琥珀のカナリア
ツナの部屋に美那が「ツナ、入って良い?」ドアを開けようとすると雲雀が出てきた。美那は雲雀が出てきて目を輝かせた。
「恭弥君。美那も一緒に遊んで良い?」
「嫌だ。この前あの子に馬乗りして殴ったりしてたよね。あの子の頬、引っ掻き傷があったし。君はあの子をに暴力振るう気でしょ?」
雲雀に指摘されて美那は口ごもるが咄嗟に言い訳をした。
「あ、あれはプロレスごっこで!」
雲雀は美那に限らず暴力を振るっていてバレたらふざけていたと言うのだろうと呆れるしかない。
「僕のクラスにも暴力振るってバレたらプロレスごっこって言う草食動物がいるんだよね。プロレスごっことか言えば僕を誤魔化せるとか思ってるなら大間違いだよ。兎に角君とは遊ばないしあの子を苛めさせないから。」
「あ、待って!」
美那の声を無視して雲雀はドアを閉めた。
美那は自分の部屋に駆け込むように入るとベッドに飛び乗り枕をバンバンとベッドに叩き付けた。
『どうして!どうして!どうして!恭弥君はツナとばかり一緒にいるの!どうして美那は駄目なの!どうして恭弥君は美那の話を信じてくれないの!!ブスのダメツナのどこが良いの!?』
プロレスごっこと嘘をついているのを棚に上げてツナを罵倒する美那。
どうしたら雲雀に振り向いて貰えるのかと考えても失敗に終わる。美那は苛立つことしか出来なかった。
美那を追っ払いベッドにちょこんと座っているツナの隣に座ると雲雀はツナの頭を撫でて言った。
「小鳥。着物着たかった?」
「うん。綺麗な柄だったから楽しみにしてたけど・・・。」
雲雀は切り刻まれたことは知らないが美那が何かしたと見当はつけていた。それなら雲雀家にある着物を着させてみようと考えた。
「明日僕の家に来なよ。着物がある筈だからそれを着てみれば?」
「お兄さんの家にも着物あるの?」
「数着あるから小鳥が似合うのを見繕うよ。だから明日おいで。」
「うん!」
ツナは着物が着れることに嬉しそうに笑い雲雀はやっぱり小動物の笑顔は可愛いと思った。
食卓には赤飯とご馳走がズラリと並んでいた。奈々に促され雲雀はツナの隣に座った。雲雀の前に座った美那は何とか雲雀から暴力を振るうイメージを払拭したかった。
『恭弥君はきっと美那は暴力を振るう子だと思っちゃったかもしれないからツナに優しくするふりをしよう。』
ツナが醤油を取ろうとした。醤油は丁度美那の前にあり渡そうとするがその前に偶然にも雲雀が取ってツナに渡した。
「はい醤油。」
「お兄さんありがとう。」
その後ツナが調味料やおかずを取ろうとする度に美那が動く前に雲雀がツナに渡したり、皿に取ったりしていた。雲雀はツナに餌付けしたいからとおかずを取り分けツナの口を開けさせて食べさせていた。家光はそんな雲雀に額に青筋を立てていた。
中々上手くいかない美那はそれなら雲雀に何かおかずを取り分けようと声をかけた。
「恭弥君、何かおかず取る?」
「自分で取れるからいい。」
「・・・・・・。」
雲雀はツナの餌付けに夢中で美那はツナを罵倒したかったが奈々と家光の前ではツナと仲良くするふりをしていたから我慢するしかなかった。
食事が終わると夜6時を過ぎていた。雲雀はまだツナと居たかったが流石に無理がある。仕方ないと奈々に取り敢えずお礼を言ってツナにまた明日と告げて帰宅した。
ツナは美那に睨み付けられて俯いて部屋に戻ろうと階段を上がると美那の声と奈々と家光の声が聞こえる。三人は楽しそうに会話をして時折笑い声がして。
ツナはそれを聞きながら部屋に戻った。
寂しそうに部屋に戻るツナを美那は愉しそうに見ていた。
『ツナ。アンタはそうして寂しそうにしてるのがお似合いよ!お母さんもお父さんも美那の物!いつか恭弥君も取り上げてやるから!』
雲雀に一目惚れした美那はツナが益々邪魔になりその思いが後々ツナを追い詰めることになった。