琥珀のカナリア
リボーンは9代目からの依頼を受けた時のことを思い出していた。
9代目の執務室に通されたリボーンは僅かに目を大きくさせた。
執務室には9代目は勿論のこと、9代目の守護者達と幹部、家光までいた。
門外顧問の家光までいるということは今回の依頼はかなり重要な案件だと察した。
9代目が口を開いた。
「10代目を決めることにした。そこでリボーンに依頼したいのだよ。」
「10代目は誰にしたんだ?」
リボーンは聞くと家光が話をした。
「候補者が次々と殺されてな。残ったのは俺の娘達だ。」
「娘達?家光いつの間に二人目を作ったんだ?」
リボーンの記憶が正しければ家光と奈々の間に生まれたのはツナだけだ。家光は少し言い淀む。
「・・・養女がいる。」
「養女?」
「インプルストファミリーの11代目ドンナ、ヴァネッサの娘のミーナだ。今は改名して美那と名乗っている。」
「インプルストファミリーは確か敵対ファミリーに殲滅させられたファミリーだったな。その生き残りがヴァネッサの娘か。」
インプルストファミリーは規模は然程大きくはないがボンゴレ5世の傍系筋でボンゴレの同盟ファミリーだった。
9代目が本題を話した。
「そこで綱吉さんか美那さんのどちらかを10代目にしたいのだが少し問題があってね。」
「問題?普通に考えれば初代の直系の家光の娘が継ぐもんだろう?インプルストファミリーは5世の傍系だ。」
「そうなのだが家光の話だと綱吉さんは失声症で話すことが出来ない。今のところは治る兆しが全くないらしいのだよ。」
「確かに話せないのはネックだな。」
話せないということは部下に指示が出せない。抗争時の指揮も取れないということだ。
「そこで美那さんが候補に上がってね。」
「つまり家光の娘かヴァネッサの娘を鍛えてボンゴレ10代目に相応しいか見極めろということか。」
「そうだ。お願い出来るかね?これはリボーンにしか出来ないと考えているのだよ。」
「その依頼引き受けたぞ。」
「頼んだよ。ああ、一つだけ言っておくよ。綱吉さんでも美那さんでもどちらでも構わないよ。」
「分かったぞ。」
リボーンは依頼を受けて日本に来た。
奈々に淹れて貰ったエスプレッソを飲みながら9代目の最後の言葉の意味を考えていた。
「どっちを選んでも構わないということか。しかしまた違う受け取り方をしたらボンゴレのあり方を分かっていない方を選んでも俺を罰しないとも取れる。」
どうもただの候補者の育成だとは思えない。
「9代目は何を企んでいるんだ?」
リボーンはエスプレッソを飲み干した。
ーーーー
「リボーンが沢田家に着いたと連絡が入った。」
ガナッシュが9代目に知らせた。
「そうか・・・。今日はもう下がって良い。」
「あまり、考え込むなよ。」
9代目を気遣うガナッシュに9代目はそうだねと答えた。
ガナッシュが執務室を退室して9代目は呟いた。
「綱吉さんが失声症だと家光から聞いた時に何故か超直感が綱吉さんと美那さんには何かあると知らせてきた。」
何が起きているのか?そこまでは分からない。
「ワシももう年だ。超直感も錆び付いているのかもしれないね。だからこそ次代のボスを選ばなくてはならない。」
超直感ではツナが継いだ場合、早くに命を落とすだろうと伝えてきて。
しかし美那はボンゴレのあり方が理解出来ないと伝えてきた。
「美那さんが継ぐことになったら『 』をしなくてはいけないね。」
そしてツナが継いだ時のことも考えなくてはならない。
9代目は窓から青空を見上げていた。
ーーーー
リボーンが沢田家に来て数日、ツナと美那の関係がどこかおかしいことに気付いた。
二卵性の双子。世間にはそう通しているがツナと美那には血の繋がりがない。
「どこがどうってわけじゃねえが何かがおかしい。美那がツナを構い倒してるように見える。ツナが失声症だということもあるんだろうが。」
とにかく美那がツナから離れない。
しかしたまには一人になりたい時もある筈。なのに美那はツナに張り付くようにしている。
修行中ツナが怪我をしたら心配する美那。
一方、ツナは震える手をゆっくり出して美那の手を取る。まるで美那に怯えているように。
「ママンの話だとツナを心配して学校の休み時間になる度にツナの様子を見に行っているらしいな。」
リボーンはフムと腕組みをした。
「あまり年頃の女にはしたくねぇが読心術を使ってみるか。」
ツナと美那の間に何があるのか?
リボーンは二人が帰宅したらこっそり読心術を使うことにした。