琥珀のカナリア
応接室のテーブルには老舗の洋食店のハンバーグとスープ、サラダ、デザートの苺のタルトが並んでいた。
ツナは運ばれて並べられる食べ物に目を点にしている。一方、雲雀は口を弓のような形にしていた。
「食べてきなよ。」
「・・・・・・。(食べてきなよってここのお店前にテレビで紹介されてた老舗だよね?)」
テレビで紹介される老舗。それなりに良い御値段。それを食べてきなよと軽く言う雲雀にツナは冷や汗をかいた。
雲雀は気にもせずハンバーグを一口サイズにするとツナの口元に持っていった。そう彼はツナに幼い頃によくやっていた餌付けをしたかった。
「はい。」
自分で食べれますよ?と口を動かすツナ。
「良いから口開けな。」
雲雀はそう言うとツナの口にハンバーグを押し付ける。
ツナは子供じゃないのにと思いながらも口を開けた。
美味しいと顔に出ているツナに雲雀は上機嫌で餌付けを続けて、お互い幼い頃を思い出していた。
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雲雀はリボーンに用があると言って沢田家に行き奈々が玄関に出てきた。
「あら?もしかして雲雀君?」
「そうだよ。」
帰国したのは知っていたが会ってはいなかった奈々は久しぶりねと笑顔で言って良かったら夕食を食べていってと話した。
「良かったら夕食食べていって。今、リボーンちゃん達と美那ちゃんと獄寺君も食べてるから。」
美那と獄寺もいると聞いて雲雀は内心で嫌そうな顔をしたが要らないと断った。
「僕とこの子は食べてきたから要らないよ。それより食べ終わってからで良いから赤ん坊に会わせてくれる?」
「リボーンちゃんね。それは構わないわ。」
「それじゃ待ってるから。」
雲雀とツナはツナの自室に足を向けた。
美那は雲雀が来たことに喜んで珈琲を淹れて持って行きツナの自室のドアをノックした。
「ツナ、入るわよ。」
自分の分と雲雀とツナの分の珈琲をお盆に乗せ持ってきた美那はツナに渡すと雲雀に話しかけた。
「こんばんは恭弥君。リボーンに用事があるの?」
「そうだよ。」
笑顔を振り撒く美那、表情を微動だにしない雲雀。ツナはおろおろする。
「ボンゴレのことでしょ?美那も気になるから一緒に良い?」
雲雀はお盆に乗った珈琲に眉をひそめ、珈琲が入ったカップを取った。
『ご丁寧に自分の分も用意したのか。』
「はいこれ。」
珈琲を渡す雲雀に美那はありがとうと言って受け取るが。
「出て行って。」
感情が全くない声で言った雲雀に美那は目を大きく見開いた。
「え・・・・・・?」
「君は全く関係ない話だから。」
「・・・分かったわ。」
美那は悔しいのを必死に我慢して出て行き、雲雀は精々したと言わんばかりにドアを閉めた。
食事を終えたリボーンがエスプレッソを片手にツナの自室に入る。
「話があるみてえだが何だ?」
「率直に聞くよ。美那はマフィア出身かい?」
「ああ。敵対ファミリーとの抗争で滅んでしまったがボンゴレ5世の傍系筋のインプルストファミリーのドンナの娘だ。滅んでなけりゃ美那が継いでたぞ。」
雲雀はふぅんと呟くと話し出した。
「だったら美那がボンゴレとやらを継げばいいじゃない。傍系とはいえボンゴレの血を汲んでるだから。」
「そう簡単にはいかねえ。元々最後に選ばれたのはツナだけだった。だがツナは失声症だから美那の名が上がった。」
眉を寄せる雲雀は唸るようにまさかと声を出した。
「まさかもしこの子が失声症じゃなかったら無理矢理にでもマフィアにする気だったの!?」
「そうなるな。それに明日にでもツナの声が出たら美那は候補から外されるだろう。」
簡潔に答えるリボーン。ツナはやっぱりと思って俯き雲雀は噛みつくように話す。
「この子は今まで一般人として暮らしてきたんだよ!無茶苦茶だ!」
リボーンはふうと息を吐いた。
「無茶苦茶も承知の上でこの依頼を受けた。そして無理も何もなくなってるんだぞ。9代目がボンゴレ10代目を選ぶ為にツナと美那がヴァリアーと戦うことになった。」
リボーンの話に俯いていたツナは顔を上げた。
「・・・・・・。(ヴァリアー?)」
「何それ?」
「ヴァリアーはボンゴレの主戦力でもある暗殺部隊だぞ。そして雲雀達守護者は同じ属性のヴァリアー幹部と戦い、ツナと美那は組んでヴァリアーのボスザンザスと戦うことになった。」
主戦力で暗殺部隊のヴァリアー。ツナはそんな部隊に勝てる訳がないと首を横にブンブン振り、雲雀は「一般人のこの子を殺す気なの!」と怒鳴った。
「落ち着け。試合は1ヵ月後だ。その間にツナと美那、雲雀達守護者はねっちょり修行だ!ツナがボスになろうがなかろうがツナを守る強さを得るには持ってこいだぞ。」
雲雀は苛立ちながらも『今よりも強くなってやるさ!そして小鳥はマフィアになんかさせるものか!』と思いリボーンを睨み付けた。
リボーンは『雲雀の奴マジでツナが大事なんだな。』と思い内心で苦笑した。