琥珀のカナリア
2時間後ーーー
屋上の至るところに大小様々の穴が出来ていて雲雀とディーノは軽い怪我をしていた。
ツナは顔色を変えて雲雀とディーノを保健室に連れていこうとしたがリボーンに止められた。
「コイツらはこんぐらいは大丈夫だ。それよりこれからお前も修行だぞ!」
「・・・・・・。(大丈夫じゃないよ!てか修行は嫌だな。)」
制服じゃ修行が出来ないから着替えてからだと話すリボーンに雲雀が睨み付けた。
「ちょっと!この子はマフィアになんかさせないって言ってるじゃない!マフィア出身の美那をイタリアに連れて行きなよ!」
リボーンは軽くため息を吐いた。
「仮にボスにならなかったとしてもツナが生きてる限り他のマフィアに狙われ続けるんだぞ。」
他のマフィアに狙われ続けるという言葉にツナは顔色を青くして雲雀は眉間に皺を寄せる。
「どういうこと?」
「ボンゴレは血筋でボスを選ぶ。ツナは創立者で初代ボンゴレの直系の血筋だ。それにボンゴレの血筋の人間は超直感っていう特別な能力を持っているんだぞ。」
「超直感?」
「・・・・・・。(なにそれ?)」
「簡単にいうなら普通の人間より直感が働くようなもんで他のファミリーなら喉から手が出るくらい欲しい能力だ。」
「この子を拐ったら子供を作らせるくらいはするファミリーもあるわけだ。」
「その通りだぞ。女のツナと美那は狙われやすい。特に初代直系のツナはな。護身術くらい身に付けねえとキツいぞ?というわけだ。ツナの私服は既に更衣室のロッカーの27番に入れてあるから着替えこい!」
ツナは理由が理由なだけに仕方なく更衣室に向かう。雲雀はリボーンにツナの修行を見ると言ってきた。
「僕もあの子の修行について行くからね。」
「それはかまわねえ。ただ邪魔はするなよ。ついて来るなら手当てしておけ。ツナが心配する。」
リボーンがすることはツナを鍛えること、そして超直感を開花させることだ。それを邪魔するなら容赦はしないと雲雀に遠回しに言った。そしてそのことを感じ取った雲雀は内心、美那がさっさと超直感に目覚めてくれたら楽だと思った。
ーーーー
「・・・・・・。(これを登っていくの!?)」
ツナが今いるのは昨日美那が登った崖がある場所だ。
「美那は登りきったぞ。」
平然と言うリボーンにツナは無理だと首をブンブン横に振る。ついでに付いてきたディーノは自分も昔こんな無茶ぶりさせられたなと苦笑して、雲雀は無茶苦茶だと不機嫌になった。
リボーンはつべこべ言うなと死ぬ気弾をツナに撃った。
「・・・・・・。(死ぬ気で登りきる!!)」
ツナが物凄い勢いで登っていくのを見てリボーンは僅かに目を大きくさせた。
『あの勢いはすげえな。この分ならすぐに登りきるだろうな。』
登っていくツナを見ている雲雀は唖然としていたが我に返るとリボーンに怒鳴るように言った。
「赤ん坊!あの子に何を撃った!!」
普段のツナは大人しくて弱々しい。そんなツナが猛スピードで崖を登っていくなどあり得ない。
「俺様が撃ったのは死ぬ気弾だ。撃たれた瞬間に思ったことを実行するんだぞ。」
リボーンの説明に雲雀はとんでもない代物を撃ったと睨み付ける。リボーンは平然としていた。
登りきった途端に死ぬ気弾の効果が切れてヘナヘナと座り込むツナは下を見た。
『エエッ!?こんな高いの!お兄さん達が小さく見える!!』
あまりの高さにツナは目眩がした。(この後、別ルートを使って雲雀が迎えに来た。)
ーーーー
リボーンとディーノがツナと雲雀を見送った後、ディーノが昔の自分によく似ていると洩らした。
「マフィアになりたくないって顔をしていて昔の俺そっくりだ。」
「そうだな。」
「仮にツナがボスになったら早死にするぞ?ああいうタイプは無理して自分のことは後回しにする傾向があるしツナは優しい子だろ?」
ディーノはリボーンにボスとして意見した。時によっては優しさが仇になる。マフィアのボスなら尚更だ。
「だな。だがボンゴレを継ぐにはツナが適任なんだ。」
マフィアとして生き残るか、初代の思想を受け継いで生き残るか。
ボンゴレは選択を迫られていた。
ーーーー
ツナが雲雀の家に行って1週間が経った。
奈々はリビングに行くとあら?と思った。
「朝刊が無いわ?」
沢田家には簡単な役割分担がある。
ツナはゴミを捨てに行く係。
美那は朝刊と夕刊を郵便受けから取ってリビングのテーブルに置いておく係。
「美那ちゃん忘れちゃったのね。」
奈々は自分で朝刊を取りに行った。
翌日、奈々は首を傾げていた。
最近買ってきた鉢植えが庭に転がっていて花が折れていた。
「折れてるわ。」
奈々は鉢植えを片付けていた。
しかしこんなことが何度も続けばさすがに奈々は不思議に思う。
「ツッ君は雲雀君の家に居るし何でかしら?」
犯人はツナではなく美那だということに気付くのはもう少し後になる。