琥珀のカナリア


ツナが次に選んだのは子供4体と女性1体。それらをツナと雲雀のフィギュアより少し離れた所に置いていき応接室まで小さなタイルを並べていった。これらはリボーンとビアンキ、ランボ、イーピン、フゥ太だ。
先程より小さいタイルを並べているのを見てセラピストはツナに聞いた。

「沢田さんこのフィギュアは誰なのかな?」

ツナはマフィアの部分を省いて説明した。

〈家庭教師と知り合いの子達で一緒に住んでます。〉

「そう。それじゃ次は家族を置いていきましょう。」

京子達の側から並んでいるタイルはツナと雲雀のフィギュアまで隙間なく置かれているのに対してリボーン達の側から並んでいるタイルは間を開けて置いてある。セラピストはリボーン達との関係は京子達の次に信頼していると感じた。

ツナはエプロンをしているフィギュアと作業着を着ているフィギュアを選びツナと雲雀のフィギュアが置いてある反対方向の一番端に適当に置いた。この2体は奈々と家光。

セラピストはこれは普通ではないと思ったが次に置かれたフィギュアには顔には出さなかったが驚かされた。

ツナは美那に見立てたフィギュアを1体選びツナと雲雀のフィギュアが置いてある方向に向けて置いた。その美那のフィギュアを置とツナのフィギュアは美那から反らすように位置を少し変えた。
その時セラピストはツナのある行動を見逃さなかった。

ツナは無意識だが美那に見立てたフィギュアを置く時、視線が左上に泳ぎ直ぐに右下に動いた。この動作は美那による過去の辛い体験を思い出し、過去の体験からの精神的苦痛を表していた。
そして体の前に腕を構え口元を触れたのは美那と距離を取りたいという心の表れ。セラピストはそれだけで恐れているのが分かるが問題はそこだけではない。両親が一番離れた所に置かれているのか?

『沢田さんは両親には諦めしかない。そして双子の妹の美那さんを恐れている。』

奈々と家光のフィギュアの距離はツナが両親に期待も信頼もなく諦めていることを表していた。
そして美那のフィギュアはツナを監視し、常に押さえ付けていることを表していた。


セラピストはツナに終了だと告げた。


ーーーー

ツナが箱庭療法をしている時、別室では雲雀が箱庭療法の説明を医師から聞いていた。

「箱庭療法って何?」

「精神療法や心理療法の一つです。箱庭療法は患者が箱の中に玩具を入れていきセラピストは見守りながら患者が言葉には表せないことを読み取り寄り添って治療していく療法です。」

「それで箱の中はあんなことになってるんだね。」

ツナがいる部屋は防犯カメラが設置されていて雲雀は別室でツナの様子を見ていた。


「沢田さんの担当セラピストから聞かないと詳しいことは分かりませんが声を取り戻すなら暫くの間、沢田さんを家族から引き離す方が良いですね。」

美那と引き離すことでツナの声が戻るなら雲雀は直ぐにでも引き離そうと考えているとツナの担当のセラピストが箱を持って入ってきた。

「沢田さんは少し疲れてしまったようなので休ませてます。」

「そう。で、あの子の心理状態はどうなの?(嫌いな人間を思い浮かべてたんだ。疲れるよね。)」

「最初に置いたのは沢田さん自身と信頼している人物と家具ですがこれは問題なく良い関係です。家具が置かれたことから信頼している人物と一緒に過ごしているのが安心できると感じているようです。友人達も良好な関係を築いるようです。居候の人達は信頼関係が若干薄いのが見受けられますが幸い小さなタイルを並べているので沢田さん自身は嫌ったりしているわけではなさそです。」

雲雀は信頼されていると言われて満足げだ。だがセラピストの話の続きを聞いて眉を寄せた。

「問題はここからです。雲雀様から話を聞いて玩具を用意したのですが置かれていない人物がいます。」

雲雀はそういえばそうだと箱の中を見て言った。

「あの二人(獄寺と山本)は何で置かれなかったの?」

「沢田さんの中では良いにつけ悪いにつけ重要視されていないようです。」

「へえ?まあ確かにそうかもね。」

ツナは獄寺と山本の間に信頼関係を全く築いていない。(ツナの中で獄寺と山本は美那の友人程度にしか思っていない。)

雲雀は続きを促す。

「家族間の関係が破綻しているようです。両親は一番離れた所に置かれています。両親には信頼も期待もなくあるのは諦めしかないようです。」

昔から美那の言い分だけ聞いてツナの言い分は録に聞いていない奈々と家光だ。ツナが諦めるのは当然だろう。

「沢田さんは妹さんに何かされているんだと思います。妹さんのフィギュアを入れる時、視線が左上に動き直ぐに右下に動きました。これは過去の辛い体験、その体験からの精神的苦痛を表しています。そして体の前に腕を構え口元を触れたのは妹さんと距離を取りたいという心の表れです。」

雲雀と京子達を置く時は楽しそうにしていて、リボーン達はそれなりに楽しそうに置いていたのに対して奈々と家光はぞんざいに置いて美那を置く時は恐れながら入れていた。

「投薬をしても意味はないでしょう。少しの間でも良いですから引き離した方が良いですね。沢田さんの失声症はストレスから来てますから。」

雲雀はだったらこの際美那からツナを取り上げてやるとニヤリと笑った。


42/85ページ
スキ