琥珀のカナリア


京子が飲み物を用意する前にツナがメモ帳に言葉を書き出した。

〈もし三浦さんが良いなら三浦さんが作ったクッキーを皆で食べたいんだけど駄目かな?〉

「勿論です!!」

「ハルちゃんのクッキー美味しそう!私お腹が空いちゃったし。」

「私も。沢田もでしょ?」

〈うん〉


京子が飲み物を持って来るとクッキーが美味しいとか流行りの服やアクセサリー等を話しまくり女子会状態になった。因みにツナは流行りに疎く聞き役に徹していたりしたが楽しんでいた。


夕方になり女子会状態は終わりツナと花とハルは其々帰宅した。

ツナが家に入ると奈々が少し怒ったような顔をして出迎えた。

「ツッ君。お友達の家に居たのよね?リボーンちゃんから聞いていたから良いけどちゃんと連絡しないと心配するでしょう?」

ツナは奈々に連絡するのをすっかり忘れていてメモ帳を出した。

〈ごめんなさい〉

「今度からは連絡しなさい。さあ夕食にしましょうね。」


玄関で靴を脱ぎながら『まさか心配されてるなんて。ちょっとビックリだな。』と思いながらリビングに入った。

ツナからしたら奈々と家光は血が繋がってるだけの他人みたいなものだった。だから連絡するのを忘れていた。と言うよりする必要性すら考えていなかった。


ーーーー

授業の間の休み時間、美那は苛立っていた。
ツナの回りに数人の人間がいるようになったからだ。

ツナは京子と花とボクシングマネージャーの勧誘に来た了平と話していた。

「沢田!極限にマネージャーにならんか?」

〈喋れないから無理です〉

「喋れなくとも問題はないぞ!」

「お兄ちゃん!無理強いは良くないよ!」

「先輩落ち着いて下さい。京子も沢田も困ってますよ。」

了平の勧誘に困るツナに兄を止める京子。花は呆れるのを隠してツナと京子を援護する。

美那は獄寺と山本と話ながら『ダメツナの奴!』と心の中で罵る。

『本当なら京子達を何とか退ければ良いんだけどリスクが高いわ!』

京子は並中のアイドル。
花はその京子の親友。
了平は京子の兄。

手を出すには危険しかない。特にアイドルの京子に何かしたら美那が集中砲火にあうのは目に見えている。

美那は手が出せず苛立つ気持ちを押さえつけていた。
そして美那は知らない。一部の女子生徒達に嫌われていることを。


クラスの女子生徒達はヒソヒソと話していた。

「あの女ムカつく!」

「沢田さんの妹って立場使ってここに来て山本といつも喋ってるし!」

「登下校も一緒らしいよ!」

「獄寺君を一人占めしてさ!!本当にムカつくわ!!」

「ファンクラブにも入ってないのに!!」

「美那って子、全然沢田さんを心配してないのがバレバレだよね!!」

「沢田さんを心配してるふりして良い子ぶってるだけじゃない!!」

ツナのクラスの女子生徒達を中心に美那は獄寺と山本のファンクラブの女子生徒達を敵に回していた。


ーーーー

「今日も体力作りをするぞ!」

学校が終わり京子と花は家の用事で、山本は部活、獄寺は運悪くビアンキに出くわして腹痛で即行で帰宅していて、運動部のマネージャー風に変装したリボーンは修行をツナと美那に課した。

「とりあえず川原までマラソンだ。」

ツナと美那は川原まで走らされた。美那は普通に走るが時折、ツナを気遣うように「頑張ろうね!」と声をかけている。ツナは仕方なく適当に頷く。

川原につくと腕立て伏せをやらされる。

ツナは運動は苦手で力尽きそうだ。そんなツナを嘲笑いそうになるのを堪えてツナを励ます美那。


リボーンは二人を見ながら美那の熱が下がった翌日の朝のことを思い出していた。



奈々が庭で「あら!上木鉢が割れてるわ!!」と声を上げた。
リビングに居たリボーンは庭に出ると粉々になった上木鉢の破片と綺麗に咲いていただろう花は花びらが無造作にむしられて地面に転がっていた。

「こりゃ酷いな。」

リボーンが無惨な姿になった花を拾うとリボーンの出した課題を終わらせた美那が庭に来て奈々に話した。

「そういえばさっきツナが庭にいたし何かが割れる音がしたわ。」

「またツッ君かしらね?悪戯して困るわ。」

「お母さん、あまりツナを怒らないであげて。」

「美那ちゃんは優しいわね。でも悪いことをしたら叱らないと。」

奈々は頬に手を当てて困った顔をしてツナの自室に行きリボーンは気配を消して奈々の後を追った。

ツナの自室に入るとツナはせっせとリボーンの課した課題を解いていてた。奈々はツナに声をかける。

「ツッ君。また上木鉢を割って花を駄目にしたでしょう?何でそんなことするの?」

ツナは美那が鬱憤晴らしにやったんだなと思った。何を言っても無駄だからとツナはメモ帳に何も書かないで奈々が立ち去るを俯いて待った。

「花だって生きてるのよ。可哀想でしょ。」

「・・・・・・。(俺じゃないんだけど。)」

「花を駄目にするくらいならちゃんと話してちょうだい。何かあるから悪戯をしたりするのでしょ?」

「・・・・・・。(何でそんなことを聞いてくるんだろう?俺の話なんか聞かないのになぁ。)」

何も書かないツナに奈々は溜め息を吐いて出て行き、一部始終をこっそり見ていたリボーンはツナの側に行った。

「ツナ。何故本当のことを言わないんだ?おめえは今まで部屋に居ただろ?美那の話だと上木鉢が割れた音がしたって言ったがそんな音はしてねえ。ましてやヒットマンの俺様が音を聞き逃す筈がねえ。」

「・・・・・・。(え?まさかそんなこと言われるなんて。お兄さん以来だな。でも言ったところで美那ちゃんが誤魔化したりまた悪さをして俺に擦り付けるだけだからなぁ。)」

ツナはどのみち美那がいる限り何をやっても無駄だからとメモ帳も出さずに黙りを決め込んだ。
リボーンはそんなツナに困りつつも無理強いして聞き出すのは得策ではないと感じた。それくらいツナの心は分厚い壁で覆われていた。


『美那は養子だ。恐らくママンの気を引きたくてあんな嘘を付いたんだろうな。そしてツナの心の壁は自分の心を守る為のものだ。』


リボーンは腕立て伏せをやっているツナと美那に今度は腹筋をやるように指示を出しながらどうしたらツナの心の壁を取り払うことが出来るのかを考えていた。


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