琥珀のカナリア
翌日の休み時間、美那はツナのクラスにやって来るなり獄寺に話し掛けた。
「獄寺君!」
「美那さん!どうしたんですか?」
「ツナの様子を見に来たの。」
「ああそれで。お優しいのですね!美那さんが優しくてよかったな沢田。」
「・・・・・・。」
美那が目で頷けと言ってきて仕方なく無言で頷くツナ。
自分の言いなりになってきているツナに美那は満足し、ツナを放置して獄寺と話し出した。マフィアの点を除けば獄寺はイケメンだ。美那はマフィアじゃなければ良かったのにと思いながら話していた。
ツナはもう逆らう気すら無くしていた。
授業が終わり掃除の時間、ツナは焼却炉にゴミを入れているとある人物に声を掛けられた。
「沢田。」
ツナが振り向くと同じクラスの山本が立っていた。
「ちょっといいのな?」
「・・・・・・。(山本が俺に何の用だろう?)」
ニコニコと笑う山本にツナは首を傾げる。
「最近の沢田凄いのな!」
「?」
「球技大会の時凄いジャンプしてたじゃん!」
「・・・・・・。(あれはリボーンがジャンプ弾を撃ったからだよ。)」
運動音痴のツナは体育は苦手。球技大会はまさに地獄だ。特にバレーボールのようなチームを組んでやるスポーツは相手チームの弱い所を突くのも作戦の一つ。勿論ツナは標的だ。
失声症のツナにチームメイトは罵ったりはしなかったが明らかに「足を引っ張る奴だ。」と鬱陶しいと苛立っていた。
その時はツナも足を引っ張ってると思っていたがリボーンにジャンプ弾を撃たれてジャンプをした。
あまりの高さに全校生徒は驚いていた。美那はリボーンがツナに特殊弾を撃ったと検討をつけていて驚きはしなかったが。
山本は実は相談したいと話し出した。
「最近不調でさ。このままだとレギュラーを外されるかもしれないのな。」
「・・・・・・。(相談されても困るよ。)」
「どうしたらいい?」
「・・・・・・。(ええっ!俺だって分かんないよ。多分体が疲れてるんだと思うんだけど。) 」
オロオロしながらメモ帳を出して体が疲れてるんだと思うと書こうとしていたらゴミを捨てに来た美那が何だ?と言う感じで歩み寄ってきた。
「どうしたの?ツナ。」
山本は美那を見てツナが失声症だと思い出した。
「沢田ごめんな。喋れなかったんだよな。」
謝る山本にツナは気にするなと首を横に振る。美那は山本に話し掛けた。
「確か山本武君だったよね?ツナに何か用?」
「相談しようと思ったのな。けど。」
「ツナは話せないから。美那で良ければ話を聞くわ。」
「俺最近不調なのな。この前の練習試合もミスばかりでこのままだとレギュラーを外されるのな。」
美那は暫く考えてから口を開いた。
「多分体が疲れてるんだと思うわ。疲れてる体で野球をしても上手くいかないと思う。2~3日ゆっくりして体を休めたら?」
「そっか!そう言えば最近寝ても疲れが完全に取れてない感じだったのな。ありがとうなのな!これから美那って呼んでも良いか?」
獄寺と違う趣の美形の山本。しかも彼はマフィアではない。美那はニコリと微笑んで頷いた。
「良いわ。美那も武って呼んで良いかしら?」
「勿論なのな。クラスは違うけどこれから仲良くしような!」
ツナに話しかけていたことをすっかり忘れた山本は美那と一緒に教室に歩いていく。
美那は後ろを振り向きツナを唇だけを動かし嘲笑った。
『ツナには獄寺君と武は勿体ないのよ!図に乗んないでよ!バーカ。』
「・・・・・・。(図に乗ってないけどなぁ。別に獄寺君と山本は俺には関係ないし。)」
別にどうでも良いとしか思っていないツナはゴミ箱を持って教室に向かった。
ーーーー
ホームルームが終わり美那は獄寺と山本と帰宅してツナは花壇の水やり当番で残っていた。
「・・・・・・。(あとはホースを片付ければ良いだけだ。)」
他の当番も道具を片付けたりしていた。
水やり当番が終わるとリボーンが修行だぞと迎えに来ていて一緒に帰宅することになった。
帰宅途中、前方に京子と花が歩いていて側には建設中の建物があった。
そこにいきなりバイクが運転操作を誤って建設中の建物に軽く突っ込んだ。
バイクの運転手は逃げるよう去っていくが次の瞬間、大量の鉄鋼が落下してきた。
「「きゃぁぁぁぁーーーっ!!」」
京子と花の悲鳴。ツナは無意識で動いていた。
リボーンは死ぬ気弾を撃ち込む。
「(死ぬ気で二人を助ける!!)」
ツナは一気に辿り着き京子と花を抱き抱えて落下してくる鉄鋼の雨を避けながら猛ダッシュ走り抜けた。
建物から離れて京子と花を下ろすと死ぬ気弾の効果が切れた。
ツナはヘナヘナと座り込んだ。
京子と花は助けてくれた人物を見て驚いた。
「沢田さん!?」
「沢田!?」
ツナはヨロヨロと立ち上がり走り去っていった。
『不味い!このことが美那ちゃんに知れたら笹川さんと黒川さんが嫌がらせされちゃうかも!』
ツナが目立つと美那は嫌がらせをしていた。
特に今はマフィアのボスにしようと企んでいるのだ。何をしてくるのか分からない。
ツナは呼び止める京子と花の声を無視して走って家に向かう。
それを見たリボーンは「10代目に相応しいのはツナかもしれねぇ。」と思うと同時に「美那との間にあるものは相当深い物があるな。」と感じていた。