琥珀のカナリア
並盛幼稚園は園児が年少組、年中組、年長組で40人くらいで3つのクラスがあるこじんまりとした幼稚園。
ツナと美那は同じクラスになり、美那はツナをこっそり苛めていた。
遊戯の時にわざと足を出して転ばせたり、画用紙に絵を描いていたら黒のクレヨンで塗り潰したり、遊具で遊んでいる時には軽く押して落としたりした。
帰ってくる時にはツナは膝と手を擦りむいて絆創膏が貼られていた。
さすがに心配した奈々に美那は愛情を取られてなるものかと手を打つ。
「お遊戯の時に美那を追いかけて転んじゃったの。手はね美那は止めたのにツナが自分から飛び下りてケガしたの。」
「ツッ君!お遊戯の時間に美那ちゃんを追いかけたら駄目よ。後、危ない事をしちゃ駄目でしょ!」
俯いて何も言わないツナに奈々は頭を抱えた。
次第に美那の幼稚園での苛めに拍車が掛かり絵は画用紙を塗り潰すだけ、遊戯もすぐに転ぶとツナはドジで何もできない駄目ッ子と仕立てた。
一方美那は上手いわけではないがしっかりと絵を描いて遊戯も他の子供と楽しそうにしていたし、ちゃんとツナをフォローするから優しい子供と見られていた。
年長クラスになる頃にはツナは幼稚園でも独りぼっちだった。
美那は見せ付けるように他の子供と遊んで、ツナはダメツナと苛められて爪弾きされて、園庭の隅にある小さなベンチに座っていた。
それを心配する保育士はツナを何とか皆の輪に入れようとしたがツナが頑なに嫌がってしまい理由を聞いても俯いてしまうだけで暫くは様子を見ることにするしかなかった。
ツナが俯いてしまったのは保育士の後ろで美那が余計なことを言うなと睨み付けていたからだった。
家でも幼稚園でも居場所は美那に奪われてしまったツナにも一時の安心を得る場所を見付けていた。
並盛と黒曜の境にある寂れた公園。
ブランコと小さな砂場とベンチがあるだけで物足りないと感じるのか子供達はここで遊ぶことはほとんどなかった。
土日になると美那は友達と遊びに行ってしまう。その隙を見て誰もいない公園でツナはブランコを漕ぎながら歌っていてこの日も楽しそうに歌っていた。
「~♪~~♪♪~~~♪~♪」
歌っていると同じクラスの男の子達はツナに気付いて公園に入ってきた。
「ダメツナじゃん!」
「ドジツナは友達いないからこんな所にいるんだな!」
「ダッセー。」
「!?」
ツナは急いでブランコを降りたが体が大きい子供に捕まってしまった。
「痛い!手、離してっ!」
痛がるツナを笑いながら子供は他の子供の方に突き飛ばしまた違う子供に突き飛ばすのを繰り返していた。
「女の癖に男みたいな名前ー!」
「美那ちゃんとは大違いー!」
「こんなのが双子の姉ちゃんなんて美那ちゃんかわいそー!」
子供がツナを思いっきり砂場の方に突き飛ばし砂だらけになるツナを笑う子供達は次の瞬間一人の少年に殴り飛ばされた。
「ギャッ!」
「ウッ!」
「ギャァッ!」
痛みで踞る子供の腹を無造作に蹴っている少年は一言言った。
「群れるな!咬み殺すよ!」
黒髪と黒曜石の瞳を持ち銀色の武器を手にした少年のドスの聞いた声に子供達は一斉に逃げ出しツナはポカーンと一部始終を見ていた。
これが6才になり11月を迎えたツナと雲雀の出会いだった。