琥珀のカナリア


奈々は雲雀家に着き呼鈴を鳴らす。出てきたのは女中頭。

「どちら様でしょうか?」

「沢田と申します。先日は娘の綱吉がお世話になりました。」

奈々は頭を下げて菓子折りを渡す。
女中頭は一瞬誰のことだと思ったが奈々の顔を見て小鳥のことだと分かった。

「当主も奥様も留守にしていますので私の方からお渡しします。」

「お願いします。」

奈々は再度頭を下げて雲雀家を後にした。


ーーーー

一方、並盛幼稚園ーーー


幼稚園バスが幼稚園に着くと保育士と一緒に園児達が降り、それぞれの教室に入ると汚れても良いようにスモックを着る。

ツナも美那もスモックを着ると男の子達が二人の側に来た。美那はこの男の子達をまあまあ気に入っていた。ツナを陰で苛めていたからだ。

美那はまた今日もツナを苛めるだろうと思うと自然に笑顔になる。おはようと声をかけるが男の子達は軽く返すとツナに話しかけた。

「ツ、ツナさ昨日着物着てたよな?」

「結構似合ってたじゃん!」

「髪飾りも似合ってたね!」

男の子達は口々にツナの着物姿を誉める。ツナは青ざめる。隣には美那がいるのだから。

着物は切り刻んでやったのに家のどこに着れるような着物があったんだと美那は目を剥いた。しかし昨日のツナの私服は普通に長袖のTシャツにパーカーとホットパンツにハイソックス。
美那は帰ったら聞き出してやるとツナを睨み付けた。

その後もツナの着物姿を誉める男の子と女の子。ツナは隣で睨み付ける美那に怯えて過ごした。


幼稚園から帰宅したツナは美那から逃げるように自室に入る。美那は逃がさないとばかりに階段をかけ上がりツナの自室のドアを開けようとすると階段を上った奈々が美那に話しかける。

「母さんツッ君にお話があるから遊ぶのは少し待ってね。」

奈々に言われて美那は仕方ないと自室に入った。

奈々がツナの自室に入るとツナは私服に着替えて机の引き出しから雲雀とツーショットの写真を出していた。写真もまたツナの大切な宝物でありまた頑張ろうと勇気を与える物であった。

「ツッ君ちょっとお話しましょうね。」

「・・・・・・。」


奈々がツナの自室に来る時は大抵美那が悪戯をした時くらい。
ツナはまた美那が悪戯したことを擦り付けたんだと思って無言で俯いた。


「ツッ君。昨日雲雀君から着物を借りたのよね?」

てっきり美那の悪戯のせいで怒られると思っていたツナはまさか雲雀から借りた着物のことだとは思わなく目をパチクリとさせた。

「お兄さんが貸してくれるって言ったから借りたよ。」

「そう。ツッ君は着物着たかったのね。」

「うん。」

「だったら何で着物をハサミで切っちゃったの?」

奈々は何故着物を切ってしまったのかが知りたかった。着たかったなら尚更だ。

ツナはどうせ理由を言っても美那が嘘を言って誤魔化すのは分かっていたし奈々も家光も美那の言葉を信じてしまうからと無言で俯く。

『言ってもお母さんは聞いてくれないもの。』


黙り込んでしまったツナ。そうなるとツナは絶対に口を開かない。困り果て仕方なくツナの自室から出ていきリビングのソファーに座り込んだ。
奈々はツナからの信頼を無くしているも同然だということに気付かずに何でツッ君は黙ってしまうのと呟いた。


美那は自室から出てリビングに居る奈々の側に行った。

「あのねお母さん、ツナが着物着てたってウサギ組の子達が言うんだけど?」

「ツッ君雲雀君から借りたみたいなのよ。」

母さん知らなかったわと困ったように言う奈々に美那は怒りを押さえてそうなんだと答えてツナの自室に向かった。

ツナの自室に入った美那はツナを突き飛ばした。

「痛い!!」

尻餅をついたツナを美那は見下ろしながら言った。

「昨日恭弥君から着物を借りたのよね!?美那の家来の癖に生意気よ!!」

「ツナは家来じゃないよ。」

「煩い!ブスツナ・・・何それ?」

美那はツナの机にあるものに気付いて机に歩み寄り写真を見る。


写真に写る着物のツナと七五三の時に着た美那の着物。並べば美那の着物姿は霞んで見えるだろうというくらいにツナの着た着物と小物は豪華なものだと写真が語っていた。それだけでも業腹なのに雲雀と並んで写っている。

美那は写真を見て嫉妬した。

ツナは美那から写真を取り返そうとした瞬間、ツナの頭上からビリビリと音がして紙屑が降ってきた。
一瞬分からなかったがツナの目に飛び込んできた紙屑は写真だと分かった。


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