琥珀のカナリア
並盛病院から出るとその足で雲雀はツナを連れて雲雀の屋敷に向かった。
屋敷に着くと女中達が目を大きくして喜んだ。
「「「「小鳥様ですか!?」」」」
覚えていてくれたとツナは喜び頷いた。
可愛い、綺麗になられたと騒ぐ女中達を雲雀はムッとして制する。
「玄関で騒がないで。小鳥、行くよ。」
雲雀はツナを自室に連れて行った。
ツナを座布団に座らせると雲雀は口を開いた。
「よく聞いて。小鳥は今日からこの家に住むこと。小鳥の家にいる限り声は出ないままだ。だからここで生活だよ。君の担当医師も一旦家族とは離れた方が良いって言ってたしね。」
ツナは目を点にした。雲雀は気にせず続ける。
「後で草壁に鞄と弁当箱を持ってこさせるから大丈夫。それから女中に用意させるから小鳥の部屋は僕の隣ね。」
あまりの展開にツナは慌ててメモ帳に書き出す。
〈でも母さんが許すかは分かりませんよ?〉
「大丈夫。雲雀家お抱えの医師に失声症の権威がいてその医師に治療を受けさせるって言ったら簡単に頷くと思うよ。」
〈いるんですか?〉
「お抱えの医師はいるけど権威はいないかな。けれど美那から離れられたら声は出やすくなる筈だから問題ないさ。」
ツナの失声症の原因は美那。美那が傍にいる限り声は失ったまま。
雲雀はツナにリボーンに連絡を取るように言った。
「赤ん坊に連絡取って欲しいんだけど出来るかい?」
ツナは頷きリボーンに電話をかけ雲雀に渡した。
『ツナじゃねえな?雲雀か?』
話せないツナは基本的にメールでのやり取りだ。リボーンは雲雀だと当たりを付けた。
「そうだよ。あの子の母親は居るかい?」
『ママンなら居るぞ。』
「今から母親に話をしにそっちに行くから。」
そうリボーンに言うと雲雀は通話を切った。
「これから小鳥の母親に話してくるから待っててね。」
ツナは頷き雲雀は沢田家に足を向けた。
沢田家に着くと門柱の上に座ったリボーンが待っていた。
「ちゃおっす雲雀。単刀直入に聞くぞ。何をする気なんだ?」
「あの女からあの子を取り上げるだけだよ。」
「美那からツナを取り上げる?」
怪訝そうにするリボーンに雲雀は説明した。
「医師の話だと家族で特に美那から引き離さないと失声症は治らないって話なんだ。」
「失声症はストレスが原因だったりするらしいな。原因が美那なんだな?」
「そうだよ。美那はあの子から色々奪って利用してきた。ストレスも半端ないと思う。だからあの子は雲雀家で過ごさせる。」
リボーンは失声症を治すためには雲雀家で生活させるのは良いだろうと判断した。
「それは構わないと思うがママンが了承するかはわかんねーぞ?」
雲雀は奈々を馬鹿にするようにクスリと笑った。
「了承すると思うよ?医師の話だと薬は効果がなかったから箱庭療法にしようって言ったら母親は拒否した。箱庭療法は精神療法や心理療法の一つだ。大方あの子の治療が回りに知られたら美那が好奇の目に晒されると思ったみたいだ。」
「成程な。だが雲雀の目的はそれだけじゃねえだろ?」
雲雀はやっぱりバレたかと口を開いた。
「あの子を取り上げれば美那は困り果てるだろうね。そんな美那を見て母親はどう思うかな?」
「つまり美那の本性をばらすって腹か。」
「うん。僕はあの女とあの子の両親には腹が立ってるんだ。ずっと苦しめてきたんだからね。」
リボーンは確かにこのままだとツナは失声症のまま、美那はツナを利用し続けると感じて雲雀の話に乗ることにした。
「雲雀の話に乗ってやるぞ。このままじゃツナがしんどいだろうしな。」
乗ってくれるならと早速リボーンに頼み事をする雲雀。
「頼みがあるんだけど良いかい?」
「何だ?」
「僕があの子の母親と話してる間にある物を取り返して欲しいんだ。」
「ある物?」
「あの女はツナからオレンジ色の指輪を奪ったんだ。ツナはそれを気にやんでるから。」
「多分美那の部屋にあるかも知れねえな。女の部屋を漁るのはポリシーに反するが探してみるか。」
リボーンは門柱から降りて雲雀を家に入れた。