琥珀のカナリア
夕食の時間になりデート中のリボーンとビアンキを除いた家族と居候が席に着いた。
ツナは不思議そうに子供達を見ていた。
いつもならランボがイーピンのおかずを横取りしてフゥ太と奈々が止めに入り美那は優しいふりをしてイーピンにおかずを分けたりする。
なのにイーピンもフゥ太も静かに食べている。騒がしいランボでさえ黙々と食べていた。
奈々もそんな子供達の様子に気づいたが美那がランボ達を見ながら言った。
「ランボちゃん達成長したのねー。いつもならおかずの取り合いとかしてるのに。お母さんそう思わない?」
「そうなのかも。でもランボちゃん、イーピンちゃん、フゥ太君お喋りはして良いのよ。食事は楽しくないとね。」
別に行儀が良いわけではない。目の前にいる美那が怖いだけだ。
ツナは不思議に思いつつも食事を終えると足早に自室に戻った。
暫くしてフゥ太とランボ、イーピンがツナの自室に入ってきた。今まで子供達がツナの自室に来たことはなくてツナは目を丸くした。
ツナの顔を見た途端に子供達は話し出した。
「美那嫌な奴なんだもんね!!」
「美那さん嘘つき!!」
「美那姉は酷いんだよ!!」
怒っている子供達にツナは何かあったの?メモ帳に書いて聞く。フゥ太はそれを読んで話した。
「ツナ姉が作ってくれたホットケーキを美那姉が嘘ついて美那姉が作ったことにしたんだ!!」
ツナはいつものことだと思ったがランボとイーピンは怒ったままでフゥ太は沈んだような顔をする。
「ツナが作ってくれたもんね!なのに美那は嘘ついた!」
「嘘つきは悪い人!」
「何で美那姉はあんな嘘ついたのかな。」
ツナは気にしなくて良いよと書くとフゥ太はそれで良いの?と聞き返す。
「それで良いの?だってママンは美那姉が作ったって信じちゃってるよ。嬉しそうな顔して明日の夜ご飯は美那姉の好きな物を沢山作るって言ってて!本当ならツナ姉の好物が出るはずなのに!」
〈それで良いよ。それより間違っても美那ちゃんに逆らったら駄目。〉
フゥ太は読んで目を見開いた。
もしかしてツナは常日頃から美那に何かされているのではないかと思った。でなければ逆らったら駄目とは書かないだろう。現に美那は自分達を脅した。
フゥ太は本当のことを言ったらツナが酷いことをされると思って静かに頷きランボとイーピンも頷いた。
ツナは子供達にしたことが仇になってしまったとため息を吐いた。
『なるべくランボ達と接触しない方が良いかも。美那ちゃんのことだ、下手したらランボ達が酷い目に合わされる。』
幼い頃から陥れられてきたツナは美那のやり口は分かっていた。自分でさえ参っているのだ。幼いランボ達なら更に辛い思いをするはず。
ツナはランボ達に悪いことをしたと思い再びため息を吐いた。
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月曜の朝、奈々がお粥を作っていた。ツナは誰か風邪でも引いたのかとメモ帳に書く。
「美那ちゃん熱出しちゃったのよ。だから暫くは美那ちゃんの部屋には行かないでね。移っちゃうかも知れないから。」
頷くことで答えるツナは朝食を食べて学校へ向かった。
『今日は気楽だなぁ。母さんに頼んで獄寺君と山本に連絡してもらったし。』
いつもは美那と獄寺達の後ろを歩いて登校していた。気楽と感じるのは本当に久しぶりだとツナは軽く苦笑した。
京子と花は美那が休み時間に来ないことに気付きチャンス到来だと思った。
二人は顔を見合せ力強く頷くとツナの席に行った。
「沢田さんこの前助けてくれてありがとう!」
「沢田のおかげで助かったわ!」
ツナは何かしたっけ?とキョトンとした顔をしたが建設中の建物が崩れた日のことを思い出した。
京子と花はお礼にと前々から用意していたプレゼントを渡した。
ツナは慌ててメモ帳に〈ありがとう〉と書いて続きに自分に関わらない方が良いと書こうとしたが京子と花が話し出した。
「沢田さん!友達になってほしいな!」
「沢田は筆談出来るんだから話すのは簡単よね。」
「前から話してみたかったんだ!」
盛り上る京子と花にツナはオロオロするが二人の勢いに圧倒されて友人になった。
その様子を木の枝に登って覗いていたリボーンは口に笑みを乗せた。
「特殊弾は少しだけ後押ししたに過ぎねえ。ツナ、お前の助けたい思いが通じたからこそ友人が出来たんだ。」
リボーンは木の枝から降りると並中を出て行きある行動に出ることにした。
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昼休み、ツナは京子と花と一緒に過ごしてきた。
「今日出された宿題多いよね。」
「嫌になるわ。」
ツナはコクンと頷くが何でこんなことになったんだと頭を抱えたくなった。
『笹川さんと黒川さんの気持ちは嬉しいけど美那ちゃんに知られたら大変だよ。』
ツナにとって初めての友人。
二人の気持ちは嬉しい。ただそれが理由で美那がどう出るか分からない。自分なら良いけど京子と花が何かされる可能性がある。現にフゥ太とランボ、イーピンが脅されている。
ツナが考え込んでいると京子が「今日家で一緒に宿題しない?」と話し出した。
「あの量を1人でやるのは気が滅入るわ。私は賛成だけど沢田は?」
花に聞かれてツナはメモ帳に〈宿題多いよね 〉と書いて見せる。
「じゃあ三人でやろうよ。ツナちゃんは病院とか大丈夫?」
〈診察日じゃないけど連絡入れるね〉
ツナはリボーンに『今日、笹川さんと黒川さんと宿題をするから修行はその後で良い?』とメールを打った。