琥珀のカナリア


修行する場所に美那は冷や汗をかいた。

「本格的に体力作りだぞ!」

「ほ、本当にこれに登るの?」

目の前にそびえる崖に美那は茫然とする。リボーンはボスになるならこれくらいは出来ないと駄目だと話して死ぬ気弾を撃った。


美那は『ボスになってツナをコキ使ってやるんだから!』と思いながら崖を登っていった。


修行が終わり帰宅すると金髪の男が美那の部屋に居た。

「はるばる遊びに来てやったぜ。俺はキャバッローネファミリー10代目ボスのディーノだ。」

「やっと来たのか。美那コイツはディーノ。俺の生徒でお前の兄弟子だ。ディーノ、俺の生徒の沢田美那だ。」

「初めまして沢田美那です。」

キラキラの金髪の王子様に美那は『格好いい』と見惚れるがディーノは一瞬だけ僅かに眉を寄せたが思ったことは口にせず違うことを聞いた。

「リボーンに聞いたが美那はインプルストファミリー11代目のヴァネッサの娘なんだって?」

「そうですけど。」

「そうか。それじゃそろそろお暇するか。」

そう言ってリボーンに目配せしてディーノは沢田家を後にした。

沢田家を出て曲がり角を曲がり、リボーンが追い付いたところでディーノは口を開いた。

「リボーン。あのお嬢ちゃんはちょっと質が悪そうだ。」

「お前は直ぐに見抜いたのか?」

「あのての女はウンザリするくらい見てきてるんだよ。」


ボンゴレの同盟ファミリーで同盟の中では第3勢力のキャバッネーロファミリー。
それだけでも媚を売って取り入るには充分なファミリーだが先代が傾けた財政を立て直し経営者としてもやり手で顔が整っているディーノに媚を売ってくる女性は多い。
大抵そんな女は欲深くて外見や地位、財力しか見ていない。
そんな女を見てきたディーノは美那は欲深くて相手の外見しか見ていないと一発で見抜いた。


「しかしへなちょこでもモテるもんなんだな。」

「へなちょこは余計だって。」


ディーノは宿泊しているホテルに戻っていった。

「明日は応接室に行くか。」

リボーンは明日はツナと雲雀と顔合わせさせねえとなと考えながら帰った。


一方、雲雀家では薫と恭二がツナを構いまくり、雲雀が不機嫌になり、ツナはオロオロする。しまいにはツナの手を取って自分の部屋に連れていってしまった。

薫と恭二は子猫を守る為に敵に威嚇する母猫みたいだと呆れていた。そして女中達は「ああ、やっぱりそうなった。」と苦笑した。


雲雀は自室に入れたツナを適当に座らせた。ツナは久しぶりに来た雲雀家に女中頭がいないことに気付きそのことをメモ帳に書いて雲雀に見せた。

「昨年亡くなったんだよ。」

「・・・・・・。(亡くなった!?)」

「高齢だったしね。故郷に帰るまでこの家の女中頭で女中達をまとめてきたんだ。だから頑張ったって思ってやって。」

女中頭は母親や祖母のような存在でツナは頷きながら涙を流した。
泣いているツナを雲雀が慰めてポケットからオレンジ色の指輪を渡した。

「はいこれ。」

ツナは指輪を見て目を大きく開く。

「・・・・・・。(これ!?美那ちゃんに取られた指輪だ!!でもどうやって?)」

「赤ん坊に頼んで取り返してきた。」

もう自分の元には戻ってこないと思っていたツナは今度は嬉し泣きだ。
雲雀はよく泣くねと優しく言って頭を撫でようとしたその時襖が開いた。そこにはツナをお茶に誘おうとした薫がいた。

「綱吉ちゃんお茶しましょ・・・って綱吉ちゃんを泣かしたの!?」

「違うよ。」

「じゃあ何で泣いてるのよ!!」

またもや雲雀対薫の争いが始まりツナは慌てて止めに入った。

雲雀家は大騒ぎだった。


ーーーー

「えっ!?ツナが恭弥君の家に!?」

「ええ。何でも雲雀君の家の専属医師に失声症の権威のお医者さんがいるらしくてね。暫くの間治療を兼ねて泊まることになったのよ。」

夕食を食べながら治ると良いわねと話す奈々。
美那はたまったものではない。ツナが完治してしまったらその時点で美那は10代目候補から外される。そうなったら雲雀との接点がなくなってしまう。

美那はこうなったら10代目候補に相応しくないくらいの不祥事をでっち上げてツナを嵌めて退けようと企んだ。


ーーーー

翌朝、京子と花は登校してある場所を見て微笑んだ。
応接室の窓際で雲雀とツナが筆談して話している。

「ふふ、ツナちゃん幸せそう。」

「ああいうのは嫌いじゃないわね。」

微笑ましいそうに昇降口に入っていく京子と花とは全く逆の表情をしている美那は何でツナが選ばれて自分は疎まれているんだとツナを睨んだ。


放課後、応接室ーーー

ツナは誰だろうと目の前の人物を見ていて雲雀は射殺するような目で見ている。

「そう睨むなって。」

まいったなと頭をかくディーノ。リボーンは説明した。

「コイツはボンゴレの同盟ファミリーのキャバッネーロファミリーのボスで跳ね馬の異名を持つディーノだ。コイツが雲雀の教師だぞ!」

「教師?」

「・・・・・・。(マフィアのボス!?本当にいるんだ。怖い。)」

紹介されたディーノはツナに握手を求めたが。

「ツナよろしくな!」

「・・・・・・。(よろしくされても俺はマフィアになんかなりたくないんだけど。)」

ツナは仕方なしに手を出すと雲雀がツナの手を引っ込めさせた。

「犯罪者の集団のボスなんかに握手しなくていいよ。この子はマフィアのボスなんかにならないよ!」

睨み付けツナを庇う雲雀にリボーンとディーノは内心苦笑いしかない。

「早速修行するか。」

「種馬と修行?そんなのいらないけど。」

指図されるのが嫌な雲雀は仏頂面だ。ディーノはそれならとツナを見て言った。

「種馬じゃねえよ。嫌ならツナに修行つけるかな。」

そう言って立ち上がるディーノに雲雀はふざけるなと睨み付ける。

「ふざけないでくれる?この子はマフィアのボスにはならない!君は咬み殺す!!」

ディーノがツナの名前を出したことで雲雀が戦闘モードになりリボーンは屋上で修行しろと二人を促した。


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