琥珀のカナリア
雲雀と帰宅したツナはザンザスの話を頭の中で反復していた。
『チャンスをくれるって言ってた。リング争奪戦の試合をパスさせても良いって。それって。』
ツナと美那の側に適任者が居らず霧戦は無しになった。
『ダメ元だけどザンザスって人に頼んでランボの試合は無しにしてもらおう。』
ツナが考えていることが分かる雲雀は相変わらず他人のことばかり考えていると多少呆れたが雲雀もまた考えていた。
「ねえ。この際だから小鳥と僕と牛の子供とついでに極限ボクサーも辞退出来るか聞いてみない?」
〈俺とお兄さんとランボと笹川先輩を?〉
「うん。だって小鳥と僕はマフィアなんて興味ないし笹川はよく理解してないだろう。それに牛の子供は戦えないでしょ?」
雲雀と了平は一般人だし、ランボはまだ5才の子供。ツナは一般人として生きてきたが父親がマフィア。
〈お兄さんと笹川先輩とランボは辞退出来ると思いますけど俺は難しいかも知れません。〉
「それでもあの猿山の大将に聞いてみよう?あいつらからしたら後継者争いの対象が減る分には文句はないだろうしね。」
雲雀にツナは頷くことで答えた。
ーーーー
放課後ーーー
応接室でツナはリボーンにザンザスの居場所を聞いた。
〈ザンザスって人は何処に泊まってるの?〉
「何だ?ザンザスと話をするのか?」
草壁に出された珈琲を飲みながら言うリボーンに雲雀は説明する。
「まあね。少なくとも牛の子供が戦うのは無謀だろ?だから牛の子供の試合は無しにしてもらうつもりだよ。」
「そうか。ザンザス達は並盛センチュリーホテルのスイートルームにいるぞ。」
「分かった。行くよ。草壁は僕の代わりに見回りして。」
雲雀はツナの手を取って応接室を出ていった。
「ツナは純粋にランボのことを思ってのことだが雲雀の奴はランボをだしにしてリング戦を棄権するつもりだな。」
リボーンは雲雀の考えを見抜いていた。
ランボは子供という理由で外せるがツナは初代直系の血で雲雀と了平は戦える。
「ランボは棄権出来る可能性があるがツナと雲雀と了平は難しいだろうな。さて美那の修行を見てやるか。」
リボーンはそう言うと応接室の窓から飛び降りた。
美那は崖を登った場所で炎をハーフボンゴレリングに炎を灯そうと必死だ。
「くっ!ダメツナは通せたのに美那は何で通らないの!」
『ボンゴレを継いでツナを退けたい!!』
心の底から美那が思った瞬間ボンゴレリングに炎が灯った。
「や、やったわ!!」
炎が灯った所にリボーンが修行場所に着き美那の炎を見たが。
『何!?あの炎は!?』
ハーフボンゴレリングに灯された炎は赤い炎。
嵐の属性の炎だった。
ーーーー
並盛センチュリーホテルのスイートルームではツナはガチガチに緊張していた。理由は簡単。
「ドカス共何か用か?」
豪華な椅子に座り低い声で問うザンザスが鋭く燃えるような業火のような色の目でツナを見ているからだ。
雲雀はザンザスを睨み付けながら話を始めた。
「君達に頼みがあって来たんだ。この子を睨み付けるのは止めてくれる?」
ツナから雲雀に視線を移し睨み付けるザンザスとツナを背に庇い睨み返す雲雀にルッスーリアが間に入った。
「あらあらボスも雲雀恭弥もにらめっこしてたら話にならないわよ~。綱吉ちゃんと雲雀恭弥は座ったらどうかしら。」
ルッスーリアに言われてザンザスの向かい側に座るツナと雲雀。
ザンザスは話してみろと促した。
ツナはメモ帳にランボを棄権させて欲しいと書いた。
〈子供のランボを棄権させてください〉
ザンザスの傍にいたスクアーロがメモ帳を受け取りザンザスに渡す。ザンザスは読むと暫し考えて答えた。
「こっちも5才のガキをいたぶる趣味はねえ。いいだろう。雷の試合は無しにしてやる。」
ツナはランボの試合が無しになって安心すると雲雀は空かさずザンザスに交渉した。
「僕からもあるんだけど。」
「まだあるのか?・・・話せ。」
睨んでくるザンザスに雲雀は気にもせずに話をする。
「この子と僕とついでに笹川も棄権を認めてくれる?」
雲雀の話の内容にヴァリアーの幹部達は驚いた。
「う“ぉぉぉぉぉぉぉぉい!!リング戦放棄かぁぁぁーーーーーーー!!!」
「さすがに王子も驚いた。」
「また凄い頼みをしてきたね。」
「そうなるとリング戦私は暇になるわね~。」
「それは俺もだ。」
驚くヴァリアーの幹部達をよそにザンザスは口を開いた。
「沢田綱吉が棄権するなら沢田美那も棄権するのか?」
「美那はやる気あるけど関係ないし僕達はマフィアなんて興味ない。」
雲雀はリング戦に出る気はないと言うとザンザスはそれには反対した。
「後継者を決める試合だ。沢田美那が出るなら棄権は認めん。」
「戦う対象が少ない方がそっちは楽だろう?」
「雷の試合は相手がガキだから認めたに過ぎねえ。だが沢田綱吉と他の守護者候補の棄権は認めねえ!」
話は終わりだとザンザスはツナと雲雀に帰れと促した。雲雀は苛立ったがツナが〈ランボだけでも認められたから良かったです〉と書いて雲雀の手を引いてスイートルームを後にした。