自由を望む大空
結局ドナーは見付からず奈々は死んでしまった。
日本に帰国しウンザリしながらツナは奈々の葬儀を取り仕切り同行したクロームが手伝っていた。
『泣くのはザマーミロって感じだけど自分の妻の葬儀を俺に丸投げするなよ!』
葬儀の手配もせずに家光は愛する奈々の死に泣くばかりだ。
ツナは苦しむ家光に満足し、更に苦しめたたら後を追わせてあげるからねとそっと呟いた。
葬儀が終わり中々日本に帰国出来ないこともあり早々に納骨し、家光は先にイタリアに戻り、ツナとクロームは宿泊先の並盛ホテルに帰った。
部屋に戻りツナはスマホを取り出し緊急用の雲雀の番号にかけた。
『沢田綱吉かい?久しぶりだね。』
「お久しぶりです。暫くこっちにいるんですけど予定が空いてる日はありますか?」
『明日なら空いてるよ。』
「それなら明日そちらに伺っても良いですか?大事な話があるんです。」
ツナからの大事な話。
今まで召集すらかけれていなかった。
ツナにとって自分は不要と言われているようなものだと思っていた雲雀はボンゴレの雲の守護者解任だと察した。
そしてツナとの繋がりが断たれることを覚悟をした。
『・・・分かった。明日の午後3時で良いかい?』
「はい。では明日そちらに伺います。」
電話を切ると雲雀は誰もいない部屋で泣きそうな顔をしていた。だがツナを見捨てたのだから仕方ないと割り切るしかなかった。
クロームと寛いでいると骸から連絡が入った。
『綱吉さん、武器補給のルートと企業の情報を少しだけ流しました。案の定ホルスは勿論カーツェやバードン、パンナが様子を見ながら動き出しました。』
「分かったよ。ありがとう骸。」
『それではイタリアで待ってますよ。』
通話を切りツナは今のところは上手く事が運んでるとほくそ笑み、クロームは紅茶のおかわりを淹れていた。
「ボス?」
「武器補給のルートと企業の情報を少しだけ流して動きだしたって。」
「もう少しでボスは自由になれるのね。」
自由になったら何をしようと考えるツナと嬉しそうに笑うクローム。そこには穏やかな空気が流れていた。
ーーーー
草壁に案内されツナは雲雀が待つ応接室に通された。
「こんにちは、お久しぶりです。雲雀さん。」
「本当に久しぶりだね。座りなよ。」
ツナと雲雀は席につき草壁が紅茶と菓子を出す。
紅茶を一口飲んでツナは口を開いた。
「雲雀さん、本日付で雲の守護者を解任します。なので雲のボンゴレギアを俺に渡してください。」
覚悟を決めた雲雀はボンゴレギアをツナに渡す。
「ありがとうございます。代わりにこれを雲雀さんに。」
ツナはタルボに作らせたAランクの雲のリングを渡した。
「これはAランクのリングだね。でも何故これを僕に?」
「雲雀さんにとって武器が一つ減ると思ってタルボじいさんに作ってもらいました。」
ツナの気遣いに雲雀は素直にありがとうと言って受け取った。
「雲雀さんに御願いがあります。」
雲雀は君から御願いなんて珍しいから内容によっては聞いてあげると言った。
「今後一切ボンゴレに関わらないようにしてください。例え守護者やリボーンから連絡が入っても無視してください。」
「良いよ。赤ん坊と馬鹿犬達に興味ないから。」
「これで雲雀さんは自由です。今まで守護者でいてくれてありがとうございました。」
ツナは頭を下げ退室しようと席を立つと雲雀が呼び止めた。
「雲雀さん?」
「風紀違反女の時、助けなくてごめん。」
雲雀は本当に後悔している顔をしていた。
ツナはまさか雲雀が後悔して謝罪するとは思ってもいなかったし雲雀も風紀委員も暴力を振るわなかったからツナは恨んではいなかった。
「雲雀さんは俺に暴力を振るわなかったし、保健室を使わせてくれました。」
だから雲雀さんは何も悪くないですよと笑顔で返すツナ。そう言ってツナは応接室を後にした。
「小動物は僕を許してくれていた・・・。正に包容する大空ってことなのかな・・・。」
雲雀は窓から雲一つない空を見て呟いた。