琥珀のカナリア
学校から帰宅したツナと美那を読心術で読んだリボーンは驚愕した。
『なっ!?ツナも美那も読めねぇ!』
子供の心などリボーンからしたら簡単に読める。だが読めなかった。
リボーンは更に読もうと注意深く二人の心を読んだ。
『どういうことだ?美那の奴、読めねぇというより読ませないとしているぞ!?それにツナに至っては壁を作ってやがる!二人共に無意識で壁を作っちまってる!!』
ますます二人の間に何かがある。寧ろ悪い何かが。
リボーンは少し調べる必要があると奈々お手製のマフィンを大人しく食べるツナと奈々と楽しそうに話している美那を見て思った。
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数日後、ツナのクラスにボンゴレから獄寺が送り込まれた。
獄寺はツナを見て『軟弱そうな奴だな。』と一瞥して担任に指定された席に着いた。
休み時間になると美那がツナの様子を見に来た。
「ツナ。喉の調子は悪くない?授業で解らなかったところはある?」
「・・・・・・。」
無言で首を横に振るツナ。ホッとするように笑う美那。
この光景は1年A組では当たり前の光景で生徒達は毎日来てはツナを気遣う美那を優しい女子だと絶賛していた。ツナはただただ可哀想だと思う程度で。
獄寺は「仲が良いんだな。俺とは大違いだ。」と思いながらツナと美那のやり取りを見ていた。
ツナの教室と美那の教室が見やすい木に登ったリボーンは『ママンの話通り美那がツナのクラスに来ているな。』と思い今度はツナと美那のやり取りを見ている獄寺に視線を向けた。
『顔に出てるな。確かに獄寺とビアンキは仲が良くはねぇからな。』
リボーンは獄寺を見てふと思った。
『そういえばビアンキも獄寺を構い倒してるな。』
ビアンキは異母弟の獄寺を本当に弟として愛している。その思いが強くて構い倒している。獄寺は腹痛を起こしたり気絶したりしているが。
『もしかして美那もそうかなのか?』
しかし美那がツナを家族として愛しているような感じはない。リボーンはますます一体何があるんだ?と考え込んだ。
チャイムが鳴り美那はまたねとツナに声をかけて教室を出て行った。
そしてまた休み時間になると美那はツナの所に来ては声は出そう?誰かに嫌味とか言われてない?と気遣っている。ツナは首を振って答える。
リボーンは奈々の話を思い出していた。
「ツッ君と美那ちゃんのこと?」
「二人はどんな性格だ?性格にあわせてカリキュラムを組みてえんだ。」
「美那ちゃんは活発な子で勉強もスポーツも出来る子よ。それにツッ君を心配して休み時間の度に様子を見に行ってくれてるのよ。」
本当に優しい子だと笑顔で話す奈々にリボーンはツナはどうだと聞いた。
「ツッ君は悪い子じゃないけど昔からイタズラっ子なのよね。リボーンちゃんが来る数日前にも植木鉢から花を引っこ抜いちゃってね。花が可哀想だから止めなさいって言ったんだけど分かっているのかどうか。何を考えているのか私もよく良く分からなくて。」
苦笑しながら話す奈々にリボーンは僅かに眉を寄せたが直ぐにいつものポーカーフェイスになると口を開いた。
「分からねぇってツナはママンの子供のだろう?全くってことはないだろう?」
「そうなのだけど昔から口数が少ない子で今は喋れないだけに分からなくて。でも美那ちゃんがツッ君の傍にいるから大丈夫よ。」
リボーンは奈々の言葉に驚いた。
簡単に言えば奈々はツナは悪戯をする子で美那は優しい子。悪い子と良い子として見ている。
それも無意識で。
そして美那がいるからとツナのことを放棄している。
奈々の言葉を思い出してリボーンはまたふと思う。
「ツナを見ているととても花を引っこ抜くような奴には見えねな。それにツナが悪戯をしているのも見たことがないぞ。」
悪戯をしようとしていたら奈々はともかくヒットマンのリボーンなら簡単に分かるだろう。
「寧ろママンと家光に問題があるんじゃ?」
授業を受けているツナと美那を見ながらリボーンはまだまだ分からないことだらけだとため息をした。
ーーーー
昼休み、失声症のツナに誘う生徒いない。
ツナは弁当箱を持って人が来ない裏庭にいた。
「・・・・・・。(この時間は美那ちゃんはクラスの子達と食べてるから気が楽だな。)」
美那はあくまでも優しいふりをしているだけ。昼休みは「ツナにだって友人はいるはずだから昼休みは友人と過ごしてほしい。心配しているけど友人と過ごす時間も大切だから。」と回りの生徒達に言っていた。それがまた美那は優しいと絶賛されてツナは優しい妹がいて良かったねと言われていた。そう言われるのを分かって美那は昼休みはツナを放置して絶賛されることを楽しんでいた。
ツナからしたら良かったどころか最悪だが心が穏やかで静かに過ごせる昼休みは貴重だ。
弁当を食べていると獄寺が声をかけてきた。
「おい、放課後ここに来い!いいな!」
「・・・・・・。(ま、まさかカツアゲされちゃうとか!?)」
喋れないツナにドスを効かせて言うだけ言って去っていく獄寺。ツナは怖いと体を震わせた。
ツナと獄寺の会話を偶々見たツナのクラスメイトはツナが不良に脅されていると思い慌てて美那のいる教室に走って行った。
リボーンは美那を見て不思議そうにしていた。
『休み時間の度に様子を見に行っているのに昼休みはツナのところには来ないのか?』
心配しているなら昼休みにも来る筈だし、食事だって一緒にするものだ。
「それにツナも裏庭の方で一人で食ってるみてえだしな。」
裏庭の方からズボンのポケットに手を入れて歩いている獄寺を見ながら木に寄りかかり拳銃に死ぬ気弾を入れ始めた。