琥珀のカナリア
美那はこんな物と言いながらビリビリに破り捨てた。
「酷いよ何でこんなことするの!?」
「美那の家来の癖に着物着て恭弥君と写真なんか撮ってるなんて!」
ツナは泣きながら訴えるが美那は煩いと怒鳴りつけてツナの頬を打った。
「ツナの癖にムカつくわ!!恭弥君にはもう会うな!」
そう吐き捨てて美那は出ていき、ツナは頬を押さえて泣いた。
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いつもの待ち合わせの公園で雲雀はツナを待っていたがいつまでも来ないツナ。遅いと思った雲雀は迎えに行こうと公園を出るとあからさまに嫌な顔をした。
「あ、恭弥君!!」
美那がそこにいた。雲雀は無視を決め込み美那の横を通り過ぎる。
美那は慌てて後を追って口を開いた。
「待って恭弥君!ツナのことで話したいことがあって!!」
「・・・何?」
雲雀は苛立ちを隠さずに返事をし止まった。美那はツナは酷いと話した。
「ツナってば酷いの!恭弥君と一緒に写った写真ビリビリに破いてたの!!」
「ふぅん。で?」
「えっ・・・?」
素っ気ないところか其がどうしたと言わんばかりの雲雀に美那は呆然とする。
雲雀家は名家だ。
雲雀からしたら美那は雲雀家、雲雀家の後取り息子という肩書きに言い寄り媚びを売る人間達と同類でしかない。
そんな人間達はお互いの足を引っ張り、出し抜こうと躍起になる。
まさに美那は雲雀に言い寄りツナを陥れようとしている。そんな美那に雲雀はウンザリだ。
大方写真を破いてたのは美那だろうと見抜いて呆然と立ち尽くす美那を完全に放置して雲雀はツナを迎えに行った。
沢田家に着いた雲雀は奈々に通してもらいツナの自室に入る。そこには泣いているツナと破かれた写真が床に落ちていた。
「小鳥。」
呼ばれてツナはビクッと小さい体を震わせた。
雲雀は美那の嫌がらせにため息をした。そのため息を聞いてツナは雲雀に嫌われたと俯いた。座り込むツナの回りには破かれた写真があるのだから。
俯いたツナを雲雀はひょいっと抱き上げた。
「お兄さん・・・写真ごめ、なさ・・・」
泣きながら謝るツナに雲雀は首を傾けた。
「何で謝るの?破いたのは君の妹だろ?写真は焼き増しするから大丈夫だよ。」
そう言って雲雀はツナを慰めた。
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放置された美那は急いで家に向かった。
「恭弥君はツナなんかには似合いんだから!」
家に着くと奈々しか居らず、美那はツナはどこにいるのと聞いた。
「ツッ君なら雲雀君と遊びに行ったわ。」
「そう。」
雲雀の家、雲雀の行動範囲を全く知らない美那は悔しそうな顔で自室に入って怒りをぶつけるようにクッションやぬいぐるみを壁に投げ付けていた。
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七五三が終わっても相変わらずで美那は悪戯をしてはツナになすり付け、奈々はツナが悪戯をしていると思い込み頭を抱える毎日が続いた。
ツナが話そうとしても美那が邪魔をするし、美那がツナを庇うポーズを取る。それを信じてしまっている家光と奈々はツナを叱るがその癖ツナを信じてるみたいな態度をする。
ツナは「話を聞いてくれないのに何で信じてるみたいな顔をするのかな?」と思い始め、クリスマスシーズンになる頃には家光と奈々には全く期待しなくなっていた。
今のツナは雲雀と一緒にいる方が大切なことになっているし、雲雀家に遊びに行くと女中頭と女中達が孫や娘や妹のように可愛がってくれて幼稚園で絵を描いたとか遊技をした話も聞いてくれる。勿論雲雀もだ。
ツナからしたら家族より雲雀と雲雀家の女中頭と女中達の方が安らぎを得ることが出来る大切な居場所になっていった。
クリスマスと大晦日を泊まりで雲雀家で過ごしていた。
ツナが家族に失望しているなど思ってもいない奈々はツナが雲雀家に泊まる度に菓子折りを持ってお礼を言いに行くようになった。
そんな奈々を見て女中頭、女中達は眉を寄せていた。
誘いをかけたのは雲雀だがクリスマスや大晦日は家族で過ごすものではないのかと女中頭はため息しかない。
ツナはまだ幼稚園に通う年齢だ。家族と過ごし愛を注がれて成長する年齢でもある。
ツナが中学生や高校生なら友人と過ごすのはありだろうがツナはまだ6才で。
それなのにツナをおざなりにして結果ツナは家族に失望してしまったのだ。
雲雀は雲雀で奈々の行動に呆れるしかなかった。
家族で一番傍にいる奈々は美那ばかりを見て実子のツナは見てるつもりでろくずっぽ見ていない。見ているのは美那が仕立て上げてしまった《悪戯をするツナ》だ。
「少しでも小鳥を見てみれば分かることなんだけどね。」
悪戯をするのは美那だということに。