琥珀のカナリア


ランボが来てから3日、京子と花はツナにプレゼントを渡せずにいた。

「渡せそうにないわね。」

京子の席に花が来てツナの席を見ながら呟くように言った。

「・・・うん。」

「渡すこと自体どうってこと無いと思うんだけどさ。」

「沢田美那さん、何かね。」

「沢田を他の人に話させないって感じよね。」

月曜日にツナにお礼を言いプレゼントを渡したかったが美那によって阻止されていた。

「元々美那って奴は沢田を心配して休み時間になると必ず来るけど。」

「でも本当に心配してるのかな?沢田美那さん休み時間には来るけど昼休みには来ないよね?」

本当に心配しているなら昼休みにも顔くらい出すだろう。

「それは言える。それにここ数日獄寺と山本を引き連れて沢田の席にいるわ。」

「獄寺君と山本君と話して沢田さんはほったらかしな感じ。」

「その癖、私らが近くに行こうとすると必ず『ツナに気を使ってくれてありがとう。でもツナのことなら美那が見るから大丈夫よ。』って言ってきて獄寺が追っ払うように噛みついてくるしね。」

美那がツナのことなら大丈夫と言ってきても京子と花は引かなかったがそれを見咎めた獄寺が果たすぞとダイナマイトを片手に脅してきて、二人は引き下がるしかなかった。

「沢田さんも他の人と話したいかもしれないのに。」

京子と花はいつになったらお礼が言えるのかと困惑した。


ーーーー

放課後、美那はツナのクラスに入ってきた。

「ツナ、帰るわよ。」

「・・・・・・。(今日は母さんと病院に行くんだけど。)」

ツナはメモ帳に〈病院に行くから。〉と書いて見せる。

「病院なの?一人で行ける?」

〈母さんが迎えに来るから。〉

窓から外を見ると奈々が校門の前にいた。

「・・・そう。それなら校門まで一緒に行こう。」

美那は病院くらいツナ一人で行けば良いのにと内心で悪態をつく。そんな美那を知らない獄寺と山本は優しいと美那を誉める。
それに気を少し良くした美那はツナを連れて教室を出ていった。



「京子、姉妹とか兄弟ってあんな感じなの?」

「確かにお兄ちゃんは私のこと大切に思ってくれるけど美那さんみたいにベッタリじゃないよ。」

「沢田に付きまとってるわね。」

ツナにまとわりつく美那に京子と花は不思議そうにツナと美那を見ていた。


校門に着くと奈々が声をかける。

「美那ちゃんツッ君。学校今日は楽しかった?」

「楽しかったわ。」

「・・・・・・。(とりあえず頷いておこう。)」

頷くツナを見て美那は更に道具らしくなったきたと一瞬だけ嘲笑した。
嘲笑したのを分からなかった奈々は楽しかったなら良かったわとニコニコしてリボーンの伝言を伝えた。

「リボーンちゃん今日は用事があるから授業はお休みですって。」

奈々の言葉を聞いて獄寺が美那を遊びに行こうと誘う。

「それなら美那さんこれからどこかに遊びに行きましょう!」

「それ良いのな!」

「お母さん行っても良い?」

「ええ。でも遅くなっちゃダメよ。」

美那は獄寺達とどこに行こうかと話ながら歩き出す。それを微笑ましそうに見ていた奈々はツナに行きましょうと声をかける。ツナは無言で頷いた。


ーーーー

リボーンは誰も居ない廃墟のビルで電話をかけた。ワンコールで出た人物に多少苦笑いする。

『リボーン!久しぶりね!』

「久しぶりだなビアンキ。手を貸して欲しい。」

『手を貸すって?今請け負ってるのはボンゴレの依頼よね?』

「実は候補のツナと美那のことでな。とりあえず会って貰えないか?」

『リボーンのお願いなら構わないわ。それに隼人にも会いたいし。それじゃ今すぐ準備するわ。』

「頼んだぞ。」

電話を切るとリボーンは沢田家に戻った。


ーーーー

並盛病院で医師が告げる。

「今まで投薬をしてきましたが、効いていないようです。」

「そんな!?治るって言っていたじゃないですか!!」

奈々が声を大きくして言うと医師は奈々を落ち着かせる。

「落ち着いて下さい。お子さんが驚いてしまいますよ。」

奈々は言われて口を閉じる。医師は続きを話す。

「箱庭療法というものがあります。」

「箱庭療法?」

「・・・・・・。(箱庭療法?)」

聞いたことがない言葉にツナと奈々は首を傾げて続きを待つ。

「精神療法の一つでセラピストが見守るなかで患者が箱の中に玩具を入れていきーーーー」

「精神療法!?」

医師の説明を遮って奈々はとんでもないと言い出した。

「精神療法ってこの子は声が出ないだけで精神病じゃありません!」

ただでさえツナが失声症で近所から白い目で見られているのに精神療法なんて知れたらご近所から更に白い目で見られるし、そのことで美那が中傷されるかもしれない。
奈々からしたらたまったものではなかった。

「今まで通り薬でお願います!ツッ君帰るわよ!」

半ば引き摺るように奈々はツナの手を掴んで診察室を出ていった。まるでツナはどうでもいいと言わんばりだ。


帰り道、怒りがやっと治まった奈々とツナの前に幼女が現れた。幼女は二人に話しかけた。

「初めて。イーピン言います。リボーンにお土産渡すようにお師匠さんに頼まれた。」

「あらリボーンちゃんのお友達ね。リボーンちゃんはうちにいるから一緒に行きましょう。」

「・・・・・・(リボーンの友人かぁ。)」


イーピンは一言も喋らないツナに何か失礼なことをしてしまったのかと慌てるが奈々が説明をした。

「ツッ君は声が出ないの。」

奈々の言葉に頷くツナにイーピンは納得した。


イーピンもまたランボと同じく居候になった。


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