琥珀のカナリア


ツナはベッドに座りハリネズミのぬいぐるみをギュッと抱えていた。

「お母さんとお父さんはツナは要らない?やっぱり美那ちゃんが良いのかな。」


そう呟くツナの瞳は悲しさと寂しさに彩られてうっすら涙が張る。


美那が沢田家に来てからツナの生活は一変した。
仲良くしたいと思った。でも美那は違った。


美那は自分で皿に赤色のサインペンで落書きをしたり花を折ったりカップを割ったりしてそれをツナのせいにしてくる。


「何で美那ちゃんはツナを苛めるのかな?」



本当のことを言おうとしても聞いてくれない奈々と家光。
両親を一人占めしてツナを排除しようとする美那。

美那は次から次へと悪事を働きツナのせいにする。

奈々と家光に自分はやってないと何度も言った。泣きながら言った日もあった。でも美那が空かさず「ツナを怒らないで。」と庇ったり「ツナがサインペン持っていたよ」と嘘を告げたり「美那は止めたけどツナは言うこと聞いてくれなかった」と涙ぐみながら言ってきたり。


悪戯ばかりしているツナとツナを庇い賢く優しい美那。


奈々と家光は美那の方を信じてしまいツナは悪戯をする子供だと思い込んでしまった。




頬にポロポロ落ちてくる涙。ツナは『お母さんもお父さんも信じてくれない』とぬいぐるみに顔を埋めて涙を誤魔化した。


一頻り泣くと首もとでコロンと指輪が転がった。


美那に見付からないように服の中に隠していたチェーンに通した指輪。

ツナは指輪を見た。オレンジ色の硝子はキラキラしていてその輝きに癒された。


「早く明日にならないかな。ツナ、お兄さんに会いたい。」


ツナにとって雲雀は遊んでくれる大好きなお兄さんだが同時に支えでもあった。



ーーーー

雲雀は帰宅するなり使用人に着物を出すように言い使用人達は数着用意し雲雀の部屋に運んだ。


雲雀は用意された着物を1着1着見ていく。
どの着物も格式が高く柄も鮮やかだ。

「これが似合うかな?」

白い生地で流れるように多彩の花の柄が入っていた。
帯は桃色の物を選んだ。


「髪飾りはどうしようか。」


美那は髪を結っていたがショートカットのツナはどうするかと雲雀が悩んでいると使用人の中でも長く雲雀家に仕えている女中頭が似合いそうな髪飾りを出した。

「恭弥様、こちらの髪飾りは如何でしょうか。」


髪を結えない分大振りの椿の形をした髪飾りを選び雲雀に見せた。

「そうだね。それにしよう。」

「そしてこの着物ならこちらの木履ぽっくりが合うかと。」


敢えて小鳥とは言わないで選んでいる女中頭。雲雀がプライドが高いのは分かっている。そんな雲雀に小鳥に着せるのかと聞けば雲雀は恥ずかしさのあまり暴れて屋敷の半分は倒壊して怪我人が続出するだろう。

女中頭は長く仕えているだけあって雲雀の性格を熟知していた。(因みにツナの本名は女中頭と女中は知らない)


雲雀は木履を見て頷くと女中頭は頭を下げて退室した。



「小鳥に似合うよね。」



着物一式を見て雲雀は楽しそうに呟いた。


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