Side 勇斗




津奈が恭矢の子供を出産したと聞いた時は絶望した。
それに気付いていない勇斗の母親は代わりにお祝いの品を届けて欲しいと言われ、渋々と雲瀬家に向かった。


結婚式は本当なら欠席したかったが津奈が笑顔で来てほしいと言われて辛い気持ちを隠して頷いた。

結婚式ですら辛かったのに出産祝いを届けるなんて！

『あの糞ババア！ちったぁ息子の気持ちを分かりやがれ！』

勇斗は母親に毒を吐いた。


雲瀬家に着き呼鈴を鳴らすと使用人に客間に通された。

「勇斗君久しぶりだね！」

客間に現れた津奈は多少子育てに疲れてうっすら目に隈を作っていたが相変わらず愛らしかった。

「お久しぶりです。これ、出産祝いです。」

勇斗は立ち上がり祝いの品を津奈に渡す。

「ありがとう。せっかく出産祝いを届けてくれたのに今日は恭矢さんが居なくてごめんなさい。」

夫婦揃ってお礼を言いたかったと言う津奈。

「いや、良いんですよ！忙しいのでしょうから。」

『アイツの顔は二度と見たくねぇからホッとしたぜ。』

「時間があるなら子供達見ていって欲しいんだけど？」

笑顔で言う津奈に勇斗は今日は時間がないからまた今度と言って雲瀬家を後にした。

勇斗は以前なら津奈の笑顔を見て幸せな気分に浸れたが今は心を抉るだけになってしまった。




「俺は死ぬまであの男に嫉妬し続けるのかよ！クソッ！」


「貴方は極寺田(ごくでら)勇斗さんですか？」

人はほとんど通らない道で声をかけられて勇斗は驚いた。
勇人は後ろを向くと人の良さそうな優男が立っていた。

「誰だよ？」

優男を怪訝そうに見ると優男はこれは失礼したと自己紹介をした。

「俺は勝栄闌丸。」

勝栄と聞いて勇斗は警戒する。勿論曾祖父母の代までは陰陽師を輩出していた家に産まれた勇斗は祖父母や父母に勝栄家の話は聞いていた。

「そんなに警戒しないでくれ。少し聞きたいことがあってね。」

「何だよ？」

「安倍川津奈。いや今は雲瀬津奈か。何故雲瀬恭矢と結婚したかおかしいとは思わないか？」

「そりゃ、アイツが津奈さんを助けたからだろ？」

それがきっかけで津奈さんと雲瀬恭矢は結ばれたのだからと。

「助けた。それが仕組まれた物だとしたら？」

「仕組まれた？」

どういうことだと怪訝そうにする勇斗に闌丸はこうは考えられないか？と話し出した。