琥珀のカナリア
翌日の日曜日。雲雀家は賑やかだった。
女中頭を筆頭にツナに着物を着付けているからだ。
「まぁ!小鳥様可愛らしい!」
「良くお似合いですよ!」
「さあ小鳥様少しお化粧もしましょうね。」
口紅をいくつか出して女中頭はこれにしましょうとオレンジ色の口紅をツナの唇に塗っていく。
最後にうっすらと淡いピンク色の頬紅を乗せる。
可愛らしいツナが完成した。女中達は可愛いと絶賛してツナはモジモジと恥ずかしそうにしてまた可愛い!と女中が騒ぐ。
雲雀は中々出てこないツナに痺れを切らしてツナが居る部屋に行き襖をスパーンッと開けた。
驚くツナと雲雀の機嫌の悪さを察知して青ざめる女中達。
機嫌は悪いが雲雀はツナの着物姿に釘付けになった。
「お兄さんどうしたの?」
「「「(ヒィィィィィィィィーーーッ!!)」」」
女中達を睨みながらもツナに釘付けで黙りこむ雲雀と動かない雲雀にどうしたの?と聞くツナと女中達が心で悲鳴を上げる。
そんな異様な空間で女中頭は平然として一言。
「恭弥様、女の子の着替えの最中に荒々しく襖を開けるものではありません。小鳥様のお着替えが終わってなかったらどうするおつもりです。」
「っ!!」
女中頭の言っていることは正しい。長く雲雀家に支えている女中頭には頭が上がらない雲雀だった。
ツナはちょこちょこと雲雀に近寄ると雲雀はツナの手を繋いで神社に連れて行き神社に着くと少々(?)強面な少年が待っていた。
「恭さん。」
「草壁、小鳥の写真を撮って。」
草壁はこの頃から雲雀の部下で前日にカメラを持参して待っていろと指示を出されていた。
ツナは神社をバックに写真を撮って貰う。
嬉しそうな笑顔のツナに雲雀も嬉しそうに笑う。
草壁は二人の関係を不思議に思った。
どう見ても目の前の少女は雲雀が嫌う草食動物に分類される。
それなのに手を繋いでここまで来て自分に写真を撮らせる。不思議としか思えない。
そんな草壁の思っていることに気付かないツナは恥ずかしそうに雲雀の手を引っ張った。
「何?」
「ツナ、似合ってる?」
「うん。凄く似合ってるよ可愛いね。」
ツナはパァと大きな瞳を輝かせて「一緒に写真撮って」と雲雀にお願いした。
ツナの隣りに雲雀が立つ。手を繋いで。
草壁は益々不思議過ぎると思いつつも顔には出さず写真を撮った。
その後草壁に原像に出させた。勿論雲雀の依頼だからカメラ屋は他の写真を後回しにして取り掛かった。
ツナと雲雀は一足先に雲雀家に向けて歩いていた。
二人の姿を見た住民は驚いていた。
「あの子綱吉ちゃんよね?何で雲雀家の息子さんと?」
「雲雀家の息子さんは気難しいって話だけど仲良さそうね。」
「それにしてもあの着物凄いわ!もしかして雲雀家の着物かしら!?」
「豪華で格式も高そう!」
「綱吉ちゃんに良く似合ってるわ。七五三のやり直しかしらね。良かったわ。」
前日のツナと美那を知っている主婦達は雲雀と居るのを驚きながらもうんうんと頷くが知らない主婦達は何の話だと首を傾げた。
「七五三のやり直しって何?」
「昨日沢田さんの子達七五三やったんだけど美那ちゃんは着物だったんだけど綱吉ちゃんは安物のワンピースだったのよ。綱吉ちゃん可哀想だったわ。」
「羨ましそうに美那ちゃんを見ててね。」
それを聞いた主婦達は雲雀とツナが一緒に歩いてるのを見た時よりも驚いた。
「差別!?」
「まさかとは思うけど綱吉ちゃんが悪戯っ子だから躾とか!?」
事情を知らない主婦達はそのように捉えてしまった。しかしそれも仕方ない。お祝い事で差別に見える行動なんてしたら嫌でも悪い方に取られる場合もある。
「不手際があったのかしらね。」
「もしそうなら美那ちゃんもワンピースにするとか着物をレンタルしたら良かったんじゃないかしら?」
主婦達は差別をしているのはないかと家光と奈々に疑惑の目をした。
他にも二人を見かけた住民も疑惑の目をした。ついでにツナをダメツナと苛めていた幼稚園の男の子は見惚れていた。
ツナと雲雀は雲雀家の屋敷で寛いで女中が出した菓子を食べていた。
雲雀はあることを思い付いてツナに指輪を出させた。
「ちょっと待ってて。」
「はーい。」
ツナの指輪を持って雲雀家の専属の彫金師に渡した。
「イニシャルを彫って。KとT。」
かしこまりましたと彫金師は彫っていく。
Tはツナ、Kは恭弥。
そして小鳥のK。雲雀は偶然だけど良いと思った。
彫金師に終わりましたと渡されると雲雀はツナの居る部屋に戻り指輪の内側をツナに見せた。
「ツナの知らない字。ひらがなじゃない。」
何て書いてあるか分からず難しい顔をするツナに雲雀は簡単に教えた。
「こっちはTで綱吉、こっちはKで僕と小鳥って意味だよ。」
イマイチ理解していないがツナは雲雀と自分と小鳥の名前の記号として理解した。
「秘密の暗号?」
雲雀は幼稚園のツナにはまだ分からないのは分かる。だからそうだよと言った。
しかしこの指輪は後に美那に奪われることなる。