儚き者達
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子供の頃、豪や他の大人が行ってはいけないと言われていた場所に武司は探検気分で遊びに行っていた。
走り回り辿り着いた場所は崖。武司は下を見ようとした時、地面が崩れ落ちた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!」
幸い崩れ落ちた場所から地面まではあまり高さが無く落ちる途中、木がクッションになり腕や足を擦りむく程度の怪我ですんだ。
「あー、危なかったのな。」
武司は助かったことに安堵するとガサガサと草を掻き分ける音がした。
『まさか野犬!?』
武司は立ち上がって逃げようとしたが転ぶ音がして「きゃうっ!」と声がした。
「イタタ。」
痛がりながら歩いてくるのは肩からポシェットをかけ小さな籠を持った女の子。籠には薬草や茸が入っている。
少女は前方に見える武司がいることに驚いている。ここの土地は少女の家の私有地だからだ。
「あの、ここは立入禁止なんだけど?」
「そうなのな?」
少女は武司が怪我をしていることに気が付き武司の側に行く。
「かすり傷みたいだね。ちょっと待ってて。」
そう言うと少女はポシェットから丸い缶を取り出した。
「少し染みるけど我慢してね。」
少女は蓋を開け中身を指に付けて武司の怪我に塗り始める。
「はい。これで大丈夫。でも応急処置だからちゃんと手当しないと。」
「ありがとうなのな。俺は山元(やまもと)武司。」
武司は君は?と聞くと少女は笑顔で答える。
「私は安倍川津奈。ここで薬草を摘みに来たんだけど武司君は?」
「俺はあそこから落ちたのなー。」
武司は人差し指を上に向ける。津奈はあんな所から落ちてきたかと真っ青になった。
その後武司は津奈についていき安倍川の家で手当をされて豪にお説教をされた。
ーーーー
「んー、夢・・・か。」
いつの間にか寝ていた武司は溜め息を吐いた。
『あの日から俺は津奈が好きなのな。』
津奈の笑顔に惹かれ武司は好きになった。
でも次第に津奈は安倍川家の人間だと言うこと、陰陽師であること、いずれは陰陽師と結婚するだろうと言うことが分かっていった。
好きになっても自分は津奈と添い遂げられない。それはどうしようもないことで。
ならばせめて津奈が結婚するまでは友人として一緒にいようと決めた。そう自分に言い聞かせていた。
『せめて津奈の相手が陰陽師か勇斗なら諦めもついたのな。』
何故、陰陽師ではないんだ、雲瀬恭矢なんだと武司は黒い感情で恭矢を憎んだ。