琥珀のカナリア


京子は「次の授業の資料を取りに資料室に行ってくるね。」と言って花は「私は職員室に用があるから。」と言って教室を出ていった。


『資料?次の授業は先生が休みだから自習だよね?』

職員室に用事があるのは兎も角、自習なのに資料を使うのかなとツナは不思議に思った。



「ツナちゃんは雲雀先輩が好きなんだと思う。」

「私もそう思うわ。じゃなきゃあんな泣きそうな顔するはずないし。美那が邪魔をしてるようにしか思えない。」

二人は歩きながら話して応接室に着いた。

京子は緊張していたが応接室のドアをノックした。

「・・・誰?」

不機嫌を顕にする声に京子と花は怯むが勇気を出した。

「沢田のことで少しで良いですから話を聞いて下さい。」

「お願いします!」


雲雀は群れているのには苛立ったがツナのことだと言ってきた二人に興味を持った。草壁がドアを開けて京子と花を中に通した。

「・・・確か昨日あの子と一緒にいたよね。」

京子と花を見る雲雀に二人は頷くと花が口を開いた。

「率直に聞きます。雲雀先輩は沢田をどう思っていますか?」

雲雀は何でそんなことを聞かれなくてはならないんだとムッとする。京子はそんな雲雀を怖いと思ったが話をした。

「ツナちゃんは雲雀先輩が好きなんだと思うんです。もし先輩も好きなら私達協力します!」

「・・・。協力?何で?」

雲雀は京子と花を見てツナに危害を与えることはないと感じたが敢えて試すように質問した。

「ツナちゃんは親友ですから。」

「沢田は大切な友人。」

「「だからツナちゃん/沢田の力になりたいんです!」」

真っ直ぐに雲雀を見る京子と花。雲雀は二人に言った。

「僕はあの子が好きだ。」

そう言うと雲雀は後ろを向いて言った。

「・・・協力して。」

自分を見たらツナは逃げる。それなら京子達に協力してもらった方が良いと判断した雲雀。
京子と花は雲雀が後ろを向いたのは照れ隠しだと分かったが顔には出さなかった。

「次の授業は自習なんです。」

「風紀を乱すことになってしまいますが授業中なら美那ちゃんの邪魔は入りません。」

「構わないよ。」


京子と花は応接室を出るとツナを呼びに行く。

「ツナちゃんちょっと良いかな?」

「・・・・・・。(?)」

ツナは廊下に出ると京子がツナの左腕を、花がツナの右腕をガッシリと組むと有無を言わさず応接室に向けて歩き出した。

「・・・・・・。(な、何!? )」

京子と花は心の中で騙すようなことをしてごめんと謝る。
戸惑うツナは強制的に応接室に連れていかれた。

「・・・・・・。(ここって応接室!?)」

ツナは腕をふりほどこうとするが京子と花はそうはさせないとばかりにツナの腕を離さない。

「雲雀先輩!ツナちゃん連れてきました。」

ドアが開くと京子と花はツナを応接室に無理矢理入れるとごめんねと告げて教室に戻った。



気を利かせた草壁は既に退室していて応接室にいるのはツナと雲雀だけだった。

見つめあう二人だがツナは目を逸らして俯いた。雲雀は俯いたツナに近付いた。

「何で逃げたの?」

「・・・・・・。(・・・・・・。)」

「僕が帰ってくるのが遅かったから?」

「・・・・・・。(違う・・・・・・。)」

「僕は小鳥が好きだよ。・・・小鳥は僕のこと嫌いになったの?」

最期の方はとても雲雀らしくないくらいに弱々しい声でツナは顔を上げ大きな瞳に写ったのは形の良い眉を寄せ悲しそうな表情をした雲雀。
ツナは咄嗟に「そんなことない!」と口を動かしたが失声症のツナは声は出ない。
だが口の動きを読み取った雲雀は嬉しそうに笑みを唇に乗せた。

「そんなことないんだね。」

雲雀に聞かれておずおずと頷くツナ。雲雀は話を続けた。

「それじゃ何で逃げたの?怒らないから教えてよ。」

ツナの顔を見て話す雲雀にツナは暫く考えたがゆっくりとした動きでスカートのポケットからメモ帳とペンを出して書いていく。

〈失声症なんです。だからもう声出ないから会う資格なんかないって思ったんです。〉

雲雀は読むと呆れた顔をしてツナの顔を額に軽くデコピンをした。

「・・・・・・。(何でデコピン!?)」

「確かに僕は小鳥の声、気に入ってるけど声が出なくても小鳥でしょ?」

ツナは一瞬嬉しそうな表情を見せたがまた俯き、涙を流しながら書いていった。

〈俺、本当にダメな人間なんです。美那ちゃんにお兄さんから貰った写真と指輪取られちゃって。取り返そうとしたんだけど出来なかった。〉

弱い人間なんだと書くツナに雲雀は優しく頭を撫でた。

「馬鹿だね。あれはあくまで仮だよ。ちゃんとしたやつを用意するから気にしなくて良いんだ。それに小鳥は取り返そうと頑張ったんだから弱くなんかないよ。」

雲雀はツナを抱きしめた。

「もう逃げないで。一緒にいよう。」

ツナは雲雀の腕の中で何度も頷いたがボンゴレのことを考えると一緒にいれないかもしれないと思った。
それに勘づいた雲雀はツナからしたら爆弾発言をした。



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