琥珀のカナリア


この日は土曜日で美那は獄寺と山本と遊園地、奈々はママ友達と出掛け、リボーンはビアンキとデートで家にはツナと子供達だけだ。

ツナは宿題を終わらせると喉が渇いて台所に向かう。リビングではランボとイーピンがお腹空いたと騒ぎフゥ太が宥めていた。
時計を見ると15時を過ぎていておやつの時間だと分かり冷蔵庫の中を見たがおやつらしきものが入っていなかった。

『おやつを用意するのを忘れるって母さんにしては珍しいな。』

ツナは台所の棚を開けたりして見つけたのはホットケーキミックス。

『冷蔵庫に卵も牛乳もあったしホットケーキなら小学校の家庭科の授業で作ったことがあるから大丈夫かな。』

騒いでいるランボとイーピン、困り顔のフゥ太にメモ帳を見せた。

フゥ太は驚いた。ツナはあまり子供達と接触しなかったし、子供達もまた失声症のツナとどう接していいか分からなかったから会話らしい会話などしたことなかった。


〈ホットケーキで良い?〉

フゥ太が読んでランボとイーピンに聞く。

「ツナ姉がホットケーキ作ってくれるって!」

「イーピン、ホットケーキ食べたい!」

「ランボさん三段重ねだもんね!!」


ツナは軽く頷くとホットケーキを作り子供達に出した。
三段重ねのホットケーキに子供達は大喜びする。

「美味しそう!ありがとうツナ姉!!」

「ツナさんありがとう!!」

「ランボさん食べちゃうもんね!!」


美味しそうに食べるランボ達を見てツナは使った調理器具を洗いしまうと子供達はペロリと平らげていた。

「「「ごちそうさま!!」」」

ツナはコクリと頷き食器を片付けると自室に行った。


ホットケーキが切っ掛けで子供達の中でツナを『喋れないけど優しいお姉さん』になった。


ーーーー

リボーンとビアンキは喫茶店にいた。

「ビアンキ、ツナをどう思う?」

「そうね、ツナは優しい子ね。なるべく私とリボーンを一緒に居させてくれるし。ただ表情がないというか諦めきったような顔をしているように見えるわ。それに美那が側にいると若干暗い顔をするのも気になる。」


リボーンは今度は美那のことを聞いた。


「何て言うのかしら。初めて私とフゥ太に会った時、目障りと云わんばかりに見ていたけど次の日からはその態度が軟化していた。でも私達居候を認めた訳じゃない。子供達はリボーンの知り合いだったり保護した子だから。」

「ランボとドン・ボヴィーノは俺の知り合いだしイーピンの師匠は同じアルコバレーノの風だ。フゥ太はマフィアに追われていたから保護する形になったのは確かだ。で、ビアンキの時は何故軟化したと思ったんだ?」

「リボーンの愛人だから。そして腹違いだけど隼人の姉だからよ。美那はその事を知った途端に隼人のことを根掘り葉掘り聞いてきたし美那は結構男好きの気があるわよ。」

まあ年頃の女の子は大抵回りの男子が気になったり好きになるけどとビアンキは付け加えた。

リボーンはここまでは自分とビアンキはほぼ同じ考えだと分かった。リボーン自身、ツナにビアンキと一緒にいてあげてと促されたり、ランボやイーピンが昼寝している時に掛け布団を掛けていたりしているのを見ていた。
一方、美那はツナを心配しているがそれが何処と無く嘘に見える。
休み時間、ツナの席に来るが獄寺と山本と仲良くなった途端に獄寺と山本と話していてツナには一言も話さない。本当に心配しているなら話くらいするだろう。ツナは筆談なら出来る訳だし。
ほぼ放置の癖にツナの側から離れない。ツナが嫌がっているのが顔に出ていてもお構い無しで。

今までツナと美那を見てきた答えは美那がツナに何かしている。それがリボーンの見立てだ。リボーンは率直にビアンキに聞いた。

「俺は美那がツナに何かしらしているんじゃねえかと考えている。ビアンキはどう思う?」

「私もよ。最初は血の繋がりがないからとか反りが合わないとかお互いに少し鬱陶しいと感じていたりみたいな年頃の女の子同士ゆえの感情が絡んだ関係なのかと。でもそれにしては美那がツナに張り付いているから違うと思った。美那は恐らくツナを利用している。理由は分からないけど質の悪い人間は利用出来るなら物でも人でも理由するわ。」

「そうか。もう暫く見てもらって良いか?何せ美那は必死に何かを隠そうとしちまってるし、ツナは自己防衛で分厚い壁を作って心が読めねえ。」

「それは構わないわ。でも私の直感だと悠長に構えていられないような気がするの。それに10代目候補を決めなくてはならないんでしょ?」

「ああ。だがまずは美那が執拗にまでにツナに張り付いているのか知ることが先決だな。」

ビアンキは頷きリボーンはエスプレッソを飲みながらやることが山積みだと思った。


ーーーー

夕方、奈々は慌てて帰ってきた。美那は既に帰宅していて出迎えた。

「お帰りなさい。慌ててるみたいだけどどうしたの?」

「朝から忙しかったとはいえ私ったらランボちゃん達のおやつの用意を忘れちゃったのよ。悪いことしたわ。」

奈々はそういってお詫びのケーキを持ってリビングに入りランボ達に謝るとランボ達は大丈夫だったと答えた。


「三段重ね美味しかったもんね!」

「イーピンも!」

「ホットケーキを作って貰ったんだ!」

「作って貰った?」

奈々は誰にと首を傾げた。美那は出掛けていたし、ツナは料理や菓子を作ったことは一度もない。

美那は一瞬でツナが作ったと分かり奈々に言った。

「帰ってきたらお腹空かせてたみたいだったから美那が作ったのよ。」

美那の台詞にランボ達は驚いた。作ったのは美那はではなくツナだ。
フゥ太は咄嗟に違うと言おうとしたが美那に睨まれて口を閉じた。子供達の方に顔を向けて睨んでいて奈々は睨んだことに気付かない。

「そうだったの。美那ちゃんありがとう。これからすぐに夕飯の仕度するから。」

奈々はよそ行きの服から普段着に着替えに行くと子供達は怯えながらも美那に言った。

「作ったのツナさん!」

「嘘つき美那!ランボさん嫌い!!」

「何であんな嘘をつくの?ツナ姉が可哀想だよっ!」

美那は低い声で脅した。

「余計なことしないでよね。言ったら酷い目に合わせてやる!」

だがフゥ太は作ったのはツナだからと言うと美那はだったらと口にした。

「だったらあんた達じゃなくてツナにしようかしら?」

「「「えっ!?」」」

美那は口角を上げてニヤ~ッと笑う。フゥ太達はその笑みを見て美那の表情を見て本気だと察した。

「居候の癖に生意気なのよ。ツナを庇うならツナを痛め付けてやるしあんた達なんか追い出してやるんだから!」


これは警告よ!と告げると美那は自室に戻り、子供達は口をつぐむしかなかった。


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