自由を望む大空
出ていく山本を満足げに見やる骸は嫌がらせをしたわけではない。単に牽制だ。
ツナが高校を卒業した後、守護者と一緒にイタリアに渡った。(雲雀は財団を立ち上げるのに奔走していた為、日本に残った。)
そしてマフィアが多く通う大学に入学し、暫くした後に骸はツナに対する想いに気付いた。
クロームに骸様やっと気付いたのねと言われ柄にもなく照れた。
それからは獄寺と山本、ツナもしくはボンゴレの権力と財を狙うマフィアに牽制してきた。
そして今でもツナを想う獄寺、山本に牽制している。
骸は獄寺達が諦めが悪いと思う一方でツナには想いを伝えていなかった。
ツナにしてみればボンゴレを潰す為に自分と手を組んだ。それだけでそれ以上でも以下でもない。今しがた抱きついたのだって夫婦で仲良くしていると見せるためのポーズだろう。そんなツナに伝えたところで拒否されたらさすがに辛い。だから伝えなかった。(それに今のところは結婚しているからこのままでも良いと思っている。)
お茶と菓子を食べて休憩しているツナと骸、クローム。談笑していると電話が鳴りクロームが出ると相手は家光だった。
「門外顧問。用件は何でしょうか?」
「ことを窮する!ツナを出してくれ!!」
普段なら用件を言わない限りツナに取り次ぐことはしないが余りの焦り具合にクロームはツナを呼びツナは受話器を受け取った。
「奈々が白血病だ!」
「ドナーは見つかったの?」
「奈々の骨髄の型は珍しいらしくドナーも見つからない!俺も検査を受けるがお前も受けてくれ!ボンゴレの医療班優秀だからその日のうちに結果が出る!」
家光はこれから検査を受けると電話を切った。
ツナは奈々のために検査をする気はなかった。何故なら超直感で奈々と同じ骨髄の型だと分かったからだ。
「クローム、医療班に配属してもらったMMに俺の骨髄の型を母親モドキの型と違うと偽るように連絡してくれる?」
「分かった。」
クロームはMMに連絡する。
「綱吉さん、沢田奈々に何か?」
「白血病だってさ。でも俺は助ける気はないし、笑えることに骨髄の型が珍しくてドナーが見つからないらしいよ。」
「運が悪ければ沢田奈々は助からない。それを狙っているのですか?」
「うん。母親モドキが死ねば父親モドキは絶望寸前まで追い込まれるからね。」
仕事に戻るかと立ち上がるツナを骸は少し悲しそうな顔をした。
以前なら敵であっても死んで欲しく無いと優しい心を持っていたツナ。そんなツナを変えてしまったであろうリボーン達に骸は憤りを感じた。
ツナはデスクワーク、骸はクロームを手伝ってファイルの整理をしているとリボーンが珍しく慌てて来た。
「ママンが白血病とは本当か!?」
ノックもしないで入ってきたリボーンにマナー違反だろとウンザリするのを我慢するツナは「そうらしいよ。」と簡潔に答えた。
「ツナ?何でそんなに落ち着いているんだ?」
てっきり落ち込んで泣いてると思っていたリボーンはツナのをあまりの落ち着きように驚いた。
「俺だって悲しいよ。でもボスだから取り乱すわけにはいかない。」
「・・・そうか。ちっとはボスらしくなったわけか。お前も検査をするんだろ?」
「うん。クロームが連絡してくれて明日受ける予定だ。」
リボーンは何か思い付いたような顔をした。
『不妊検査も一応させるか。』
「ツナ、近いうちに不妊検査を受けておけ。」
「へ?」
突然のことで思わず間抜けな声を出すツナにリボーンは不妊症だったら早めに治療しないとならないからなと言って出ていった。
「・・・アルコバレーノは綱吉さんを跡継ぎを産む道具か何かと勘違いしてるんですかね。」
「アルコバレーノはいつだって道具のように見ていたわ。」
「完全にセクハラだよなぁー。それ以前に 跡継ぎなんか要らないし。」
ついでに検査をしろと言ってきたリボーンに呆れるツナ達。
子供は産みたいとは思うことはあるけど後継ぎは必要ないとツナは胸中で呟くが骸を見て『骸の子供なら・・・』とツナは思った。
ーーーー
イタリアに渡り九代目の命令でマフィアの人間が多く通う大学にツナと骸、クローム、犬、千種、MM、雲雀を除く守護者達は通わされた。(年が違うフランとランボは個別に家庭教師がついた。)
ツナを遠巻きに見てくる大学に通う男達。(ツナは遠巻きに見てくると思っているだけで男達はツナの魅力に惹き付けられていた。)
だがツナがボンゴレ十代目だと分かった途端に男達は話しかけてきた。その多くはツナの外見に惚れたか、ボンゴレの権威と財力に目が眩んだ人間だ。つまりツナ自身を見ていない人間ばかりだということだ。
ボンゴレ十代目になるツナに何とか気に入られよう、結婚を前提に付き合って貰おうとする男達。
『どいつもこいつも俺がボンゴレの次代だって分かると話しかけてきやがって!獄寺達と同じようなものじゃないか!!』
ツナはその度ウンザリしていたがウンザリしているのはツナへの想いに気づいた骸もだった。
ツナに言い寄る男達。普段はツナが適当にあしらうが中には強引な男もいた。
講義が終わり帰ろうとするツナを強引にどこかへ連れていこうとする男。
ツナは何とか踏ん張るが男の力が強く引き摺られていく。
「ちょっ、離して!!」
「別に少しくらいーーー!!??」
良いだろと言おうとした男はいきなり気絶したおれた。
「全く嫌がる綱吉さんに何をするつもりだったのか。」
呆れて男をゴミを見るような目で見る骸がいた。
「む、骸?」
「大丈夫でしたか?」
ニコリと笑う骸にツナはありがとうと素直に言うが倒れた男に目をやる。
「この人何でいきなり倒れたのかな。」
「その男に幻術をかけてやりましたからね。今頃悪夢を見てると思いますよ?」
「え!?だ、大丈夫なの!?」
「大丈夫でしょう。彼はマフィアだから僕は復讐者に捕まりませんよ。」
そういう問題じゃないような気がすると思うツナに骸は無言でニコニコしていた。
骸は何かとツナが言い寄られてウンザリしていると割って入って排除していた。ツナは感謝していた。
そして常に骸はツナを気遣った。
「ボンゴレ本部に居ても気分が悪いでしょう?気晴らしに出掛けませんか?」
「顔色が悪いですね。今日は早めに休んだ方が良いですよ。」
「紅茶と綱吉さんが気になっていたケーキを買ってきましたから休憩しましょう。」
気遣ってくれる骸は笑顔で接していた。
いつも守ってくれる骸にツナは好きになっていた。
(因みに獄寺と山本は出遅れた!と影から見ていたりしていた。)
ーーーー
ツナは骸を好きになった切欠を思い出したが。
『俺は骸が好きだけど・・・骸は俺のことは利害が一致しただけの関係くらいにしか思ってないよね。何より過去に復讐者の牢獄に入れたようなものだし。』
ツナは骸への気持ちを押し殺した。