Side 武司



「武司、お前に客人が来てるぞ。仕込みは俺がやるから。」

仕込みをしていた武司は豪に言われ客人がいる店前に行くと闌丸が居た。

「初めまして。俺は勝栄闌丸。」

「俺は山元武司。俺に何か用か？」

闌丸は「少し時間を貰えるか？」と人のいい顔を作り、武司は頷く。

此処ではなんなのでと闌丸と武司は寂れた神社に向かった。


「で、何なのな？」

「雲瀬津奈を助ける為に力を貸して欲しい。」

真剣な眼差しで言ってきた闌丸に武司は津奈に何かあったのかと心配し出し話を聞いていく。
雲瀬家の陰謀、津奈は騙されている、過去に闌丸が津奈に助けられ恩返しをしたいこと、既に勇斗には話して力を借りることを了承してもらったこと。


「津奈は雲瀬恭矢に騙されてるってことなのな？」

「恐らくは。だから山元武司君に力を借りたい。でも君は山野屋の跡取りだから無理強いはしない。」

武司は勇斗に負けるわけにはいかないと闌丸に協力する。

「俺、津奈を助け出したら今度こそ想いを伝えるのな。」

口に出し決意をした武司に闌丸は「それが良いよ。諦めるな。」と笑顔を見せる。

「ありがとうなのな！」

勇斗と同じく豪に諦めろと言われ続けてられていた武司に闌丸の言葉は響いた。

また連絡するからその時に話し合いをしようと武司に言って闌丸は後にする。

闌丸は俺からしたら陰陽道の資質が無ければ何の価値もない女だと笑いを堪えるのが大変だったと武司を嘲笑った。


帰る途中、烏が一羽飛んで来て闌丸は腕に乗せる。

「ほう？そうか。なら奴の様子を見に行け。」

闌丸の言葉に九十九神はある方向に飛び立っていった。
九十九神を見ながら闌丸は口角を上げる。

「予定していた手駒になる奴が一人減ったか。まぁさして問題はないか。」

屋敷に戻り使用人に喪服を用意しておけと告げ、利庵の部屋へ行く。



「一人減ったということか。」

「はい。しかしあの女なら問題はないかと。」

「そうだな。女の嫉妬は間違うとこっちに火の粉がとんでくるからな。」

「では、明日最後の手駒を手に入れます。」


闌丸は自室に戻ると九十九神の烏が窓際に止まっていた。

「俺の予想以上だな、そいつの怒りは。だがその方が扱いやすいかもな。」


「ククク・・・、明日も堪えるのは大変だ。」

闌丸は明日のことを思うと笑い出した。