琥珀のカナリア


雲雀が両親と海外に渡ると同時にツナと親しかった女中達も付いて行き、また草壁も同行し、年老いた女中頭は田舎へ帰った。
並盛の屋敷は雲雀の親戚が預かることになりツナの居場所が消えてしまった。





ツナは雲雀からの電話を待っていた。

だが偶々だったが雲雀からの電話を受けたのは美那だった。

「はい、沢田です。」

『雲雀だけど。』

「恭弥君!?久しぶりです!美那です!」

『君か。あの子出して。僕はあの子に用があるんだ。』

美那には用がないと言う雲雀。美那はツナに嫉妬して。

「ツナは今出かけてます。それより恭弥君は今どこの国にーーーー」

『出掛けるなら仕方ないね。』

美那の言葉を遮って雲雀はかけ直そうと電話を切った。日本は夜だ。ツナが出掛けてるのは嘘だろう。

ツーツーツー

電話を切られて美那は何でそんなに嫌うのとガチャンッと受話器を乱暴に置いた。


1時間後に電話が鳴り今度はツナが出た。

「沢田です。」

『小鳥!』

「お兄さん!」

『来週から小鳥は小学生だね。』

「うん。ピンク色のランドセル買ってもらったよ。」

『小鳥に似合う色だね。おめでとう小鳥。』

「お兄さんありがとう!」

『また電話するから。』

「うん。ツナ待ってるよ!」


ツナは電話してきた雲雀に『やっぱりお兄さんは約束を守ってくれる!』と喜んだ。


一週間後、並盛第一小学校に入学した。さすがに双子であるツナと美那は別のクラスになってツナは少なくても学校にいる間は美那に何かされることはないと安心した。
相変わらず家では美那がツナを嵌める為に悪戯をしてツナのせいにして、奈々は美那の話を聞いてツナを叱り、学校では大人しい性格のツナは爪弾きにされていたが週に3~4回の雲雀から来る電話がツナを支えていた。
そんな日々を送り、ツナが6年生の冬休みが終わった頃、美那に指輪を奪われてしまった。

ツナは自室で指輪を見ていた。

「大丈夫。最近はお兄さんからの電話がないけど写真とこの指輪があるから今も明日も頑張れる。」

雲雀はこの所、雲雀家を継ぐ為に必要な経済学等が忙しくツナに連絡したくても出来ない状況だった。

写真と指輪を引き出しから出して机の上に置いて宿題をやっていた。
そこにツナのノートを破って宿題を邪魔してやろうと美那がノックもせずに入ってきた。

「ツナ、ノート貸しなさいよ・・・、へぇ?あんたには勿体ない指輪じゃない。」

ツナは慌てて写真と指輪を持って逃げようとしたが美那に足を引っ掛けられて転んでしまい、その拍子に写真が宙を舞い指輪が美那の方に転がってしまった。
美那は素早く指輪を拾うと綺麗と呟いた。

「これはダメツナには本当に勿体ないから美那が貰ってあげる!」

「返して!それは俺のだよ!」

ツナは立ち上がり取り返そうとするが美那は煩いとツナを突き飛ばした。

「ダメツナには似合わないのよ!ダメツナはダメツナらしく大人しく美那の引き立て役をやってればそれで良いの!!」

そう言って今度は写真を拾ってビリビリに破った。

「焼き増ししたんだ?ムカつくから捨ててやる!!」

怒鳴り付けて美那は写真をゴミ箱に捨ててポケットに指輪を入れてツナの自室を出て行こうとしたら奈々が階段を上がっている音がした。

「凄い音がしたけど何かあったの?ツッ君?」

泣いているツナに奈々は歩み寄るが美那がツナが転んだと言って誤魔化した。

「ツナ転んじゃったの。」

「あら大変!ツッ君どこか痛い?」

ツナは俯きながら首を横に振った。念のため奈々はツナの手足を見る。

「擦り傷とかはないから大丈夫ね。そろそろ夜ご飯だから下りてらっしゃい。」

「はーい!」

美那は写真を捨て指輪を奪い取ってご機嫌で奈々の後を付いていく。

ツナは少し遅れてからリビングに入った。


夕食になると美那は今日あったことを奈々に話して奈々は楽しそうに聞いている。
そんな二人をツナは横目に黙々と食べていたが写真と指輪を取られて食欲が全く出ずに殆ど残して自室に戻った。

奈々は心配してツナの体温を測ったが平熱で。

「熱や風邪の初期症状かもしれないから今日はパジャマに着替えて寝なさい。」

ツナは黙って頷いた。


パジャマに着替えてベッドに入り掛け布団を被る。

美那に奪われた写真と指輪。

『何で俺は大切な物を守れないくらい弱いの?何で美那ちゃんは酷いことして喜んでるの?』

雲雀の顔が浮かぶ。

『最近お兄さんから電話ないなぁ。』

『俺、一人ぼっち?寂しい・・・・・・。』

色々考えいるうちにツナは眠りに落ちていった。



翌朝、ツナは奈々に起こされた。

「ツッ君。昨日のことがあるから体温を計ろうね。」

ツナはとりあえずうんと返事をしようとしたが。

『あれ?』

ツナはパクパクと口を動かすが声がでない。

『俺・・・声が・・・出ない!?』

異変に気がついた奈々はどうしたのと声をかけるがツナはパクパクと口を動かすだけ。

「ツッ君?声・・・?」


奈々はツナの声が出ないと分かり、慌てて並盛病院に連れて行った。


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