに声が出ず、美那は逃げ回っていた。

そんなツナと美那を選ぶとは思えない。雲雀はそう考えてツナに怪我の手当てをしないとねと言って並中を出て行った。


家光は校庭の隅にリボーンを呼んで話をしていた。

「美那の炎は嵐属性だ。リボーン、一体どういうことだ!?」

焦りと知らされていなかったことで怒りが露になる。

「どういうことだと言われてもな。ただ美那の炎を見て俺はボンゴレ諜報部にインプルストファミリーの家系図を調べさせその家系図を見たんだがヴァネッサの夫もインプルストファミリーと関係がある親戚全ての人間で嵐属性の奴は一人も居なかった。」

「な、何だとっ!?それじゃ美那は誰の子何だ?」

「分からねえ。考えられるのはヴァネッサに愛人が居てその愛人との間に生まれたのか、もしくはヴァネッサの夫に愛人が居てその愛人が生んだ美那をヴァネッサが自分の子供として引き取ったんじゃねえか?それに俺が9代目の依頼を受けた時のことを家光覚えているか?」

「ああ。覚えているさ。だがそれが何だ!?」

美那のことで動揺している家光は怒鳴るように返す。

「落ち着け。依頼を受けた時最後に9代目はこう言った。 『頼んだよ。ああ、一つだけ言っておくよ。綱吉さんでも美那さんでもどちらでも構わないよ。』ってな。」

「しかし何故こんな重要な事を9代目は黙っていたんだ?」

門外顧問として知らされていなかったことにショックを受ける家光。リボーンは9代目は家光のツナと美那に対する接し方に気付いていたんだろうなと心の中で半ば呆れながら思った。


一方、美那達は遣りきれない空気に包まれていた。

「あの美那さん、試合での動きは一体?」

「作戦の一つだとしてもアレはちょっと酷いのな?」

「前日に大空戦と雲戦のルールを説明された時に沢田美那は公平じゃないと言っていたが極限今日の戦いは卑怯ではないのか?」

10代目になって雲雀を守護者にすることしか頭に無かった美那はザンザスと戦って力尽きたツナを不意打ちで押し倒しハーフボンゴレリングを奪い完成させたことについて了平達に言われていた。

「そ、それは・・・。」

「・・・沢田さんに対して酷い態度を取ってきた俺が言えたことではないんですが、ザンザスと戦って怪我をしている沢田さんに悪いとは思わなかったのですか?」

「俺も・・・獄寺と同じようにツナに酷い態度を取ったからあまり言えないけどさ、野球と同じで協力して戦うことは出来た筈なのな?」

「目的の為に考えて頑張るのは良いがやり口が汚いのは極限に感心はせんぞ!10代目とは主将のようなポジションなのだろう?主将がそんなでは回りの人間は付いて来る訳がないぞ!」

獄寺と山本に問われ、良平に指摘される美那は何も言えずに俯いた。俯いてしまった美那に獄寺と山本は慌て、了平は冷静に謝った。

「す、すみません美那さん!言い過ぎました。」

「その、きつく言っちまってごめん。」

「傷付けるつもりは無かったのだが極限にスマン。今日はゆっくり体を休めてくれ。」


そう言って了平達は並中を後にして、美那は獄寺達に言われたことで自分は10代目になれないのではないか?獄寺と山本に嫌われてしまったのでは?と思い声を殺して泣いた。


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