琥珀のカナリア


出来上がった写真を草壁が届けると雲雀は受け取り中身を確かめた。

「今日はもう下がって良いよ。」

「分かりました。」

草壁は雲雀家を後にし、雲雀は写真をツナに見せた。

ツナ一人の写真、雲雀とツーショットの写真。ツナは喜びながら写真を見ている。

「ツナ、七五三みたい!お兄さんありがとう。」

笑顔のツナに雲雀は満足だ。
その後、雲雀は女中に沢田家に連絡を入れさせて夕食をツナと食べた。

ここでも雲雀はツナに餌付けをした。

「小鳥、口開けて。」

素直に開けるツナに雲雀は更に満足した。
食べ終わると雲雀はツナにその着物あげると言ったがツナは首を左右に振った。

「嬉しいけどツナは貰えないよ。」

美那が知ればまた誰も居ないところで切り刻まれたりペンキで汚されるだろう。
ツナは俯いた。

「それじゃあ小鳥が着たくなったらここに来れば着せてあげる。それなら良いでしょ?」

「うん。」

それならこの着物は無事だとツナは嬉しそうに頷いた。
雲雀は美那に苛つきつつもツナの頭を優しく撫でた。




夜になり雲雀と手が空いていた女中がツナを家まで送って行き沢田家の呼鈴を鳴らした。中からパタパタと走る音がするとドアが開く。

「ツッ君お帰りなさい。雲雀君一人で送ってくれたの?」

流石にしっかりしているとはいえ、雲雀は小学1年生だ。奈々は一人で帰らせるわけにはいかないと思い雲雀を送っていこうと靴を履こうとした。

「僕だけじゃないよ。女中も付いて来てる。」

雲雀に言われて奈々は目線を小さな子供二人から外し門を見ると着物を着た若い女性が居た。女中は奈々と目線が合うと頭を下げた。

奈々は慌てて女中にお礼を言うと雲雀と女中は帰っていった。

その様子を美那は唇を噛んでギリギリとした目で見ていた。


ーーーー

翌日、ツナと美那は幼稚園バスに乗せるため奈々はバスが停まる場所までツナと美那の手を繋いで歩いていた。
バスが停まる場所まで着くと既に来ていた園児の親は奈々を訝しげそうに見る。

「おはようございます。」

奈々は親達の様子に気付くことなく挨拶をするが挨拶を返す数名の声はどこか固かった。
奈々は不思議に思っていると幼稚園バスが停まりツナと美那、園児達は運転手と保育士におはようございますと挨拶をしてバスに乗っていく。奈々と園児の親達はバスを見送ると一人の親が奈々に問う。

「沢田さん。昨日の綱吉ちゃん可愛かったわね。」

「え?」

奈々は何のことだと首を傾げる。奈々はツナが雲雀の家に遊びに行ったとしか思っていなかったし、ツナも何も言わずに出掛けていた。

分からないと言った顔をする奈々に園児の親達は驚いた。

「綱吉ちゃんから何も聞いてないの?」

「え、ええ。ツッ君は雲雀君の家に遊びに行くとしか言ってなくて。」

奈々の言葉にそれなら仕方がないと園児の親達は思ったが相手は並盛の地主でその後取り息子だ。礼儀は弁えた方が良いだろうと奈々に教えた。

「沢田さんは引っ越しして来て2年くらいしか経ってないから知らないかも知れないけど並盛にある大きな屋敷は雲雀家って言って並盛全体を仕切ってる地主なのよ。」

「え!?」

「そこの後取りが雲雀恭弥君。それで昨日ね、綱吉ちゃんが着物を着ていたのよ。それも雲雀恭弥君と手を繋いで。綱吉ちゃんが着ていたのは多分雲雀家の着物よ。」

一人の園児の親が言うともう一人の親が口を開く。

「あの着物生地だけで500万は下らないわよ。帯と髪飾りと木履もかなりの物よ合わせたら1000万くらいするわね。」

「ええっ!?」

「私の実家は呉服屋だから価値くらいは分かるわ。知らなかったみたいだから仕方ないけど今からでもお礼した方が良いわよ?」


奈々は慌ててデパートで菓子折りを買いに行った。


雲雀家に出向こうと歩いていると主婦二人に声をかけられた。

「沢田さん、もしかして雲雀家に?」

「ええ、そうです。」

「そう。少しだけ良いかしら?」

「良いですけど?」

「一昨日の七五三何とかならなかったの?」

「?」

分からない顔をする奈々に主婦は若干呆れる。

「美那ちゃんは着物だったけど綱吉ちゃんは量販店のワンピース。悪目立ちしてたわ。」

「まさかとは思うけど綱吉ちゃんが悪戯したから躾としてそんなことしたわけじゃないわよね?」

「違います!ツッ君の着物が駄目になってしまっていて仕方なくワンピースで。」

奈々の言葉に主婦達は呆れ返る。

「綱吉ちゃんの着物が駄目になった理由は聞かないけどせめて日にちを変えるとかレンタルしたら良かったんじゃない?」

「でも家光さんの都合もあるし。」

「確かに貴方の旦那さんは海外で働いてるけどだからってアレはないでしょ?今のご時世仕事の都合がつかなくて祝えない親もいるのよ?」

「とにかく祝い事であんなことしてたら疑われるわよ?」

「う、疑われる!?」

「差別してるんじゃないかって。」

「そんな!そんなことしてません!」

否定する奈々。

「なら良いけど、少しは子供自身をちゃんと見てあげた方が良いわ。」

奈々はちゃんと見ていると思っている。奈々からしたら何でそこまで言われなくてはならないのだろうと首をまた傾ける。主婦達は子供がいるからこそ奈々がツナを見ていないと見破った。そして主婦達はもう何を言っても分からないだろうと判断してその場を去って行く。

奈々は去って行く姿をただ見つめていた。


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