琥珀のカナリア


放課後、ツナは裏庭に来ていた。

『確か獄寺隼人君だっけ?何か不良ぽいよね。今日、お金持ってきてないんだけどどうしよう!!』

カツアゲされるとばかり思っていると獄寺が裏庭に現れた。

獄寺はツナを睨み付ける。

「リボーンさんから聞いた!てめえを10代目とは認めねぇ!」

「・・・・・・。(別にマフィアのボスになんかなりたくないんだけど。)」

ツナはマフィアのボスになりなくないからと唇だけを動かして言うが獄寺には全く通じなかった。


校舎の影からツナと獄寺の様子を伺っていたリボーンは向かい側の校舎の方に美那がこっそり伺っているの気付いた。

美那の動きを注意しつつリボーンはツナと獄寺の前に出た。

リボーンの姿を見て獄寺は感激するような目で言った。

「あなたが9代目が絶大な信頼を寄せているヒットマン、リボーンさんスか?」

「そうだぞ。ツナ、コイツは獄寺隼人。9代目によってこっちへ来たスモーキン・ボムの異名を持つ男だ。」

「リボーンさん。沢田綱吉に勝ったら、俺が10代目になってもいいっスか?」

「構わねぇぞ。殺し合い開始だ。」


物影からこっそり覗いていた美那は最初の方こそ不良に絡まれるなんて笑えると嘲っていたが獄寺に見惚れていた。



獄寺はダイナマイトを数本取り出した。ツナはとんでもないことになったと体を震わせた。

「果てな!2倍ボム!!」

「!?」


ツナを目掛けて飛んでくるダイナマイト。リボーンは直ぐ様死ぬ気弾を撃った。

撃たれたツナが最後に思ったのは【大怪我して気絶する】だった。

いきなりパタリと倒れるツナに獄寺は驚き追い討ち用に用意していたダイナマイトを足下に落とした。

リボーンもまた倒れたツナに驚いたがならばと物影に潜んでいる美那に死ぬ気弾を撃ち込んだ。

「死ぬ気で(イケメンを)助ける!!」

美那は猛スピードで走りだしダイナマイトの導線を次々と握って火を消していった。

消し終わると同時に死ぬ気弾の効果が切れて美那は座り込む。

「制服があちこち焦げちゃったわ。」

並盛中学校の制服を気に入っていた美那は所々焦げた制服を見て若干不満気だ。

獄寺は目を輝かせて美那に膝まずいた。

「貴女は命の恩人です!俺は貴女に付いていきます!!」

「え?」

確かに獄寺は顔立ちが整っていて美那の好みだがマフィアになる気は更々ない。困惑する美那にリボーンは簡単には説明する。

「負けた者は勝った者に従うのがマフィアの掟だぞ。」

「美那さんよろしくお願いします!」

「よろしくね。(獄寺君は好みだけどマフィアになる気はないわ。)」

リボーンは倒れているツナを起こそうとツナの頬をペチペチと叩く。

「ツナ起きろ。」

「(う、う~んーーー。)」

目を覚ますツナは体を起こすと美那と獄寺が見下ろしていた。

「!?(何!?俺生きてる!?なんで美那ちゃんがいるの!?)」

パニックになるツナ。リボーンは苦笑して獄寺に10代目候補のことを話した。

「ツナと美那は10代目候補なのは知っているな?」

「はい。9代目から聞いています。」

「近い未来、ツナか美那。どちらかが10代目になるから仲良くしてやってくれ。」

「リボーンさん分かりました!」

獄寺はそう言うがツナを見る視線は微妙だ。

『美那さんとは違ってコイツはいきなり気絶かよ?』

獄寺はそう言うがツナを見る目は軽く馬鹿にしていた。


ーーーー

ツナは風呂に浸かりハァとため息をした。

『本当にマフィアっているんだ。俺、マフィアになんかなりたくない。マフィアって犯罪組織じゃん。』

自ら犯罪組織に入りたがる人間はそういないだろう。

『美那ちゃんは母さんと父さんそれにリボーンに上手く言って俺をマフィアのボスにしようと仕向けるよね。母さんと父さんは美那ちゃんのことか大好きだから簡単に頷いて俺をイタリアに行かせるんだろうな。この家には俺の話なんか聞いてくれない。味方なんか誰もいないもん。』



俺。マフィアのボスにさせられちゃうね。



ツナはポロポロと涙を流した。


ーーーー

リボーンは宛がわれた部屋でツナの資料を見直していた。

「ツナが声を失ったのは小学6年で今は投薬で治療中か。」

資料をパサッと置く。

「失声症は確かにストレスによるケースもあるらしいな。」


ツナにとって何がストレスなのか?

「・・・美那か?」


血の繋がりがなく、ましてや同じ年の頃の女の子が共に暮らすのは難しいだろう。

「しかしもしストレスを溜めるなら美那の方じゃねーか?」

ツナは家光と奈々の実子だが美那は養子だ。養子の美那の方が家光と奈々、ツナの顔色を伺ったりするだろう。


だが実際は美那は奈々に甘え、ツナは奈々に甘えることがない。

食事中だって食べ終えたらさっさと自室に篭る。

美那は真逆で食事中に奈々と話したりしている。

「確かにツナは喋れねぇ。だが筆談や手話っていう方法で話すことは可能な筈だぞ?」

手話は覚えればいいし、筆談ならすぐにでも実行が可能だ。


「ママンはツナを厄介者にしか見えてねぇのか?」


そもそもツナが失声症になった時点で手話をツナと覚えたり筆談しようと動くのが親だろう。
それにツナと奈々が筆談している所はあまり見ていない。

それを放棄して「悪戯っ子で困る」と片付けている奈々。


リボーンは少しだけ見えてきた。

ツナは家光と奈々に疎外されていると。


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