琥珀のカナリア
リビングで奈々は目を輝かせた。雲雀はこの様子なら直ぐに許可が出そうだと確信した。
「失声症の権威がいるの?」
「雲雀家の専属医師に失声症の権威がいてね綱吉を暫くの間治療の為に僕の家に住まわせたいんだ。それで許可を貰いに来た。」
「お願いします!ツッ君の声が出るようにしてください!」
「うん。それじゃ今日から雲雀家に住まわすから悪いんだけど着替えとか用意してもらえる?」
奈々は善は急げと言わんばかりにツナの着替えを準備しにいった。
『これであの女はどう動くかな?』
雲雀は口角を上げて笑った。
リボーンは美那のジュエリーボックスを見付けて開けるとブレスレットやイヤリングが入っていて軽く漁ると雲雀が言っていた物を見付けた。
「これが雲雀が言っていた指輪だな?」
チェーンに通されたオレンジ色の硝子の指輪。リボーンはツナに似合いそうだなと口に笑みを乗せた。
奈々がツナの着替えや教科書をバッグに入れてリビングに戻ってきた。
雲雀はバッグを受け取るとここには用はないと玄関に向かう。奈々はよろしくお願いしますと頭を下げた。
沢田家を出るとリボーンが2階にある美那の部屋から飛び降りて雲雀の前に立つ。
「雲雀が言っていたのはこれか?」
リボーンはオレンジ色の指輪を渡した。
「これだよ。」
これでツナが喜ぶと思うと雲雀は心なしか頬が緩む。といっても表情にあまり出ないが。
踵を返す雲雀にリボーンは『ありゃあ婚約指輪の代わりだな。』と笑った。
雲雀家の女中達はツナの部屋を用意していた。ツナは手伝おうとしたが女中達に止められた。雲雀のお気に入りのツナが手伝ったと雲雀が知ったら自分達がトンファーの餌食になる。それ以前にツナは女中達にとって娘や妹のような存在で可愛いくて仕方がない。
「お部屋の準備は私共がしますから恭弥様のお部屋でお待ちください。」
ツナは自分が住む場所だからと思っていると一人の女中が閃いたように言った。
「小鳥様。もうじきに恭弥様が帰宅されるでしょうからお迎えになってください。」
ツナは半ば強制的にリビングに行かされた。
リビングで女中に出された紅茶を飲んで雲雀の帰りを待っていると玄関の方からドアが開く音がしてツナは玄関に出るとそこには雲雀の母親の薫と父親の恭二が居た。
薫は直ぐにツナだと分かり声をかけた。
「あら綱吉ちゃんね!益々可愛くなって!」
薫の言葉に恭二はツナだと分かった。
「沢田綱吉ちゃんだね。初めまして恭弥の父の恭二です。」
ツナは慌ててメモ帳を出した。
〈お兄さんのお母さんお久しぶりです。
お兄さんのお父さん初めまして沢田綱吉です。自分は失声症で声が出ないので筆談ですみません。〉
既に雲雀から知らされていた薫と恭二は気にせずにいた。寧ろ搭載されている小動物センサーが作動して笑顔だ。
そんな二人が思ったことは『『可愛い!!』』だった。
その後制服のままじゃ寛げないでしょう?と薫が女中に指示を出しツナに着物を着せさせた。(反って寛げなさそうだが。)
雲雀が帰宅しツナは玄関で出迎えた。雲雀は薄い紫色の着物を身に付けたツナの姿に驚いた。
『可愛い!!』
やはり両親同様同じことを思った雲雀だった。
「ただいま小鳥。」
口を動かしてお帰りなさいと言うツナに雲雀は満足そうに笑うが次の瞬間口がへの字になった。
「「お帰り恭弥。」」
「何で居るのさ?」
「何でってここは私の家だし。」
「俺はこの家の当主だ。」
薫と恭二は平然と言った。(全く間違っていない。)それどころか雲雀に説教をする。
「綱吉ちゃんの着物姿を見て何も言わないのはどうかと思うが?」
「少しは女心を勉強にしなさい。」
「貴方達に小鳥の何が分かるのさ!」
バチバチと火花を散らす雲雀と薫&恭二。
ツナはアワアワして止めに入った。
ーーーー
放課後美那はツナの教室に行くとツナの姿がない。
『あら?ダメツナがいないわ?』
獄寺と山本が美那に気付いて側に歩み寄った。
「美那さん!」
「美那!」
「ツナは?」
「沢田は早退したッスよ。」
「早退?」
「病院に行ったみたいなのな。風紀委員が沢田の鞄を取りにきたし。具合でも悪いのか?」
「でも体調が悪そうには見えなかったわ。」
『風紀委員が鞄を取りに来たってことは多分恭弥君と一緒にいるのね!』
美那はギリリと噛み締めたい気分だ。
美那の心情に気付かない獄寺と山本はリング戦の為の修行をしないとならないなと話す。
「美那さんそれより修行の時間では?」
「そうね。頑張らないとね。」
「俺も頑張るのな!」
話ながら教室を出る美那達。ツナのクラスの女子と他の女子達は美那を冷たい目で見ていて、教室にいた京子と花はやっぱりツナをだしにして獄寺と山本と一緒にいたいだけなんだと呆れていた。