自由を望む大空

残された者



ある1人の女性が公園に佇んでいた。

その女性は以前、艶やかだった黒髪とキラキラと輝いている瞳を持っていた。だが黒髪は艶を無くしパサついて瞳は絶望の色をしていた。


公園には子供達が鬼ごっこをして走り回ったり、砂場で山を作ったり、親にブランコを押してもらったりと誰もが楽しんでいた。

そんな子供達と親子を見て女性は泣きそうになった。


「ああ、あの子に会いたい!」

でも会えない。子供に会いたくないと拒絶されているから。


女性が何時間もベンチで佇んでいると公園で遊んでいた子供達や親子は家に帰ろうね、今日の夜ご飯は何だろうなと話ながら公園を出ていくのを見て女性は羨ましそうにしていた。
暫くすると怪我だらけの少女とその少女に容赦なく突飛ばし嘲笑う少年少女達が入ってきた。


「痛い!止めて!」

「うるせえ!お前また苛めたんだろ!」

「何でいつも○○ちゃんを苛めるのよ!」

「私はそんなことしてないわ!」

「○○ちゃんに謝れ!」

「本当に何もしてない!幼なじみでしょ!信じて!」

「幼なじみ?お前と幼なじみなんて汚点だぜ!」

「あんたがこんな性格だったなんて!」

「○○ちゃんの為に制裁だ!」

怪我だらけの少女に暴力を振るう少年達と罵る少女。


女性はその光景を見て過去を思い出した。


自分が川で溺れた時、助けてくれた人に酷い仕打ちをしたこと。
そしてその人が無実だと知った。

でも自分は謝罪を一度もしていなくて。


女性は咄嗟に暴力を振るわれている少女の元に走っていった。


「暴力は駄目です!!」

怪我だらけの少女を庇うように立った女性に少年少女達は邪魔するなと怒鳴った。

「邪魔すんなよオバサン!」

「オバサンには関係ないわ!」

「こいつは○○ちゃんを苛め続けるから制裁してるんだ!」

女性は過去の自分と友人達と同じだと感じた。


「制裁?何でそんなことをするんですか!この子の話は聞いてあげてるんですか!?この子が○○ちゃんを苛めてるところを見たんですか!?苛めていたなら止めに入ったんですか!?」


一気に捲し立てる女性に少年だと少女は顔色を青く変えた。

「私は・・・見てないけど△△君と□□君は見たんでしょ?」

「いや・・・俺は見てねぇけど□□は見たんだろ?」

「僕は見てない。でもクラスの連中が言ってたし○○ちゃんがあいつに苛められたって泣いてたから・・・」


女性は「つまり誰も見てなくて証拠もないのに暴力を振るったんですね。」と口にすると少年達と少女は顔色を青から白に変わった。

「今からでも良いからこの子の話も聞いてあげて謝罪してください!○○ちゃんが言ったことは関係なくこの子に暴力を振るったのは貴方達です!」

女性が少女に暴力を振るったのは自分達の意志だと言った。

少年達と少女は怪我だらけの少女を改めて見た。

右目には眼帯、両方の頬には湿布が貼られ、手足は包帯が巻かれていたり絆創膏が貼られいた。

少年達と少女は自分達のしたことに恐怖した。

謝罪して仲直りなど出来ないほどのことをしていたが謝罪した。

何度も何度も謝罪する少年達と少女に優しい声がした。

「わかってくれたならもう良いから。私の話も聞いてほしいな。」

暴力を振るわれていた少女は許した。


「あの俺達を止めてくれてありがとうございました。」

「私のしたことは許されないけど、これからはちゃんと話を聞きます。」

「僕、○○ちゃんに本当のことを言うようにしてみることにします。」


女性に感謝の言葉を述べて怪我だらけの少女を気遣うように帰っていった。

女性は少女達が見えなくなるまで見送った後その場で泣きながら座り込んだ。


自分達がしたことを第三者として見て、惨たらしいことをしたと本当の意味で自覚した。

自分はツナがアリスンを襲った所、苛めた所を見ていない。京子に話を聞いただけでツナに酷い仕打ちをしていた。

それなのに謝罪しないでツナにまとわりついていた。

おまけに離婚した理由を「すれ違いが多くて別れた。」「旦那の方が収入があるから親権を渡した。」と、両親に嘘をついた。そして自分がツナにしたことが両親に知られるのかとビクビク怯え続けていた。
(そして敢えてツナと雲雀はハルの両親には映像や写真を送らなかった。その方が効果的だと分かっていたからだ。)


けれど元を正せば全ては自業自得。


「ハルは本当に大馬鹿でした!!ツナちゃんの話を聞かないで酷いことをしました!ツナちゃんにはいつも守って貰ったのに!無償の優しさを貰っていたのに!ハルが馬鹿でした!」


ハルは泣きながら叫んだ。


「ツナちゃん!許してなんて言いません!本当にごめんなさいーーーー!!」




ハルの謝罪の言葉と泣き声はツナに届く訳でもなくただただ公園に虚しく木霊した。





End.


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