琥珀のカナリア


教室に入りツナの席に行く山本。
ツナと京子と花と了平はキョトンとした。

「あのさ、沢田。随分前の事なんだけどさ俺、レギュラー外されそうになって悩んで沢田にアドバイスしてもらおうとしたことあったよな。なのに俺から話しかけておいて無視しちまってごめん。」

ツナは何だっけ?と思ったが暫くして思い出した。

「・・・・・・。(そういえばそんな事あったなあ。)」

〈気にしなくて良いよ。〉

ツナはメモ帳に書いて山本に見せた。

「本当に悪かったのな。」

すまなそうにする山本にツナはまたメモ帳に書いた。

〈今日の試合無理はしないでね。〉

「沢田は優しいのな。確かに俺まで大怪我したら皆へこむよな。」

そう言って山本は技を仕上げてくると教室を出て行き、ツナは部活の朝練の為だけに来ていたのかと驚いていた。


ーーーー

夜になりツナと雲雀は並中に入った。既に美那と獄寺と戦う山本は着いていた。
ツナに気付いた山本はニカッと笑顔を見せた。

チェルベッロにB棟に来るように言われて行くと校舎は破壊され、上方から大量の水が流れていた。

原型をとどめていない校舎に唖然としているとチェルベッロが説明し、ツナ達に校舎の外に出るように促した。
美那と獄寺と了平は山本にエールを送る。

「武、頑張って。」

「負けんじゃねーぞ。」

「じゃあしっかりな山本!!」

「オッケ。」

山本は三人に笑顔で返すとツナにニカッと笑った。

「ツナ、行ってくるのな!」

ツナは声をかけられて驚くが頷くことで答え、雲雀と共に校舎を出て行く。
それを見た美那はどういうことだと眉をひそめるが校舎を出てスクリーンが見える場所に移動すると目の前の光景に目を見開いた。

いつもなら獄寺がツナを睨み付けるようにしていたがその獄寺はツナに話しかけはしないが睨み付けることもしていない。

『武はいつからブスツナをツナって呼ぶようになったの!?隼人だって睨み付けてないわ!一体どういうことなのよ!!まさか美那が居ない間に言い寄ったの!?ブスツナの癖にっ!』

勘違いもいいところだが美那は愚かにもそう思いツナを睨み付けた。
睨み付けられたツナはビクッと体を震わせると雲雀が頭を撫でて落ち着かせるが山本がツナと愛称で呼んだことに苛立っていた。美那が睨み付けたことにも苛立っているが。

『小鳥が駄犬と野球男に言い寄ったとか思ってるんだろうけど全くの勘違いだよ。それにしても野球男の奴、馴れ馴れしいね!』

雲雀と美那の苛立ちをよそに雨戦が始まった。



激しい攻防の末、攻式九の型うつし雨で決着がつき山本がボンゴレリングを完成させると同時に獰猛な海洋生物が放たれた。

「ちょ・・・待ってよ。スクアーロはどーすんだ?」

ふらつきながら言う山本にチェルベッロは事務的に答える。

「スクアーロ氏は敗者となりましたので生命の保証はいたしません。」

「やっぱな。んなこったろーと思ったぜ。」

山本はスクアーロを担ぐ。それを見ていた美那達は騒ぎ出した。

「武、無茶よ!」

「てめーバカかっ!」

「その体ではスクアーロをかついでいくのは無理です!」

山本は普通は助けると返した。

「普通助けね?戦いは終わったんだしさ。雨戦は全部精算でいいんじゃねーの?」

担がれているスクアーロはフッと笑った。

「とりあえず雨の守護者の使命は分かってるようだなあぁぁぁぁ。」

「何だそりゃ?」

「・・・知らなきゃ知らねえでいいぞぉぉぉぉ。地でいってるみてえだしなあぁぁぁぁ。てめえは合格だあぁぁ。」

そう言うとスクアーロは山本から離れた。

「剣のスジは悪くねえ。精進しろぉぉ。」

「お!以外と元気だな!剣の方はまあ考えとくよ。それよりさっさとここから出ようぜ。鮫がこっちに来てるし。」

血の臭いに反応した鮫が近付いてきている。山本とスクアーロは脱出した。

山本とスクアーロが脱出するのを見届けたチェルベッロがツナ達に告げる。

「明日は大空戦と雲戦を同時に行います。」

ツナと雲雀は9代目が許可したんだろうと思っていると初めて知らされた面々はざわついた。

「え??」

「どういうことだ!?」

「極限に分からんぞ?」

チェルベッロは説明した。

「大空戦と雲戦の同時に行うことを提案したのは雲雀恭弥氏です。」

美那は雲雀の方を見た。

「恭弥君、本当なの?」

「そうだよ。」

「・・・ツナはこのこと知ってたの?」

頷くツナに「そう。」と短く答えたが内心は怒り狂っていた。
美那は大空戦はとにかく逃げ回ってツナにザンザスと戦わせようと考えていたが雲雀が同じ戦いに出るなら当然ザンザス側の雲の守護者が出て来るだろう。ザンザスと雲の守護者から逃げ回るのは困難になる。

『くっ!同時に戦うなんて全然知らなかったわ!何とか恭弥君の提案を却下させないと!』

美那は雲雀の提案を却下させようとチェルベッロに言った。

「あの、何で美那達は団体戦なんですか?隼人も武も笹川先輩も一対一で戦ったのに。それって公平じゃないような気がします。大空戦は大空戦で雲戦は雲戦でちゃんとやった方が良いと思うんですけど。今からでも変えられませんか?」

美那の訴えに獄寺と山本は確かに公平さに欠けるかもと美那の意見に同意し、了平はツナと雲雀と美那対ザンザスとヴァリアーの雲の守護者(3対2)で戦うのはスポーツマンとしてどうなのだろうと難しい表情をした。(ヴァリアーはスポーツマンではないが。)

しかしチェルベッロは取り合わない。

「既に決定されています。ヴァリアーのボスであるザンザス氏も雲雀恭弥氏の提案を認め、また9代目も認めています。」

決定は覆さないと告げるとチェルベッロは並中去りザンザス達も去った。
美那は明日の戦いを思うと恐怖しかなかった。

ツナは明日が最後の戦いでまた簡単に勝てる勝負になるわけがないと考えると不安しかなかった。雲雀はそんなツナの不安を取り除くかのように頭を撫でた。


リボーンはツナと雲雀と美那に明日は学校を休んで戦いに備えておけと言うと美那達を促して帰路に着き、ツナもまた雲雀と帰っていった。



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